第13話 空中都市

「そちらの状況はどうですか?」

「ああ、ご推察通りなにも変わってないよ」

「そうですか

ああ、紹介が遅れましたね

こちら風の王国のメカニックで

ナディーナといいます

ナディーナ嬢、こちらイルメシア王国王女殿下ラクサーシャ姫です

今は訳あって我が国へ亡命をしておりますので我が国の殿下でもあります。」

「へえ~、その人が王女殿下ね

あたいはメカニック兼第二王女のナディーナ・ミラルボーズよ、よろしくな」

「お、王女様がメカニックなんですか?」

「うーんあたいってメカが好きでいじるのも超好きなんだよね

あーでもでも乗るのは無理

酔っちゃうから

だからあたいは建造とか修理とかを全般にね

やらせてもらってるの」

「え・・・っということは神器に乗ると?」

「そりゃあもうゲロゲロ吐いちゃうね」

「と、いうことで第二王女の神器搭乗はあまり現実的ではないということなんですよ」

と珍しくジード団長が頭を抱えていた。

「ちなみにこの飛空挺はここで建造されたものでナディーナ嬢のおかげで建造することができました。

平たくいえば共同開発といったところでしょうか

技術を投資する変わりに国交を結ぶといった感じです」

「ほんとジードがいなかったら作れなかったよ

飛空挺なんて夢だと思ってたし

まあこの空中都市なんてものがあるからいつかは作れる日がくるんじゃないかなって思いはしたけどさ」

職人さんや技術者さんが集まるとこの世界ではなんでもできそうだ。

「ん?第二王女ってことは・・」

「ええ、ご推察通り第一王女がおられますよ

ですがそこがこの国の重要なポイントなんです」

「まさかまた乗らないとかっていう?」

「いえ、今回はむしろ逆でして

是が非でも自分が乗ると言っておられるのですが

問題がありましてね」

「問題?」

「第一王女は不治の難病におかされているのです」

「え!?」

ここにきて不治の病なんて

「王女の病名は心臓病です。

この世界特有の物かも知れませんが

治療方法も見つからず

幼い頃から心臓が弱く成長されるごとに弱っていき今はだいぶ衰弱されているご様子なのです

この状態で神器に乗れば間違いなくお亡くなりになるでしょう

だから乗りたいとおっしゃられても止めることしかできない

というのがこの国の現状なのです」

「じゃあもう第二王女が乗るしかないんじゃ?」

「無理無理!乗っただけで吐くのに血なんかとられたら倒れちゃうよ」

「ということなので戦力にはならないと

あとの希望は第一王女のご病気を治す以外手はないかと思っております。」

「治るの・・・?」

「可能性はかなり低いと思われます

ですが手がないわけではございません」

「どうすればいいの・・・?」

「それはですね・・・・」




ここは風の王国第一王女寝室

私は・・神器に乗らないといけないのに

こんな体で・・・どうしたらいいの?

このままだと死んでしまうと言われたわ

せっかくこの世界に転生してきたのに

もう人生が終わっちゃう・・・

お父様お母様、妹のナディーナも

大切な大切な家族をこのまま置いていくなんてできない

だから私はまだ死ねない・・・!

でも神器に乗ったら死ぬとも言われたわ

だったらどうしたらいいの・・・?

ここで指を加えてただ見ているだけなんて・・・。

神様はひどいひとだわ

私にこのような運命を与えるなんて

死ぬならせめて神器に乗って戦って死にたい・・!

私がそう覚悟を決めているとノックが聞こえた。

コンコン

「はい・・」

「火の国より参りました。

空挺騎士団長ジードです。

王女殿下にお目通りを願いたいのですが」

「姫様どうされますか?」

そう聞いてきたのは私専用の世話係

兼ボディーガードのメイドである

「会います、お通ししてください。」

「かしこまりました。」

部屋に通されたのは一人の青年と私達と同じくらいの少女だった。

「王女殿下、お休みのところ失礼いたいします。

こちらはイルミシア王国王女殿下のラクサーシャ様です。」

「王女殿下、ラクサーシャともうします」

「すみませんこのような格好で申し訳ないのですが・・ゴホッゴホッ

よければ楽にしていただけると」

「姫様あまり無理をなさらぬよう」

「いいの、ドロシー

今日はまだ気分がいいから・・」

そういうと王女殿下はベッドから起き上がった。

「申し遅れました。

私は第一王女ネフィリム・ミラルボーズと申します。」

そういうと苦しそうにお辞儀をした。

「ああ、大丈夫ですので休んでください!」

私はとっさに王女らしからぬ言葉がでてしまった。

「あなたには王家のプライドというものはないのですか?」

メイドのドロシーさんが私を睨みならが言ってきた。

「姫様は苦しみながらでも王家の者である振る舞いを重視しておられます

あなたはそれに答えるのが王家の者としての心構えではないのです?」

えっ?でも苦しいのよね?

「そんなに王家の心構えやプライドは大事なんですか?」

「あなた!!」

「いいのドロシー」

「ですが!?」

「あなたの言うこともごもっともよ

確かに王家が存続できなければそのような振る舞いになんの意味もありません

ですがまだ私は王女です

だから死んでもそれは守りたいと思っております

死ぬのも王女として死にたい

そう思っています

これは私のエゴなのかもしれませんね

だからあなたにこれを押し付けることはしません

ドロシーも悪気はないの

私に尽くしてきたから私の身になって答えただけ」

「姫様・・・」

「お取り込み中申し訳ございませんが

こちらの用件をお伝えしておりません

ドロシー嬢よろしいでしょうか?」

「すみません」

ドロシーさんは一瞥し部屋の脇に下がった。

「ネフィリム殿下、今日はご相談がございまして」

「相談・・ですか?」

「ええ、もしその病気が治るのなら

なんでもする覚悟はございますか?」

!?

ドロシーは驚愕しジードを凝視しネフィリムもジードを凝視した。

「それは・・本当なんですか?」

「ええ、こちらがやることに目をつむっていただく

必要がございまして」

「それと覚悟となんの関係があるのですか?」

「一つづつ説明をさせていただきますが

まずラクシャ殿下の能力なのですが

光の神器の搭乗者でありながら光の魔法の使い手でもあります

その光の魔法は闇をも打ち払うと言われています。

それとネフィリム殿下の御病気なんですが

心臓病と聞いております

お間違いありませんか?」

「ええ、間違いありません」

「その心臓病なのですが実は原因と治療法がわかりました。

まず原因なのですがこれを話すにはまず心臓病がどういった物なのかから説明する必要があります。

この心臓病、現実世界のものとはまったく違うものでした。

この世界特有のものだと

心臓に闇の瘴気がやどりそれが臓器を腐食させ最後には死に至る病

というのがこの世界の心臓病です

殿下は生まれつき心臓が悪かったと

それは生まれたときに本来邪な気は出産とともに外に排出されるもの

ですが殿下の場合は恐らく邪気が外に出ずにそのままだったと

それでどんどん衰弱をしていった。

というのがこの心臓病の原因になります。

そして治療法というのがこの闇の瘴気を払うということです。

先程お話ししたラクシャ殿下による光の矢を浴びてもらいます。

そうすればおそらくネフィリム殿下の邪気は取り除かれるかと」

「それで覚悟と言うのはその矢を受ける覚悟ということでしょうか?」

「いえ、これは私の推測と憶測のもので計算上高確率でうまくいくということで

勝算はありますが最悪うまくいかない可能性もあります

そのときはご自身の死を覚悟していただきたい。

失敗をすれば光の魔法をその体に浴びることになります

強すぎる光は体にも悪影響を及ぼしかねない

体が持たず塵となり死んでしまうかもしれません

それが《覚悟》という話です。」

「・・・・・・・わかりました。

そのお話お受けします。」

「姫様!?

私はそのような話とても信じられません!」

「ではここで黙って死ねというの!?」

「ひ、姫様・・」

「ごめんなさいドロシー、私はこのままなにもせずに死ぬのなら少しでも可能性がある方を選ぶわ

あなたの気持ちも嬉しいの

でも、私は・・・・!

私は死にたいのっ!!!」

ネフィリムは涙を流しながら怒りの感情も込めて訴えた。

「姫・・様」

「とっても苦しいのっ!!

痛いのっ!もう嫌なのこんなの!!

この苦しみが終わるのならなんでもいいの!

だから・・・っ!

ドロシー・・許して。

こんな私を・・・許して。」

ネフィリムは静かに泣き出した。

「姫様・・・・

私は・・最後までお側にいます。」

「死への覚悟はお持ちのようですが

まだ死ぬと決まったわけではございませんので

どうかそう死に急ぐことのないよう

お願いしたいのですがね」

と困ったようにジードが言った。

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