第4話

モニターに浮かんだミッションは、まるで2人のことを見てるようだった。




『第2ステップ:お互いにしてみたいことを言葉に伝えてください。心にあるほど効果的です。』




ふだんなら考えたこともないような問いかけが、この部屋の中では妙にリアルに響いてしまう。




だいち「ねぇ、順番的に…俺からでいいよね?」


〇〇「…う、うん」






〇〇は小さく頷く。






だいち「〇〇と、手繋いでみたい」


〇〇「…え?」






思いのほかシンプルだった。





だいち「なんかさ、急に触れるのはダメかなって思ってたけど。ちゃんとこういうふうに、言葉で聞くのって大事かもって思って」






だいちは笑わず真剣な顔だった。




だいち「嫌だったら、もちろん無理にはしないよ。……でも、もしよかったらって」





〇〇はドキドキしていた。

怖いわけじゃない。嫌なわけでもない。


それなのに、こんなに自分の思ったことを口に出すのが難しいなんて思わなかった。





でも__この空間では嘘はゆるされない。





〇〇「私も…だいちさんと…手繋いでみたいです」


だいち「ほんと?」


〇〇「……はい。あの、変ですけど……誰かと繋ぎたいって、自分から思ったの、初めてかもしれないです」






だいちは静かに手を伸ばしてきた。





だいち「じゃあ……いい?」


〇〇「…うん」






そっと〇〇も手を伸ばした。


だいちの手は、少し暖かくて、大きくてしっかりしてた。



言葉にしなくても伝わるものがあった。






だいち「〇〇の手、こんなに柔らかいんだな」


〇〇「うぅ………言わないでくださいよ……///」


だいち「いや、ほんとに。……俺、今までこんな風に誰かと手を繋いだことあったっけって思うくらい、ちゃんと繋がってるって感じがする」






〇〇は目を伏せたまま、小さく頷いた。

まっすぐ見返すことはまだできなかった。





__そして次は自分の番だった。


ミッション通りなら〇〇もしてみたいことを言わなければならない。




〇〇(何を言えばいいんだろ……)





少しの沈黙の後〇〇は口を開いた。




〇〇「…頭を、撫でてほしい…です」


だいち「…え?」


〇〇「わたし、昔から誰かにそうされるの、すごく安心するんです。……変かもしれないですけど」





その言葉にだいちはニコッと笑った。




だいち「変じゃないよ…」





手を繋いだまま、だいちはそっと〇〇の方に体を寄せた。


もう片方の手で、静かに〇〇の頭を撫でた。





だいち「……〇〇、よく頑張てるね」






その言葉に、〇〇の目が潤んだ。





〇〇(なんで……涙、出そうになってるの……?)



嬉しいだけなのに、どうしてか言葉が出ない。



ただ、そのまましばらく2人は何も言わず、手を繋いで、頭を撫でられていた。




その時__





ピッ__





また、モニターが光る。





『第3ステップ:互いに“されたいこと”を素直に伝え合ってください。あなたの本音を言葉にすることで、この部屋の鍵が近づきます。』






だいち「…まじか。どんどんエグくなってるな、このゲーム」





だいちは苦笑いして、〇〇の手を少しだけ強く握った。


〇〇もそれに応えるようにギュッと握り返す。






そして__また、新たなステップが2人を試そうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る