第15話 二人の王女
「こ、ここは・・?」
「殿下、お体の具合はどうですか?」
「あ、うん大丈夫
私はどうしちゃったの?」
「殿下は光の矢を射たれたときに全魔力を使用したためか気絶されました。」
あちゃ~、また気絶しちゃってたみたい。
「戦況の方はどうなっているのですか?」
「ワイバーン部隊は蹴散らしたのですがその後大型の個体ドラゴンが現れまして
今はネフィリム殿下が注意を引き付けております」
「え、大変!急いでいかなきゃ!」
「殿下も御無理をなさらぬよう
ここで倒れてはもともこもありませんので」
「ええ、それはわかっているわ
でも、わたしがでないとネフィリム殿下も危ないと思うの」
「わかりました。
では甲板のほうへいきましょう」
「はい」
私はランディ副団長と甲板へ出た。
「殿下、御武運を」
「ええ、いってくるわ
アズマーダ!いくわよ」
オオオオウ!
神器が現れ王女の姿が消え去った。
神器の背中からコウモリのような翼が生え
高速で飛んでいった。
「神器って空も飛べるのね」
当タリ前ダロウ
全テノ神器ニ備ワッテイルモノダ
「そうなんだ
ネフィリム殿下は?」
アソコニイルヨウダ
アノドラゴンノ近クダ
私は少し先にドラゴンと戦っている神器の姿を確認した。
「風の神器って言われるだけあって風を自在に駆け抜ける様子がすごいわかる
早いけど今のわたしでも捉えることができそう」
(殿下、今ネフィリム殿下が奴の注意を引き付けているのでその隙に攻撃を試みてください)
「ええ、わかったわ」
私は光の矢を出現させ弓を構えた。
ググググッ
「いっけえええ!!」
パンッ!
光の弓が発射されドラゴンへと命中した。
ガキン!
え?なんか弾かれた。
(どうやら光の矢は弾かれたようですね
鱗が固いせいか外皮にすら届かないとは
これはやっかいですねえ)
「ど、どうしたら!?」
(落ち着いてください
まだ勝機がないわけではありません
おそらく奴の内部はそこまで固くないはずです)
「内部?内部ってお腹のなか??」
(ええ、例えて言うならそうですね
で、弱点が喉だというなら口の中から攻撃を加える他ありません)
「そんな食べられちゃうじゃん!」
(食べられる前に倒してしまえばいいのです)
「んな無茶苦茶な・・」
(ですがグズグズしてもいられないのです
ネフィリム殿下の体力もそこまで長くもちません
短期決戦が一番合理的で勝算がある戦いです)
「ラクサーシャ殿下、わたしの体力も確かに長くはもちません
ですからわたしに力をお貸しください」
「わかりました、それで私は何をすればいいですか?」
「それは・・・」
「救護班を直ちに向かわせます!
救護班!ネフィリム殿下を大至急医療室へ運びなさい!」
「ドロシー・・わたしやったわ」
「姫様!もう喋らないでください
傷も深くこのままでは・・・!」
「ええ、わかってるの
もうわたしの眼は戻らないわ
腕の火傷も相当なもの・・
それでも・・それでもっ!
わたしは良かったと思ってる
あのままベッドでなにもせず死んでしまうより
戦って死ねることに誇りをもつわ・・・
後悔もしない・・
だから・・ありがとう・・・。」
ネフィリムは満面な笑顔をドロシーに向け泣きながら眠りについた。
「姫様・・」
「気絶しただけのようです
ですが身体の火傷は腕だけのようですし
命には別状はないかと思われます」
「だが姫様は・・もう眼を開けることはないのだ
その眼でなにかを見ることができなくなる
腕も失ってしまうかもしれないのだ」
「あの!私の眼をあげることはできませんか?」
そう言い出したのは、ラクサーシャ王女殿下
「で、ですがよろしいのですか?」
「ええ、同じ王女として私はネフィリム王女の力になりたい!
それに片眼だって見えなくなるわけじゃないし
だからお願いします!」
「わかりました。ラクサーシャ王女殿下
このご恩は一生忘れません
急ぎ緊急手術の準備を!あとナディーナ殿下をここへ!」
二人の王女は並んでベッドに横になっていた。
「ネフィリム・・あなたとは友達になりたいです
目覚めたときあなたはどう思うかな?」
「ラクサーシャ殿下、麻酔を行います」
「はい」
こうして私の意識は少しづつ遠退いていった。
あの時、わたしにも何かできてたら
違ってたのかな・・・・。
そう思いながら目蓋を閉じた。
「わたしに光の矢を全力で射ってください!」
「え?全力・・ですか?」
「ええ!全力でお願いします!」
「なんだかわからないけどわかりました!」
私は全魔力を光の矢に集中した。
「思いっきり引き絞ってえええ!」
ググググッ
「いきます!
はあああああ!!」
バンッ!
光の矢がネフィリムへと飛んでいった。
光の矢がネフィリムに当たる瞬間
ネフィリムがレイピアに光の矢を取り込んだ。
ネフィリムのレイピアが光輝いた。
「これならいけるわ
外側がダメなら内側、口から直接喉に撃ち込む!」
ネフィリムはドラゴンに向き直り光のレイピアを構えた。
「ゼフィール!全エネルギーを移動に回して!」
ワカッタワ
シュイーーン!
「ブースト全開で!
いきますっ!!」
シュン!
一瞬でドラゴンの口付近まで到着した。
ドラゴンが口を開けブレスを吐く構えをした。
「今!はぁああああああ!!!」
口の中へ突撃し喉にある竜石めがけて全力で突きをおみまいした。
光のレイピアは竜の喉にある竜石にぶちあたった。
しかし、予想以上に固かった。
「いけない!このままじゃブレスが!」
(殿下!お下がりください!)
少ししてドラゴンのブレスが放たれた。
「あ、あつい!けど次は絶対できないから
ここでこいつを破壊しないと!」
ブレスをその身に受けたまま喉にある竜の石に攻撃を続けた。
神器もブレスにより赤黒く変色し始めた。
コノママデハ神器ガモチマセン!
「ぜ、ゼフィール!BSKモード使います!」
(殿下!いけません!命に関わります!)
「それでも!それでもやるしかないの!
こいつをここで倒さないと!
私はもう一度戦う力はないから
だから!全力でこいつを!」
BSKモード発動シマス
シュイーン!
「こんなの!こんな痛み今まで苦しんできた痛みに比べたらどおってことないわ!
いくわ!全力で!
ゼフィール!力を貸して!!
ぐっ、はぁああああああああああ!!!!!」
ピシピシッ
パキンッ!
竜の竜石が壊れる音がした。
そのとき竜の口が閉まりネフィリムは竜の口に閉じ込められた。
「た、食べられちゃった!?」
(姫様ぁああ!)
一瞬竜の動きが止まり時間そのものが止まったかに見えた。
バシュン!!
すると竜の後頭部を突き破りレイピアを構えたままの神器が飛び出してきた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
ネフィリムが気絶をしたのか神器力をなくしそのまま地面へと落下した。
そして、ドラゴンも絶命しそのまま地面へと落下した。
こうして風の国での戦闘は無事勝利という形で終わるのだった。
ネフィリムの負傷を代償にして・・・。
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