第14話 気高き王女
「はああああああ!」
ザシュ!
一体、また一体とワイバーンが落ちていく
バシバシ!ズバ!
風の神器はすさまじい動きと勢いでワイバーンを蹴散らしていった。
(ネフィリム殿下、あまり御無理をなさらぬようお願いします
まだ邪気が払われたばかりです
御無理をすれば御命に関わります)
「わかっています」
私は今だかつてない体の軽さと沸いてくる力の喜びに無我夢中でとても止まってなどいられない
このまま飛び去りたいとまで思っていた。
「敵の弱点をひと突きですか」
「あねきは前の世界ではフェンシング部の主将で全国大会で常に優勝を狙っていたんだ。
だからあの強さなんだよ
でも、こっちに生まれてきてさ
いきなり体が弱く心臓もあまり機能しないままで
体を動かしたくても動かせない不自由な生活をよぎなくされたんだ。
死にたいってあねきの気持ちもあたいにはわかるよ」
「魂に刻み込まれた才能ですか
それともあなたのギフトも関連してくるのでしょうか?」
「あたいが弱点をあねきに通信で教えてるからってのもあるかもしれないけどさ
でもさ、喉が弱点って言われても素人がそこめがけてひと突きで倒せるもんか?」
「無理でしょうね
あの方以外は・・」
戦う姿はまるで戦場に生きる蝶のようで
蜂のような鋭き突きで敵を一掃していた。
「いくら魔の瘴気が払われたからといってあそこまで動けるものでしょうか?」
「あれはな、あねきのギフトなんだ。
一定時間だけど無呼吸で過ごすことができる
そのおかげで今まで生きてこられたのもあるんだけどね」
「だからあの動きができるのですね
素晴らしい、実に素晴らしい
ところでうちの殿下はどうでしょうか?」
「もう少ししたら出られるそうです」
「そうですか、ドラゴンが来るまでに出られるといいですね」
「あんた血も涙もない鬼だね」
「それは褒め言葉として受け取っておきましょう」
「けっ、あの王女もなんでこんなやつのところに亡命なんかしたんだか」
「それがもっと良い選択肢、合理的かつ効率的な選択肢だからですよ
倫理的とはいいませんがね
ですが、今の彼女・・・王女殿下は
王女らしさを増したと
私は思っているんですがね
気高き王女・・これはそちらの王女殿下にも言えますが双方気高き志をお持ちのようで
戦うための理由を探しながら人々を守るために気高く戦うラクサーシャ王女
王族であることに誇りを持ち戦うことで己を奮い立たせようとしているネフィリム王女
どちらも気高くそして美しい
そうは思いませんか?」
「けっ、気色悪い言い方しやがって」
少し前のこと
「いいですか
魔力は最大限で使用し矢には一点に集中するよう念じてください」
そんなこといっても・・魔力は最大で矢を・・
だめだ、これにあの人の、王女殿下の命がかかってくると思うと手が震えてくる。
私の手は震え焦点が定まらないでいた。
そのとき構えた手に人の手が触れる感じがした。
「私もお手伝いさせていただきましょう」
そういってジード団長が私の体に密着するように二人で弓矢を構えるような形で手を振れてきた。
余計ドキドキするじゃない!?
と思っていると
(あんなものに姫様を託して大丈夫なのだろうか)
(これでもまだぶれますね)
え!?なんか色々聞こえてくるんだけど・・
そう思っていると
こちらに凝視してくるジード団長と目が合った。
え?なんなの?
「殿下・・・もしかして
私の声が聞こえてましたか?」
「うん、なんか回りの声も聞こえてきて」
「大至急ナディーナをこちらへ寄越してください!
大至急です!」
えっ?わたし何かやらかした?
てかまだ光の矢をうってないし
「殿下はまだ矢を撃たないでください」
「え?は、はあ」
このまま待機すんのかぁ
と思っていたらすぐにナディーナが到着した。
「ジード、なんなんだい!急に呼び出して」
「説明はあとです、まずは私と交代してください。」
「わかったよ、たく・・あとでちゃんと教えろよな」
「ええ、もちろんです」
そういうとジードからナディーナにチェンジした。
すると魔力が見えるようになった。
「え?これすごい!魔力が見える」
「それってあたいのギフトじゃないかい
あたいの魔力感知のギフト」
「殿下はもしかしたら触れた方のギフトを自分の力にすることができるのかもしれません
それが殿下のギフトだと」
え、それってすごいの?
「ええ、とても素晴らしいです
ですが今はネフィリム殿下の治療に集中してください」
「え、あ、はい」
わたしは光の矢を最大限に強くし一点集中を試みた
「今殿下はネフィリム殿下の魔の瘴気が魔力感知で見えているはずです
その中でより大きく強い箇所が心臓に位置しているはずですがわかりますか?」
「えーっと、うん強い光があります
・・ってちょっとまって!?
あの、光が3つあるんだけど・・」
「光がみっつ・・・?
まさか転移したと・・?
これは困りましたね
想定外の事態ですがやれるだけのことはやりましょう
それで光の強い箇所はどこですか?」
「えっと頭のおでこの部分と心臓の部分とあとは腹部のおへそあたりです」
「そうですか、殿下は三本の光の矢を出すことはできますか?」
「たぶん・・できると思う」
一応拡散矢が射てないか練習してたのよね
それでなんとか3本までは出せるようになってたけどこれをコントロールして的に当てるなんて
わたしにできるのかな・・
「ご自身を信じてください
殿下ならきっとできるはずです
ネフィリム殿下、成功確率が多少減りますがそれでもやりますか?」
「ええ、例え確率がゼロだったとしても私はやりますやってください」
「わかりました。
あとは殿下に託します」
「あたいもついているから一緒に射とう」
「はい!」
私は全身全霊を込めて光の弓を思いっきり引き絞った。
ググググッ
必ず救って見せる!
わたしの決意と共に矢が発射された。
「いっけえええええええ!!!!」
「かなり低い賭けだったんですが
なんとか成功しましたね」
「どのくらいの確率だったんだ?」
「そうですね心臓部一ヶ所だけであれば
11%ほどでしたが
さすがに三ヶ所となると1%ほどでしたよ」
「お、おいそれって賭けとは言わないんじゃないか!?
あたいの姉貴が死んでたらどうするんだ!?」
「もともと死にたいと仰っていたのであれば死んでいたとしても本望だったのではないですか?
あの苦しみを絶てる人間なんていないでしょう?」
「おまえほんと人間かよ」
「ええ、これでも血の通った人間です
ですが苦しみから解き放てる人はいないのですから
生きることを放棄したいほどに苦しんでいたのでしょう
生きることの辛さが、あの状態での辛さがあなたにはわかりますか?」
「う、いやわかんないけどさ
でも姉妹として小さい頃から一緒にいて辛さが痛いほどにわかってたさ
でも、どうすることもできないじゃないか
ドロシーもずっと苦しんでたんだ
大好きな姫様だから
あたいだってできるならなんとかしたかった。」
「結果あなたも救うことができたのではありませんか?
殿下と一緒に射った光の矢でね」
「お陰で様でね
あんたのおかげさ
だから今度はあたいらが協力する番さ
でも、まずはここを乗りきることから始めないとね」
グオオオオオン!!
「でましたね、強硬主
ワイバーンの大型個体であるドラゴン」
「あれが、ドラゴン?
大きすぎない・・・?」
「想定より大きいですがドラゴンで間違いないでしょう
弱点さえつけばなんとかなるのではありませんか?」
「弱点ね・・やっぱり喉みたいだけど
あそこに飛び込むのは危険じゃないか?
火に焼かれるか食われるか
どちらの危険性もある」
「神器の飛行スピードもなかなかのものですが
ドラゴンのスピードも早いようなので
神器を2体出す必要がありますね」
「あねきは大丈夫なのか?」
「ええ、神器を稼働させる前に作戦は伝えておきましたので」
少し前のこと
風の国隠し通路祭壇前にて
「ネフィリム殿下、少しお話があります」
「なんです?」
「まずはこの神器に備わっている特殊なモード
BSKモードなんですが
絶対使わないでください。」
「なぜです?」
「この力を使えば殿下の命はもちません
今のお身体で使用するのは危険だと」
「そんなに危険なものなの?」
「ええ、ですので使用は控えてください
あとこちらの殿下が搭乗できたらドラゴンへの対応がそれなにり可能だと思いますので
もしお一人の状態でドラゴンが出た場合は無理をせず逃げつつ回避をしてください。
おそらく殿下の風の神器なら追い付くこともないでしょう」
「わかりました」
そういうとネフィリム殿下は緑色の玉に触れた。
「いきます!風の神器ゼフィール!」
アナタトトモニ!!
辺りが光輝きネフィリムはその場から消えた。
「既に契約はなされていた・・というわけですか」
ジードはひとり佇みその場を後にした。
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