第8話 水の王国 前編

そろそろ見えてきましたね

水の王国、アクアーム

「ランディ君、そろそろ姫殿下をこちらへ来るようお迎えに行っていただけませんか?」

「はっ」

ランディ副団長はラクシャの私室へと向かった。

コンコン

「はい」

「ランディです、そろそろ水の国が見えてきましたので作戦室まで来られるようお迎えにあがりました。」

「わかりました、すぐ行きます。」

私は支度をすませ扉から外に出た。

「お待たせしました。

では、参りましょう。」

私はランディ副団長の後についていった。

「殿下、水の国が見えて参りましたのでお呼びさせていただきました。

あちらに映っているのが水の国アクアームです。」

そこには海の上にある都市にも見えた。

すごい、どうやって水の上に建てたんだろう?

「ほとんどの浮力は魔法ですね

町の真ん中にあるクリスタルから魔法が放出されてそこから浮力が発生しているのです。

まあ心臓部があのクリスタルといっても過言ではありませんね

と説明を聞いていると突然大きい男の人が都市の方から飛んできて画面一杯に男の顔が表示された。

「おーい、ジード!待ちくたびれたぞ」

「これはデュランいきなり飛空挺に乗り移らないでもらえますか?

間違えて撃ち落とすところですよ?」

「お前なら間違えてなくても撃ち落とす気がするから怖いな」

「なら扉から入ってきてください。

あなたには文明という名の扉を使おうとは思わないのですか?」

「飛空挺が見えたからな、いてもたってもいられなくてついな」

「あなたらしいですが壊したらそちらの宰相さんに損害を請求させていただきますよ」

「いやぁ、それだけは勘弁してくれ

あいつは、けちでがめついからな

さっきも始末書を書かされたところなんだ。」

と頭をかきながら扉から入ってきた。

ブーンッ

いきなりスクリーンが切り替わり映像が執務室のようなところに切り替わり一人の男性が写し出された。

「誰ががめつくてケチだって?」

「これは宰相どの、お久しぶりです

まさかスクリーンで応答してくれるとは思いませんでしたよ」

「今は機密になるようなこともないし

僕がひとりだからいいんだよ

それよりもジード

着いて早々で悪いんだが

強硬主に手こずっているんだ

手伝ってもらえないか?」

「ええ、もちろんそのつもりで来たのでお任せください」

「悪いが早急に応援を頼む

それと、デュランが壊したものは

請求をされてもこちらは金銭では払わない

かわりにそいつの体で払わせるから

こき使ってくれ」

プツンッ

そういうと通信が途切れ映像も消えた。

「デュラン、君は宰相に何かしたのかい?」

「話すと長いんだが魔物の奇襲で暴れててな

城壁を少々壊してしまったんだ

損害が2000万とかなんとかいって

始末書を今日書かされたところだ」

「それでですか

損害とか国が滅亡すれば復興すらありえないというのに彼らしいですね」

「それよりも懐かしいな!

よおランディ、今度また勝負しようや

まだ決着がついていないよな?

俺とお前どっちが強いか」

「今はそんなこといってる場合じゃないのではありませんか?」

「ジード、お前でもいいんだぜ?」

「私とあなたでは実力の差がありすぎてつまらないのではありませんか?」

「まあ・・・な

魔法禁止ならまだ勝てるかもしれないじゃないか」

「諦めの悪い人ですね」

「お前の魔法の才はすごいがそれに頼りすぎるのもどうなんだ?」

「いつから私が魔法に頼りすぎてると言いました?

私はもっとも効率的な戦い方をしているだけにすぎません

それが魔法が必要ならつかいますし必要ないなら使わない、ただそれだけです

あなたが魔法が使えない

だから魔法が有効であるということです

私よりもあなたが魔法を習得するほうがいい戦いができるのではありませんか?」

「ごもっとも過ぎてぐうのねもでねえぜ・・」

「それよりもデュラン、こちらが光の因子をもつ魔女のラクサーシャ姫殿下です。」

「ああ、例の光の因子をもつという?

これは失礼、申し遅れました。

私は水の王国近衛騎士団隊長のデュラン・サーボ

ともうします。

以後お見知りおきを」

と跪いて手を取り手の甲にキスをしてきた。

え!?

私はいきなりで顔が熱くなりどうしていいかわからず少しの間固まっていた。

「あなたにもこういうことができたのですね

ただの筋肉騎士だと思っていましたが。」

「俺もこの世界に来て勉強したんだよ」

「おっといい忘れましたがこちらのデュランも

転生者です。たしか工事現場から転生したんですよね?」

「ああ、工事現場で働いてたら急に上から鉄骨降ってきてな、それで気づいたらここにいたってわけよ」

「それで私も転生者だと話せば意気投合しましてね

それで国交までたどり着けたというわけです。」

「まさか同じ転生者がいるなんてな

思いもしなかったが

なんか戦っているうちに近衛騎士団隊長なんてものをもらえてな今に至ってるんだ。」

「そういえば戦況はどうなっているのですか?」

「サハギン族が攻めてはきたが

ある程度は沈めたぞ

だが強硬主が水の底にいるみたいでな

中々姿をみせないんだ。

さすがに水中で息ができないし

俺は魔法も使えないからな。」

「水中戦もできず魔法も使えないなんて

使えない近衛騎士隊長ですね」

「そういうなよ人には得手不得手なんてものがあるだろう?」

「まあそれは一理ありますがね

ここは殿下に出てもらうのが一番かと思いますが?」

私はさっきの行為にしばらく混乱して固まっていてまったく聞いていなかった。

「え!?っと戦ったらいいの?」

「ええ、お願いします

あとBSKモードは消耗が激しいので

ここぞというときに発動してください。」

「わかりました。」

私は通信機をつけ甲板に出た。

「アズマーダ!いくわよ」

了解シタ

私は神器の中へ転移した。

強硬主がいるのは水の中でここからだと見えないみたい

どこかに隠れているのかしら?

トリアエズ水ノ中へ行ッテミルゾ

「うん、わかったわ」

私は水中へ潜り強硬主がいないか辺りを見渡した。

「うーん、どこにいるんだろう?」

(強硬主はサハギン族の個体だと思われます

ですが今のところ姿を捉えられた者はいないそうなのでお気をつけください)

「素早いの?それとも隠れてる?」

私は辺りに注意しながら強硬主を探した。

「どこにもいないんだけど?

ジード団長、ほんとにいるの?

(ええ、いるのは間違いないそうです

ですが姿を表さずに味方を攻撃しているようなので攻撃方法が特殊なのかもしれません

十分お気をつけください)

「特殊な攻撃?

なんだろう・・・・?」

私が少し考えていると足になにか感覚があり

なんだろうと足元を見ようとしたそのとき

「えっ?」

急に足を引っ張られ水底に引っ張られる感覚がした。

「ちょっ!足になにか絡み付いてる!

なんかサハギンというよりタコみたいな生き物なんですけど!?」

私は足に絡み付いた触手を振りほどこうとした時

急に身体中に電気が走った。

「がっ!あああああああっ!

(殿下!大丈夫ですか?)

か、身体中に電気が走って・・・

タコじゃないの・・・・?」

「くっ!このままじゃジリ貧だわ

なんとかこの触手を振りほどかないと」

私がまた触手を振りほどこうと触手を持った瞬間また電気が走った。

「んあ!がああっ!いったたた!

もう!このタコ!私で遊んでるんじゃない!?」

「団長」

「ええ、このままではジリ貧ですね

デュラン、王子殿下は神器に乗っていただけそうですか?」

「それがよお、戦争はいけないと

このような殺戮兵器には乗れない

平和的に交渉をしたいといっておられてな」

「平和主義者にも困ったものですね

平和は平和になってから存分にうたっていただきたいですが

こちらの映像を王子殿下に見せることは可能でしょうか?」

「それは宰相に聞いてみないとわからんな」

「宰相につないでください。」

ブーンッ

宰相と執務室の映像が映し出された。

「なんだジード、今忙しいんだが」

「あなたにお願いがあります

是非王子殿下にも神器に乗って戦っていただきたいのですがそのために今戦っておられる姫殿下の映像をそちらから王子殿下へ届けていただきたいのですが」

「なるほど、殿下は乗らないといっていたがそれなら少しは勝算があるかもしれんな

わかった、できることはやってみよう」

「ありがとうございます」

「この仮は高くつくぞ?」

「この国を救うのなら貸し借りなしでしょう?」

「損害がない状態でならな」

「まったくあなたというひとは」

「そっくりそのままお前に返すよその言葉」

「おい、王子殿下はお部屋へいらっしゃるか?」

「はっ!お部屋で待機しております」

「王子殿下にはこちらへ来るようお伝えしろ」

「はっ!」




それからしばらくして

「宰相、僕に何か用ですか?」

「王子殿下、今この国で戦っている者のことや何が起きているのはご存じでしょうか?」

「それは僕にもわかっている!

だから戦争はだめなんだ

平和的に会話で交渉しようとしてるんだ。」

「あれを見てもまだそういえますか?」

宰相はスクリーンを指差した。

スクリーンには光の神器が触手につかまり電気ショックを浴びている映像が映し出され姫殿下の悲鳴と共に送り届けられた。

「こ、これが魔物・・・?」

「あそこで今戦っているのはこの国の者ではございません

あそこで戦っているのは今は亡きイルミシア王国の王女殿下ラクサーシャ様です。」

「え?・・・・

なんであの人はそこまでして?

僕は・・・僕は戦いたくないのに」

「あの方は他国の民でも傷つくのは嫌だとおっしゃられ守ることができる力があるのならと戦っておられます」

「僕にもあれと戦えと言うんですか?」

「それは王子殿下の意思にお任せします

ですがあのままでは姫殿下はやられてしまいます

もし勝ったとしても傷だらけになるでしょう

それでもあきらめずに戦っておられるのです」

「僕は・・・僕は・・・」



「もう・・・意識が!・・・」

「アズマーダ!お願い!BSK

もっ!・・・あんんうううう!」

電気ショックの嵐で光の神器はボロボロだった。

「ビィ、エス、ケーモード・・・はぁはぁ

発動してぇええ!!」

光の神器が赤く光輝いた。

ウオォオオオ!

光の神器は足に絡み付いた触手を引きちぎり水中でぐるぐる振り回し水の王国の方へと放り投げた。

ザッパーン!

「あれはタコというかクラーケンみたいな魔物ですねえ

殿下はどうです?」

「どうやら気絶しているようです」

「これは・・暴走も考えておいたほうがいいかもしれませんね

BSKモードにもっていくだけで限界でしたか

さすがにあれだけ電気ショックを浴びれば失神しますかね

あとは王子殿下が出ていただけたらうまくまとまるんですがね」

光の神器も水中からでてきた。

攻撃に映ろうとしたとき強硬主の触手が数本光の神器の胴体に突き刺さった。

そこからさらに電気ショックが走る。

「これは不味いですね

姫殿下の命に関わります

姫殿下は既に失神しておりますが

これ以上は身体の負担が大きいでしょう

主砲を撃ちます。

狙いをあのクラーケンに向けなさい」

「こちらが狙われればひとたまりもありませんがよろしいのですか?」

「やむ得ません

ここで姫殿下を失うわけにもいきませんし

気を引くには十分でしょう」

「主砲狙い定めました!

発射準備整っています」

「主砲発射してください」

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