第21話 大地の国

ここが迷いの森ですか

前に来た時よりずいぶん雰囲気が違うようですが

ジードは周りをキョロキョロと見渡した。

「あなたたちはここで待機していてください

念のためステルスを使用していてください。」

「はっ!」

さて、進みましょうか

ジードは森の中をただひたすら歩き続けた。

招かれている以上何らかのアクションをしてくるはずなんですが

変ですね・・・。

と途方に暮れていると

目の前に急に光が現れた。

「遅いじゃない」

「あなたは・・?妖精?それとも使い魔の一種ですか?」

「私はグレース様に作られた人造生命体よ

他の世界ではホムンクルスって呼ばれているわね」

「これがホムンクルスですか・・・

とても興味深いです。できれば解剖してじっくり調べたいところですが」

「か、解剖!?あなたを連れて行くのやめようかしら・・・」

「冗談です、あなたが案内人ですね?」

「そうよ、おばあさまに案内しておいでって言われてるから仕方なく

きたけどホントは嫌なんだからね?」

案内人はプンプンとさせながらもついて来いというような仕草をした。

「グレースというのは土の国の権力者でしょうか?」

「おばあさまはエルフの国の女王よ

エルフは長寿だから女王が変わることはあまりないの

だからずっとあの地で女王をしていらっしゃるわ

それも5000年まえからずっとね

この世界が生まれたのも丁度5000年前なんだって」

「5000年ですか・・・500年に一度世界は滅びを迎えている

と私は思っていたのですが間違いでしょうか?」

「うーん間違ってないと思うよ?

世界が滅びてるのは私も見たし

エルフの世界と魔族の世界は別次元だから

その世界には滅亡の干渉をしていないんじゃない?」

「別次元だから滅亡を回避している・・・と

この世界だけが500年毎に滅亡し再生を繰り返しているのは

なぜなんでしょうね?」

「さあ?おばあさまに会えばわかるんじゃない?

わたしはそんなに長く生きていないからあなたの問には答えられない

わたしはおばあさまのお使いでしかないから

だから難しいことはよくわからないわ」

これはこの世界の真実がまた違った形で見えてきそうですね

5000年もの間生き続けてきたエルフの王がいるのなら

それに似た魔族の王と呼ばれるものもいるのでしょうか?

「あったあったここよ~」

案内人はゲートと思われる場所を指さした。

「ここをくぐればエルフの世界に出られるわ

あなたにもゲートをくぐれるおまじないをしてあげるね」

案内人は両手を広げ光り輝く何かをジードの方へ投げつけた。

光はジード全体を包み込みしばらくして消えた。

これは魔法の一種でしょうか・・?

「これでこのゲートを通ることができるから

さあ、いきましょう!ついてきて」

ジードは案内人の後を慎重に進みゲートを通った。

ゲートを通った先には別の世界が広がっていた。

「ここが妖精界よ

そして、あそこがエルフの王国ね」

「あそこが・・・エルフの王国・・だと?」

ジードは信じられないものを見て驚愕した。

それはかつて自分が転生する前の世界だったからだ。

「これはいったいどういうことなんでしょう?」

ジードが混乱しつつ冷静に分析をしようとしていると

「あそこにおばあさまのお家があるからついてきて」

と案内人が一軒の家屋を指さして飛んで行った。

ジードも訳が分からずいたがとりあえずついていくことにした。

そして、一軒の家屋についたジードは扉をあけ中に入ると

そこには一人の老婆が出迎えてくれた。

「ようこそいらっしゃいました。

聞きたいことも山ほどあるでしょうが今は中へお入りくださいね。

お茶でもご用意するから」

といって一人の老婆が中へと入っていた。

ジードも玄関で靴を脱ぎ中に入ることにした。

ここはまるで前世でみた地球の民家そのものだ。

私は夢でも見ているのだろうか・・・。

ジードは居室の台所につきそこのテーブルにある椅子を勧められた。

ジードは座り老婆へと向き直った。

「すみませんが質問をしてもよろしでしょうか?」

「ちょっとまってくださいね

今お茶をお入れするから」

老婆は手際よくお茶をいれジードに差し出した。

「ありがとうございます」

「はい、いいわよ

お茶請けはなにがいいかしら?

久しぶりのお客さんだからあまり用意してなくてごめんなさいね」

「いえ、お構いなく

それでここはいったいどこなのでしょうか?」

「あなたが驚くのも無理はないわね

ここは地球と呼ばれている世界です

大地の国、アースなんて呼ばれたりもしてたわね」

「あなたはエルフなのですか?」

「ええ、そうね私もそうだけどあなたもそうなのよ?

この世界に見覚えはないかしら?

おそらくこの世界での記憶もあるのでしょうから

さぞ驚いたでしょうね」

「まってください。まさか私はこの国で生まれたということでしょうか?」

「ええ、そうね。そして不慮の事故で死んでしまった。

その事故が偶然なのか必然なのかどちらにしても

あなたは死にあちらの世界に飛ばされた。」

「それでは、ほかの転生者もここで死にあちらへ転生された?

ここでの死はあちらの転生に少なからず寄与していると

そして、こちらでの死もあらかじめ定められている?」

「あなたの疑問には正解もあるけれど不正解もあるわね

ただしくは、魔女の因子と世界が認定すれば必然と転生が行われる

そうプログラムされているの。神々によってね

少し昔話をしましょうか

あちらの世界が生まれるようになった事の発端は、この世界の戦争が

大きく寄与しているの

人は自分にないのもを見るとそれは異端なもの脅威な物と見なすわ

そして魔女だと認定しその魔女たちを火あぶりにした。

後にそれを魔女狩りと呼んでいたわ

本当の所は魔女なんていもしないのに

人の欲望である妬みや嫉妬、憎悪がそれを作り出し魔女であると非難した。

終わることのない魔女狩りに世界の神々は怒り嘆き悲しんだ。

その結果あちらの世界が誕生したの

こちらで魔女認定された人々を救済しあちらの世界に送り込んだ。

でもどういうことか500年毎にその世界が滅亡をしてしまうの

そのたびに神々は世界を再生し、また魔女を送り込んだ

あちらの世界も不完全で500年たつうちに醜い争いを起こしてしまう

そうして500年が限界だろうと判断した神々は500年毎に世界を

まっさらしにようとプログラムを作り替えた。

それが今のあの世界の理でもあり仕組みでもあるの」

「その世界の滅亡を食い止める手立てはあるのでしょうか?」

「平和であると証明することじゃないかしら?」

「平和・・ですか」

「いつの世も戦争や争いを引き起こし世界を壊し続けてきた

それが終わりを迎え平和な世界になれば神々もプログラムを

作り替えてくれるかもしれないわね

魔物の襲撃もプログラムされたものよ

わざと国と国を結び付けるために

そうすれば醜さが現れ戦争が起きるかもしれない

そうならなければ平和な結びつきになるかもしれないけど

いつも戦争が起きて滅亡をしているわ」

「神器は、なんのためにあるのですか?」

「神器とは可能性のひとつよ

戦争を終わらせるのも世界を終わらせるのも神器一つで可能だから

それをどう使うかはあなた達次第」

「私はどうしてここに呼ばれたのでしょうか?」

「あなたにならこの世界を見ても理解をしてくれるんじゃないかと思って

そしてそのイレギュラーな存在をも利用し世界を救ってくれるような気がしてね」

「私は善人ではありませんよ

私はただなんでも知りたいだけの変人です」

「あとはそう、火の因子がいないでしょう?

だからその因子の子を連れて行ってほしくて」

「火の因子は転生ではなくてもいいのでしょうか?」

「大丈夫ですよ、私が帰ってきていた因子を別の子に与えたから

丁度いま呼んであるからお呼びしますね

イザミさん入ってきて頂戴」

「はい、おばあさま。お呼びでしょうか?」

そこに入ってきたのは女子高生の服を着た黒髪の女性だった。

「この子は私の孫でイザミです

イザミさんこちらジードさんあちらの世界に連れて行ってくれるわ」

「ジード様よろしくおねがいします」

そういうと丁寧にお辞儀をした。

「ええ、こちらこそよろしくおねがいしますね

ひとつお尋ねしたいのですが

消滅してしまった神器は復元できるのでしょうか?」

「愚かなことに自爆をさせてしまって者がいたわね

でも、大丈夫よ神器はコアがあれば再生が可能なの

消滅した場所に行きコアを回収なさい

あと大事なことがひとつあるのだけど

神器は暴走すればするほど制御が効かなくなるわ

最終的に制御がきかなくなり神器は人へと変貌します

人化が進めば魔人となりあたり一帯を滅ぼしてしまうの

血をすすり貪り喰らう化け物となれば倒すしかありません

搭乗者も喰われてしまうから助からない」

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