第24話 血の渇望

この忙しいのにあいつは何をしているんだ。

王子も緊急招集から戻ってこられない

いったい何が起こっているんだ?

いつもの宰相室でベルは肘をついてうなっていた。

すると急に通信が入った。

ブーンッ

「ベル!大変だ!セルジュ王子が負傷した!」

「はぁ?どう負傷したんだ?」

「なんかよぉ、傷口から血がとまらねえんだ・・・。」

「いったいお前は何をしていたんだデュラン!」

「わりい・・・でもよ神器が神器にかみつくなんて

思ってもなくてよ・・俺はただみてるしかなかったんだ」

くっ、こんな時に王子が負傷とは

城内に知れ渡れば貴族派がだまっちゃいないだろうな

「そちらでできることはしてくれ」

「わかった。」

困ったことになった。

王子の容態も気になるが問題はこの国の情勢

貴族派と民衆派の均等が一気に崩れてしまう

王子についている民衆派と妹君についている貴族派

どちらかがこの気に状じて動く可能性がある・・・。

コンコン

「ベル、私ですラヴィです」

「はい、開いております」

入ってきたのはこの水の国の王子の妹君でラヴィリンス・アクアーム

王子とは二つ年下の妹として産まれ大切に育てられた。

「ベル?お兄様はまだお帰りにならないの?」

「ええ、まだ緊急招集からお帰りになられておりません

王子殿下に御用でしょうか?」

「うん、ちょっとご相談に乗ってほしいことがあったの

でも、まだ帰ってないのよね?」

「まだ、お戻りになられておりませんがすぐに戻られると思いますので」

「そう?じゃあ帰られたらすぐ連絡をお願いね」

「承知しました。」

そういうとラヴィリンスは執務室から出て行った。

上手くごまかせはしたがいつまでもつか・・・。




「もうお兄様ってばいつまで待たせるのかしら」

ラヴィリンスがプンプンしながら廊下を歩いていると

柱の影から何者かの気配がした。

「誰ですの!?」

「ラヴィリンス様申し訳ありませんが我らのために

我らが悲願のために人質となっていただけませんか?」

「だ、大臣!?」

柱の影から出てきたのは老人の姿でこの国の大臣だった。

「おまえたち」

掛け声と同時に影から出てきた者は暗殺者の格好をしていた。

暗殺者は覆面に動きやすい鎧に手にはカギ爪を装備していた。

「いやですわ!」

「あまり抵抗をしないでいただきたい

傷つけるつもりはありませんので」

そういいながら暗殺者は詰め寄ってきた。

「だ!誰か助けっ・・・」

後ろから羽交い絞めにあい口を塞がれ睡眠薬のようなものを嗅がされた。

「お・・・にい・・さま。」

「連れていきなさい」

「は」

「王子のいない今傀儡の王女をしたてればこちらが権力を掌握できる

貴族派の我らが国を支えている優遇されるべきなのだ。

民衆派を取り入れるなど王子の考えはこの国を滅ぼしかねない。

民衆派をつぶし我ら貴族派がこの国を導いていくのだ。

それが先代の王のためでもあり我らの悲願なのだよ。

どんなことをしてでもね・・・。

※※※様、計画は順調です。

このまま王女を監禁してどうすればよいでしょう?」

それは地面から現れ黒い人の形になった。

「傀儡は用意した。そちらの者に任せよ」

「はっ」

もう一つ黒いものが地面から現れ蜘蛛のような人間だった。

「よろしくござんせ、しかし私が王女の身代わりなんてできるのかしら」

「やってもらわねば困る」

「わかってるってば、やればいいんでしょ」

「あとのことは頼んだぞ」

黒い人型の物体は地面へと溶けて消えた。

「じゃあいきますわよ」

そういうと蜘蛛のような人間はラヴィリンス王女へと姿を変えた。

「はっ!」

そういうと大臣は偽王女へついていった。





その頃、風の国では

「セルジュ王子は大丈夫なの!?」

「それがよお出血が止まらなくて体の様子もおかしいんだ。

目が赤く染まって体も黒く変色してきてるんだ。」

噛まれたのが影響しているのかしら・・・。

まさか吸血機に噛まれたから魔人化が感染したの!?

「がああああっ!あああああ!!!はぁはぁ

ぐっ、ああっ!ああ!血が!血が欲しい!!」

「セルジュ王子!?しっかりしてください!!」

セルジュ王子は血の渇望が始まり口からは牙が生えてきていた。

「ち、血がぁぁあああっ!!」

「私が血を与えます!!」

「お、おい!冗談だろう!?王女さん!」

「いえ、このままではいずれ変貌をしてしまうので

どちらにしても今できることをしないと王子は助からないと思うの

一か八かの賭けでもあるけど噛まれずに血をあげることができれば

感染せずにこの症状を抑えることができるかもしれません!」

時間稼ぎにしかならないかもしれないけど・・・。

「ナイフを貸してください!」

「な、ナイフって・・これしかないけど」

ナディーナは懐からナイフを取り出しラクサーシャに手渡した。

ラクサーシャはナディーナからナイフを受け取り自分の手首を切った。

「痛っつ」

痛いけどこれしかないなら!

ラクサーシャは手首から出てる血をセルジュ王子の口の上に差し出した。

セルジュ王子は滴る血を飲み続けた。

するとセルジュ王子の体の変化が薄れ徐々に平常にもどり始めた。

「はぁ、はぁ、僕はいったい・・・」

「王子・・大丈夫ですか?」

「え?これはいったい・・・」

王子は現状が把握できず混乱していた。

ラクサーシャは血液を流しすぎて貧血となりふらりとその場に座り込んだ。

「お、おい!大丈夫かい!?」

「え、ええたぶん貧血だと思う・・」

「すぐに処置をしてもらいな!救護班!王女殿下を頼むよ!」

「はい!王女殿下こちらへ!」

ラクサーシャは別室へと運ばれた。

「お、王子!大丈夫なのですか?」

「あ、ああなんとか大丈夫みたいだ心配かけたねデュラン」

みると肩からの出血も止まっていた。

「ナディーナこれはいったい何があったのですか?」

「王子が魔人化しそうになってな血の渇望が始まって

それで王女が自らの血を差し出したんだ。」

「そ、それは本当なんですか!?」

「ああ、本当だ。あたいらは何が何だかわからなかった

あの王女だけがなんかわかってたみたいで

でもよ、これで収まるとはあたいは思えないんだ」

「血の渇望とやらがまた始まるというのですか?」

「血の渇きを感じたら起きるかもしれない

私はそう思うよ」

「まるでヴァンパイアですね・・・」

「そう王子、あんたはヴァンパイアに噛まれたんだ

あの魔人化した神器に

あれはもう魔物に近い何かだ

ヴァンパイアと呼べるかもしれない」

「ヴァンパイア・・ですか

僕もそのヴァンパイアになるかもしれないというんですね」

「その可能性はある

けどあの王女さんがそれを止めてくれる

自らを傷つけてまでな」

「僕はどうしたらいいんでしょう・・・」

「とりあえずなにか対策が思いつくまで血をもらうしかないんじゃないか?」

「そうですね・・・」

セルジュ王子がふさぎこんでいると突然通信が入った。

「誰だいこんな忙しいときに」

「俺だベルだ。王子はご無事でおられますか?」

「ああ、なんとか命はとりとめたよ」

「そうですか・・・。安心しているところ申し訳ないのですが

至急水の国へお戻りになっていただけませんか?」

「お、おい今からかい?王子も今落ち着いたところだってのに」

「それが大変なんです。

妹君が何者かにさらわれました。」

「え!?ちょ、どうなんってんのさあんたの国は」

「ラヴィは無事なんですか?」

「おそらく命は大丈夫かと思われます

俺の推測ですが大臣含む貴族派が動き始めたのではないかと」

「くっ、こんなときに

わかりました。僕は大至急で水の国へ帰還します

それまではベル、なんとか情報を集めてください。」

「わかりました。王子もお気をつけて

デュラン!今度はしくじるなよ?」

「わ、わかってるよ」

「あんたの国も大変だねえ~」

「まあいろいろあってよ

じゃあ王子ひとっ走り国まで戻りやすぜ」

「ああ、頼んだよデュラン」

そういうと王子一行は飛空艇のドックまで走っていった。

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