第3話 亡国の魔女
気がつくと、私は崩れ落ちたお城の中に居た。
この国は滅亡したのだ。魔物の軍勢による襲撃によって。
その生き残りが私一人とこの神器だけ・・・。
お父様も、お母様も、じいやも、兵士の人もみんなみんな殺されてしまった。
なぜ?なんでこんなことになってしまったの?
私はただ呆然と立ち尽くし、一人涙を流すのだった。
ギャギャ!
後ろから魔物の声がし、私を殺しに来たのだろうと思った。けど振り向く力も気力もなく、ただ私は呆然と立ち尽くして、このまま死んでもいいよね?なんて思っていた。
ブシャ!
魔物を斬る音がした。
ギャアア!
その音と共に魔物は絶命し倒れた。
それでも私はあまりの悲しみに振り替えることすらできなかった。
「お怪我はありませんか?」
え?誰だろう?生き残りなんていないはずなんだけど
少しの希望を胸に私は後ろを振り返った。
「あ、あなたは・・・?」
「失礼、私はアルテシア王国空挺騎士団の副団長を勤めておりますランドルフと申します。助太刀に参上致したのですが、間に合わず申し訳ありません。」
アルテシア王国?確か海の向こうに位置する大国だったと思うけど、なぜこんな辺境の国に?
「あなた様は、イルミシア王国王女殿下とお見受けしますが」
「はい、イルミシア・ラクサーシャです。」
「生き残ったのは姫様だけでしょうか?」
「・・・・・はい。」
「悔しい限りでありますが、まずは我が飛空艇までお越しいただけますでしょうか?」
「私だけ生き残って、国も町も何もないのに姫だなんて、滑稽だと思いませんか?」
「失礼を承知で発言いたしますが、姫様だけでも生き残ったのは王様、王妃様も浮かばれるのではないのでしょうか?生き残ったことを恥じてはなりません。
これからどうするか含めて、我が飛空挺にてお話をさせていただきたく思います。」
私はキッとランドルフを睨み付けた。
ランドルフは申し訳なさげではあるが、凛としていてどこか悲しみを背負った人の目をしていた。
おそらくこの人も悲しい思いをして、乗り越えてきたんだろうと思った。
でも、私は平和な世界で生きてきて、そこから転生して戦争なんてものも知らないおこちゃまで、悲しみに気持ちの整理もつかないうえに頭が混乱している状態の娘
きっとランドルフさんもこんな生意気な娘に嫌気がさしてるんだ。
「わかりました、ランドルフさん」
「お分かりいただけて助かります、私の事はランディとお呼びください。」
「わかりましたランディ、では行きましょう」
私とランディ副団長は、お城から出て西の荒野に向かった。
「こちらに我が空挺騎士団の飛空挺があります」
こんな所に?こんな何もない所に飛空挺なんて隠せるのかな?
というかこの世界飛空挺なんてあるんだ。
まあロボットがあるくらいだもの、飛空挺とかあっても不思議ではないよね?
私とランディ副団長が進んでいくと、そこには何かあるような気がした。
「ここに・・・何かある?」
ランディ副団長が手をかざし何かを唱えると一瞬で飛空挺が姿を表した。
「こ、これは!ステルス!?この世界にステルスの技術があるなんて・・」
「姫様、こちらから入れます」
私は飛空挺の入り口に案内された。
扉が自動で開き中へと通された。
中は広く大型の飛空挺だけあって、生活空間らしきものもあるようだ。
私が招かれたのは、作戦室のような所で、私はランディ副団長と同行した。
そこに居たのは黒色の長髪で、メガネをかけたとても綺麗な男性だった。
普通の女性だと見惚れてしまうんだろうけど、私はロボットの方が好き
「これはこれは、姫様ようこそ我が飛空挺へ」
「あなたは?」
「失礼、申し遅れました。私はこの空挺騎士団を指揮しております団長のジードと申します。」
ジード団長は綺麗な会釈をして挨拶をしてきた。
私もそれに答えるように令嬢風に挨拶をした。
「イルミシア・ラクサーシャです。」
「ええ、存じあげておりますよ王女殿下」
その男はニヤリとした顔で答えた。
なんかいけすかない人ね、と私は心の中で思った。
「これは失礼、悪気はないのです。ただ、性分・・といっておきましょうか、
なんでも知っているっていうのが私の自慢でしてね、色々と気になる事もおありでしょうから、私が知る限りでお答えしましょう」
とジード団長はメガネを正しながら答えた。
「なぜ今になって魔物の軍勢が動きだし、王国を襲ったのでしょう?」
ずっと疑問に思っていたいことをずばりと聞いてみた。
「ふむ、それを説明するにはまず魔物の存在についてからお話をしなければなりませんね」
「魔物の存在?」
そういえばもう魔物は存在せず、昔勇者が絶滅させたと聞いたような。
「ええ、それであっていますよ」
え!?なんか今心の声聞こえてた?
「失礼、私は人の心が多少ではありますが読めるのです。
これは産まれた時に与えられるギフトと呼ばれるもので、人によって様々な能力を与えられるとされています。」
え、じゃあ喋らなくてもいいのかな?
「ただ、聞かれたくないとかその人が重要だと思えることは、聞くことはできないので、できれば喋っていただくとありがたいですねえ。」
とまたにやりと微笑んだ。
これは隠し事も、できそうにないわね。
「それで話を戻しますが、まず500年前勇者が魔物を絶滅させた・・、これは間違いないです。ただ、魔物の存在は消えることがないのです」
「ん?でも絶滅でしょ?」
「魔物は人間の邪な気から産まれるとされています、これは文献によって書き記されておりますが、それ以上昔の文献や書物がないのも事実なのです。」
「それって500年以上昔のことは誰も知らないってことだよね?」
「ええ、ご推察通り誰も知らないとされています。
ここからが重要なんですが、魔物は500年単位で軍勢を率いて現れるのではないか?という研究結果がでておりまして。
これは我が国の研究機関による極秘事項ですので、他言無用でお願いしたいのですが、500年毎に世界が滅んでいるのではないかと私は思っております。」
「それって、まさか」
「ええ、丁度今年がその500年目であり、世界が滅ぶとされている年でもあります。」
「じゃあ魔物の軍勢が襲撃してきたのは、偶然ではなく500年目だから?」
「ええ、間違いないでしょう。それを我が国は、いち早く察し世界や国を守るため飛空挺の建造や、そのための最終兵器を探しておりました。」
「最終兵器??」
「そう、最終兵器とは神器と呼ばれる人型の殺戮兵器です。」
「それって、私の国に伝わる光の神器の事?」
「ええ、その神器に関しましても各国が保管しているとされています。
ただ、これを操縦できるのが神器に認められし者、私たちは魔女と呼んでおります。」
「魔女?私魔女なの??」
「代々王家の血筋には、魔女の血が受け継がれているとされています。
しかし、魔女以外の人間が神器に乗ると、一瞬で生気を失い死んでしまうそうです。
我が国でも魔女の血を受け継ぐお方がおられましたが、どうやら幼少期に手違いがありすり替えられたようで、第一王子殿下が乗られたのですが、一瞬で生気を吸いとられ亡くなられました。
まあこれを実証として、魔女以外の人間は乗れないという事に気づきましてね。」
またニヤリとしてみせてメガネをくいっとあげた。
いや、第一王子死んだのよね?そこ悲しむべきじゃ・・・。
「私には研究や実証にしか興味がないのですよ。
王子と言えど偽物なら同情も感情移入もありませんがね」
と、このジード団長なかなかの強者だった(色んな意味で)
「その神器ですが、殿下の光の神器を拝見させて頂きましてね」
「え?見てたの?」
「ええ、こちらから戦闘状況を拝見しておりました。
さすが最終兵器と呼ばれるだけありますが、最後の赤く光る状態は凄まじい力を発揮しておりまして、ぜひ殿下にお話をお聞きしたいと思っておりました。」
「えーと、あの私途中から気絶してたみたいで・・・。」
ジード団長は目を見開いてこちらを凝視してきた。
「それは・・・・残念です。」
なんか、がっかりさせたみたい
「殿下は間違いなく魔女の血を受け継ぐ者で、神器に選ばれしお方だということです。おそらく神器は今殿下の中にあるのでしょう」
「私の中に・・・?」
私が胸に手を置くと、声が頭に響いてきた。
(・・・力ガ必要ナ時ハ、我ヲ呼ブガヨイ。)
「本当だ、あの白い玉も私の中にあるのね」
「そこで姫殿下にご相談があるのですが」
「相談・・・ですか?」
「ええ、先程話した通り我が国には神器を扱う者がおりません。故に魔物の軍勢を払うこともできないのです。ある程度の雑魚は、対処可能なんですがねえ
あの大きい個体の強さが別格でして、どうやらあれは神器に頼るしかないようで、
殿下には我が国に赴き助力をお願いしたいのです。」
「私でもお役に立てるでしょうか?」
「ええ、もちろん。奴らはどうやら我が国にある火の神器を狙っているようなのです。」
「神器を狙う魔物?じゃあ私の国もこの神器を狙って・・・?」
「ええ、奴らにとってこの神器は、戦いを左右するものですからね」
「そういえば気になったのですが、第一王子ってことは第二王子がいらっしゃるのでは?」
「ええ、もちろんおります。殿下は、こう仰りたいたいのでしょう?
なぜ第二王子が乗らないのかと」
うん、ずばりそう思った。
正直私は怖い、あの光景も最後のBSKモードの自分が自分じゃなくなる感覚も。
「第二王子は、第一王子がお亡くなりになるのを間近で見てましてね、それで自分は乗りたくない、自分は死にたくないと仰られましてね。」
と言いながら両手を上げて、お手上げの仕草をした。
「私としましては、そちらも乗って実証していただきたかったんですが、頑なに拒否されましてね、睡眠薬を飲ませて無理矢理にでも乗せてしまおうかと思ったら副団長のランディ君に止められましてね、とても残念です。」
またお手上げの仕草で、にやにやしている。
この人めちゃ怖い、ランディ副団長いないと団長暴走するんじゃ?
「ええ、なので邪魔なランディ君にも睡眠薬を飲ませようとしたんですがね、これが用心深くてですね、失敗しました。」
ニヤリとメガネをあげながら微笑んだ。
いや、怖いから団長さん
「私も無理矢理乗せるおつもりですか?」
「いえ、殿下ならまた乗ってくれると信じております。関係のない国民を見殺しにはできないでしょう?例え他国の国民であったとしてもね。」
「ええ・・・。」
この人ほんと食えない人だ。
「よく言われます。」
もう!心を読まれると調子が狂うじゃない。
「今から我が国へ向かいますが、多少お時間もありますので、お部屋で休まれるといいでしょう。」
「はい、そうさせて頂きます。」
正直色々あって疲れた・・、心の整理もつけたいし
「ランディ君、殿下について差し上げなさい」
「はっ」
「殿下、ランディ君をつけるので、こき使ってあげてください。」
「ありがとうございます。」
ランディさん、よくこの団長についていけてるな
「私もつくづく部下に恵まれてると思いますよ」
ジード団長は、にやにやしながらメガネをくいっとあげた。
「それではジード団長、失礼します」
「ええ、ごゆっくり」
私はランディ副団長と船内の個室へと向かった。
「ここが客室になります。」
ランディ副団長がお部屋に案内してくれた。
「ありがとうございます。」
私は客室に入りベッドへと座り込んだ。
ランディ副団長は、部屋の外で見張りとしていてくれている。
私は疲れがでたのか、そのままベッドへ倒れるように眠りについた。
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