第16話 犠牲と尊厳
手術が終わり私達はそれぞれの私室へと帰された。
私は自分の片目をネフィリム王女に移植した。
でも後悔はしていない。
元々片目は髪で隠れて見えてなかったし片目でも生きていけるよね?
なんて言い訳するように自分に言って聞かせた。
コンコン
「はい、どうぞ」
「ジードです、お身体のほうはどんな具合でしょう?」
そう言いながらジード団長がお部屋に入ってきた。
「ええ、もう大丈夫です
どちらかといえばネフィリム王女の方が重症なので」
「あなたも片目を移植されたでしょう?
本来ならわたしにもご相談頂きたかったですが
やってしまったものは仕方がないでしょうし
殿下らしいといえばらしいですがね」
「すみません、勝手なことをしてしまって」
「そう思われるのでしたら次からはご相談ください
まあ止めても聞かないでしょうが」
とお手上げのポーズをした。
「ですがそれで彼女は、ネフィリム王女はお喜びになるでしょうか
王族のプライドが彼女を素直にさせるとは思いませんし
誰かの犠牲で失った物を取り戻せたとしても
はたしてそれで良かったと思えるでしょうか?」
「プライドとはそんなに大切なものなの?」
「ええ、王族ならなおさらです
それは我々人間の尊厳と同じですよ
尊厳とはその人を人たらしめるもの
王族であるネフィリム王女そのものなんですよ
あなたも王族であったのなら少しは理解できるのではありませんか?」
「命より大切なものがこの世には沢山あるというの?
命より尊厳の方が大事だと
本気で言ってるの?」
「どうやらあなたには王族としての理解が足りないようですねえ
ですが、この世界が滅亡してしまっては王族に拘っても何も得られないでしょう
そういった意味ではあなたのいう事は理解できます
ですが事は簡単な話ではないのですよ
王族が王族に同情し片目を与えた。
そこにどのような苦しみを彼女に与えるのか考えください
あなたのしたことが同情でないことを祈りますよ
では、今日のところは失礼します
ああ、そうそういったん火の国へ帰還しますのでそのつもりでいてください。」
そういうとジード団長は部屋から出て行った。
王族って大変よね・・私も王族だけど
私の場合過保護すぎるくらいに優しく育てられたみたい
だからあまり王族の尊厳が理解できない
勉強不足のまま私は王女になってしまったのだから
私の行為はネフィリム王女を傷つけてしまったの・・?
ゴンゴン!
力強いノックが聞こえた。
「はい」
「ネフィリムです、今よろしいかしら?」
「はい!大丈夫です」
いきなりの王女訪問でドキッとしてしまった。
ガン!
乱暴に扉が開かれた。
こちらを探しながらきょろきょろし
私を見つけるとギョっと睨みつけた。
「あなた!」
づかづかと乱暴に入ってきて私の襟をつかんで自分に引き寄せた。
「え、あ、あの・・」
私は何がなんだかわからず様子を見ていると
「あなたがやったことの意味・・
わかっててやったの!?」
「え、あ、はい」
「私は情けなんていらない!同情なんてごめんなの!
別に眼が見えなくてもよかったのよ!!」
よく見ると右腕は途中から機械が混じりサイボーグのようだった。
「あ、あねき!そこまで言わなくてもいいんじゃ」
「あなたは黙ってなさい!
私はこの世間知らずの王女に言ってるの!」
「それにその腕は機械がまじってるから力加減が難しいんだって
下手したら殺しかねないぞ」
「うっ、それはだめね・・」
ネフィリムはそっと手を離した。
「でもね、あなたのやったことは私に対する侮辱よ
私はあなたを許さないから」
そういうとネフィリム王女は部屋から出て行った。
「ラクシャ殿下、すまねえな
あねきはあれでも感謝はしてるんだよ
でもな、あんたのような子が私に大事な眼をって
すごく怒っててさ
ほんとは自分を大事にしてほしかったんだと思うよ
あねきが思うのも変だけどさ
死にたいって言ってたあねきがさ
今は生きたいっていってる
あたいは嬉しいんだ
だから、その命を助けてくれたあんたには
すごく感謝してるんだ。
あねきもな感謝してる
感謝しすぎるくらいにね
だから貰いすぎなんだって
正直じゃないところも王族である以上しょうがないと思う
あたいは・・まあ王族だけどこんなだからさ
王女ってみられてないけど
あねきは生まれた時から英才教育受けてきてな
体に刻み込まれた王女なんだよ
元は地球人だってのにな
おっと喋りすぎたな
あまり遅いと姉貴に怒られるからじゃあな」
ナディーナがそういうとネフィリム王女を追いかけて行った。
「わたし・・ネフィリム王女と友達になれるのかな・・・」
理解できないことが多すぎて私は困惑していた。
「本国から通信はありますか?」
「はい、奇妙なロボットの襲撃があったそうですが
ヴェスティアが対処したそうです」
「ロボット・・・ですか
気になりますね
大至急本国へ帰還します
殿下にもそうお伝えください。」
「は」
「これは面白いものが見れそうですね」
それから数時間が立ち・・
「団長、なにか小さい機影のようなもを捉えました。」
「映像に映してください」
ブーンッ
「ほーあれがロボットですか
どこか吸血機に似ている感じはしますが
大至急殿下をここにお連れしてください。」
「は」
それから少しして
「ジード団長、およびですか?」
「あれをご覧ください」
ジード団長はスクリーンを指さした。
「あれは・・吸血機・・・ですか?」
「あなたにもそう見えますか?
ひょっとしたら吸血機の凡用型の量産機かもしれませんね
殿下、あれを回収してきていただけませんか?」
「あ、あれをですか?」
「ええ、腕や足についてはなくても構いません
ですが、できれば中央のコクピットは残してください
ああ、もし搭乗者がいても殺さないでくださいね
捕虜として尋問をさせていただきますので」
「わ、わかりました。」
私は甲板に出て神器を出現させた。
「アズマーダ!いくよ!」
了解ダ
私はアズマーダに乗り敵であろうロボットの方へ近づいた。
「あ、あれね」
私が近づこうとしたとき敵のロボットがこちらに気が付いた。
気が付いたロボットはこちらに銃のようなものを向けて討ってきた。
「ちょ、あれは銃なんじゃ」
私は避けながらロボットに近づき手刀でロボットの頭を破壊した。
「なんてもろいロボットなんだろう」
そう思っているともう1機のロボットは逃げて行った。
(殿下、追わなくて結構ですのでそちらのロボットを回収してください)
「わかりました」
私は動かなくなったロボットをかついで飛空艇の甲板へと飛んだ。
「よっと、ここに置いたらいいのかな」
私がロボットを甲板に置くと神器が用が済んだと言わんばかりに消えていった。
「操縦席を開けてください」
ジード団長が部下に命令をした。
操縦席を開けるとそこには兵士がいた
しかし兵士はなぜか死んでいた。
「これは・・・死んでいるようですね
どこの国の兵士かわかりますか?」
「おそらく雷の国の兵士でしょう」
ランディ副団長が兵士の服を指さした。
「なるほど、服に紋章がありますね
ということは雷の国は吸血機を量産し他国へと侵略をしようとしているということでしょうか
まさかあの神器を量産するとは
まさに神をもおそれぬ所業とはこのことですね
この兵士は頭部を負傷したことによるショック死といったところでしょうか
無駄にそういったところを再現しすぎている気もしますが
動力源である血液もそのままですか
これは調べればもっとわかることがありそうですね
至急このロボットを研究室へ運んでください。」
「はっ!」
「私は本国につくまでこのロボットを調べてみます
殿下はそれまでお部屋でお休みください。」
「はい・・・」
私、人を殺しちゃったみたい
手刀で・・・
複雑な気持ちのまま私は自室へと帰室した。
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