第18話 美しき姉妹

あたいにはとてもすごい自慢の姉貴がいる

いつも勝負ごとになると必ず勝ちを奪っていく

姉貴が負けたところは見たことがない

あたいは好きなものに没頭しているだけの

メカオタクでいつもその姉貴の姿を見てきた。

その日はフェンシングの全国大会で

いつもならあたいも見に行くんだけど

その日は見に行けなかったんだ。

急な修理の依頼も来てたし心配しなくても

姉貴の圧勝だろうと私は信じていた。

姉貴の試合が終わったであろう時間を時計がさしていた。

あたいは姉貴を迎えにいくべく自前のバイクに乗って迎えに行った。

着いたとき姉貴は元気がなかった。

「どうしたんだ?」って聞いたけど話してくれなくて

「帰ろうぜって」言ったら「歩いて帰るからいい」

っていうんだぜ?

しょうがないから私は先に帰ることにした。

あの姉貴があんな落ち込むなんてまさか

試合に負けたのか?

姉貴が負けたことなんてなかったのに

あたいは先に家に帰ってきた。

でもなんだか猛烈に嫌な予感がした。

いてもたってもいられなくてまたバイクを出して姉貴を迎えに行った。

試合会場について姉貴のことを聞くと「もう帰りましたよ?」

なんていうもんだから行き違いになったのかな?

帰ったのかな?なんて思っても

この不安をよぎる嫌な予感は全然取れない

やっぱり気になるからその辺を探しに行こう

私は途中の草むらあたりも調べることにした。

その草むらに入るにつれてドキドキが止まなくなってきた。

この先に・・この先になにか・・

草むらを分けて広いところに着いたとき

一人の女性が倒れているのが見えた。

「だ、大丈夫か!?」

私は気になってその女性のそばに近寄った。

その女性はうつぶせになっていて腹部から血が出ていた。

「血・・・?ひぃ!」

私は怖くなりその女性が誰なのか知るため体を仰向けにした。

するとそこには口から血を流している姉貴の顔があった。

「え・・・あ・・ねき?あねきいいいっ!」

私は大声で叫び呼びながら体を揺らしたが起きる気配はなかった。

身体は冷たくすでに息を引き取っていた。

「そ、そんな!そんなああ!!」

あたいは泣きながら姉貴の体に顔をうずめていると

背後から気配がした。

ま、まさか!殺人犯!?

あたいが振り向こうとした瞬間背中に鋭い痛みが走った。

「あ・・・、がはっ!」

何度も何度も痛みが走りあたいの意識はなくなるのだった。

姉貴を抱きかかえたまま一緒に・・・。




私は高校3年生で部活のフェンシングに人生をかけていた

いえ何事にも必死で人生をかけるかのごとくに務めた

それが当たり前だっと思っていたから

才能があるない関わらず努力はするものだと

天才でも努力をしないものは成功しない

そう誰にでも言ってきた。

妹は才能はないけど好きなことに一生懸命だった。

私はそれが正直うらやましかった。

でもあのこは私のことを尊敬していた。

そんな尊敬をうらぎることもできずただただ成果を出してきた。

楽しいと思ったこともない

ただ、やらなきゃって思って

そうしていくうちに私はフェンシング部の主将になっていた。

リーダーシップがあるわけでもない

ただ、うまいからとか天才だからとかそれだけで

そういうひとがやるもんだと思っていた。

そんなとき顧問の先生から変な話をされた。

「全国大会の二回戦でわざと負けろ

そうすればお前の行きたい大学の推薦もしてやる

主将にしてやって試合にもだしてやったんだ

それくらいしてくれてもいいだろう?」

そういってきたのだ

フェンシングのためにあの大学には行きたい・・・けどわざと負けるなんて・・。

だからこう言ってやった。

「そんなことできるんですか?

できもしないことを言ってふざけたことを言うのはやめてください!

どうせ八百長でお金をもらう約束でもしてるんでしょう!?

教育委員会に訴えますよ!?」

と睨みながら言った。

顧問の先生は増悪に歪んだ顔をした。

「お前には期待してたんだけどな

もうお前にはフェンシングの未来はねえよ」

そう言いながら去っていった。

全国大会では全力をだすつもりだった

でも正直自分の好きなことをして生きていくのもありなのかなって思いもした

私もただ、一生懸命にやっているだけでいつも悩んでいた。

本当にこのままでいいのだろうかって

フェンシングのために大学もいいところを選んだ

でも、正直どうでもよかった。

推薦なんかもどうでもよかったんだ。

でも許せないのはわざと負けること

真剣な勝負の場でそれは相手に対する侮辱を意味する

そんなことをするくらいならフェンシングをやめてもいいと思っていた。

でも、妹には何も教えていない

姉貴はすごいんだっていつも言ってくれている

私は妹の期待を裏切ることはできない

だから私は今日でフェンシングをやめることにした。

これが最後の試合になる

妹にも明日は来なくていいと伝えたが

丁度急ぎの用があるとかでこれないらしい

私は安堵し次の日、全国大会の試合に出た。

私は決勝で負けたのだ。これは私の迷いが生んだ結果だ。

後悔もしていない・・・だけどなんか晴れ晴れした気分だった。

試合が終わって妹が迎えに来てくれた。

でもまだ決着がついていないこともあるから

歩いて帰るとつげた

そしたら妹は先に帰っていった。

私は先生に部活をやめることを伝えた。

そうすると先生は近くの草むらまでこいと言ってきた。

私は危険な感じがしたけど決着はつけなくちゃいけない

これで私の気持ちを終わらせるんだ。

そう思い私は待ち合わせの草むらまで行った。

そこには先生が後ろを向いて待っていた。

私は先生に言った。

「私はフェンシング部をやめます推薦もいりません

ですが先生の言ったことは教育委員会に報告させてもらいます」

「お、お前なんかに俺の気持なんかわからねえよ!

なんでもうまくできるお前なんかに!お前なんかに!!

落ちぶれてこんな顧問につかされて安月給で死んでたまるか!

お前なんかいなくても他の生徒を利用して俺はのしあがるんだ!

スポンサーはな面白い試合を期待してんだよ

だから邪魔すんじゃねえ!」

そう言いながら包丁を片手に突っこんできた。

「こ、こんなの!」

私が避けようと思うと近くからバイクの音がした。

え?なんで?妹が来ちゃう!

そう油断したとき

グサッ

え?・・・

気づいたら包丁が腹部に刺さっていた。

私・・死ぬの?

包丁を抜かれ傷口から血がドバっと出てくるのが分かった。

私は力を失いうつぶせに倒れた。

「ぐ、い、いもうとにだけは

手を・・ださせないっ!」

「まだ生きてんのかぁ?はやくしね!」

コーチは頭に足蹴りをしてきた。

「お前の妹は・・俺が殺してやるから安心しろ

ぐふふ、はははっ・・・」

そして私は意識を失い命も失うのであった。




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