亡国の魔女

レイスフィー

第1話 滅亡王国

ある平和な王国でのお話。

一人の王女が16歳の誕生日を迎えたその日、

一つの王国が、滅亡を迎えた。

その王国は、突然の魔物の襲撃にあい、滅亡をするのであった。

その王国の名は〖光の国イルミシア〗。

ひとつの大国で、光の王国と言われ、闇を討ち滅ぼす神器と呼ばれるものが、その国には存在したという。

その神器の名は〖光の化身アズマーダ〗、この国では〖光の神器〗と呼ばれた。

しかし、それが使われることはこの500年の間、無かった。時が過ぎ皆の記憶が薄れ始めた頃。

「姫様!」

どこか凛としていて老人の様な男性の声がする。

「んっ・・・、ここは?」

「姫様っ!」

「あ、じいや」

その凛とした老人は執事服を着ていて、私の方を見ていた。

「なにがあったの?」

「襲撃です!魔物の軍勢が押し寄せてきて、我が城へも迫っているようです!」

「えっ!?どういうこと!?」

私は何がなんだか分からず、混乱をしながら執事風の男性に聞き返した。

この男性は王女専属の執事で、名前をジョセフという。

この王国に長きに渡り尽くしてきた頼れる執事だ。

「姫様!早く避難をしましょう!避難用の通路から脱出が可能かと思われます!」

「で、でも!みんなは!お父様とお母様は!?」

「姫様!一刻を争う事態であります!姫様だけでもお逃げ下さい!」

「そんな!わ、私も残るわ!」

「なりません!この国は間もなく滅亡を迎えます!姫様のお命も危ないのです!」

「私はこの国の王女民や皆が残っているのに、私だけ逃げるなんてできません!

何か・・、何かできることはないの!?」

「もしかしたらひとつだけ・・・、可能性は低いかもしれませんが、あるかもしれません・・・。」

「それは、何なの!?」

「この王国は光の王国と呼ばれているのは、ご存じですか?光の神器が奉られているとも言われております。しかし昔の話なので、存在事態もあるかどうか・・・。

魔物の軍勢が押し寄せて来たのも、もしかしたらその神器が、目当てなのかもしれません。」

「光の・・・神器?」

「この国に古くから伝わるものです。光の化身アズマーダと呼ばれています。」

「それは、どこにあるの?」

「今まで秘密にしていましたが、恐らく避難用の通路の先にある祭壇の間にあるものと思われます。」

「では、そこに参りましょう!」

「私は、ご一緒することはできません」

「ど、どうして!?」

「すぐそこまで、魔物の軍勢が押し寄せて来ております。私が時間を稼ぎますので、姫様だけでもお行きください!」

「で、でもじいや!」

「このジョセフまだまだ現役でおりますので、只ではくたばりません!何卒お行きください!」

「じ、じいや!」

私が避難用の通路へ到着したのを見て、じいやは外にでて扉を閉めた。

「じいや!」

扉を開けたり叩いたりしてみたけど、その扉は開くことはなかった。

「私は、引き返せない所まで来ているのね」

仕方なく、部屋の先に向かって歩き出した。

所々通路の壁が崩れていて、朽ちている。

かなりの年月、使われていない通路のようだった。

「ここに、神器があるのね。」

私は、焦る気持ちを落ち着けながら、先へと進んだ。

少し通路を歩くと、祭壇のような場所が見えてきた。

「ここが、祭壇・・・でしょうか?」

何かを奉っているというより祭壇という形が、今の時代まで残っているかの様だった。その祭壇の上には、白い光の玉が置いてあった。

「これが、光に神器?」

私はそっと白い玉に触れようと、手を近づけた。

光の玉が光だし獣の様な声が、頭の中に響いてきた。

(待チワビタゾ、光ノ因子モ持ツ者ヨ。)

「この声は?あなたは?」

(私ハ光ノ神器アズマーダ。オ前ノ脳ニ、直接話シカケテイル。)

「なんだかよく分からないけど、私に力を貸して欲しいの!」

(私ノ力ヲ欲スル者ヨ!私ト契約ヲ結ベ!契約ノ名ハ光ノ神器アズマーダ!

力ガ欲シケレバ呼ブガイイ!私ノ名ヲ!!)

「私に力を貸して!アズマーダ!」

神器の名を叫ぶと、光の玉が急に強く光だし、目の前が真っ白になった。

「ま、まぶしい・・・。」

光が収まり気がつくと、私はどこか違う空間に移動していた。

「こ、ここは?」

(ココハ我ガ体内、光ノ神器ノ体内ダ)

「た、体内!?私食べられちゃったの!?」

(大丈夫ダ、ココハイワユル操縦席ダ)

「そ、操縦席かぁ・・・良かった。

でも、ここロボットの中みたいで、スクリーンや操縦桿とかある。」

(ロボットトハナンダ?)

「私の居た世界では、人の形をした機械のことをロボットって呼んでたの。」

(フム、キョウミブカイ)

「そういえばまだ名乗ってなかったね、私はこのイルミシア王国の第一王女、イルミシア・ラクサーシャっていうの、簡単にラクシャって呼んでくれたらいいよ。」

(ラクシャ、私ハ光ノ化身アズマーダ、コノ神器ニ宿ル者ダ。)

「光のってことは、もしかして他にもあるの?」

(〖火、水、風、土、雷、闇、光〗ノ七属性ガアル)

「結構あるのね・・・ってそれより!魔物は!?外はどうなっているの!?」

外の様子が気になっているとスクリーンに外の映像が映し出された。

外の光景は、すさまじく無残な状態だった。

「こんなの・・・、こんなのひど過ぎる!これどうやったら動くの!?」

(エネルギーガ、必要ダ)

「エネルギー?」

(我ヲ動カスニハ、力トナルエネルギーガ必要ダ)

「だからそれは、何なの?」

(オ前ノ血ダ)

「え?」

突然体から力が抜ける感じがした。

(オ前ノ血ヲ少シ貰ウ)

「ちょっ、先に言ってよね!」

ちょっと血を抜かれた感じだけど、動けないほどではないわ

(操縦桿ハ握ルダケデイイ、

アトハ念ジレバ思ッタ通リニ動クヨウニナル)

「念じるだけでいいのね」

私は操縦桿を握りロボットに動けと念じた。

何かが動く振動が伝わりガラガラと音がした。

「ここは外じゃないの?」

(ココハ祭壇近クノ洞窟ダ、映像ハ見タイモノヲ写シ出ス)

「なるほど、だから外の光景が見えたのね、

城が崩れるけど、そんな事言ってられないわ!魔物の軍勢に突っ込むわ!」

お城を破壊しながら、光輝くロボットが現れた。

魔物の軍勢は驚き、こちらを凝視していた。

「来なさい!あなたたちの相手は、この私よ!」

魔物の軍勢に突っ込んでいき、片っ端からパンチで殴り倒した。

「アズマーダ!なんか武器は無いの!?」

(雑魚ダ必要ナイ、拳デ十分ダ)

「いや、そうなんだけど・・・」

アズマーダが殴る度に魔物の肉片や血が飛び散っていく、

殴ったり投げ飛ばしたり引き裂いたりともう野獣のような戦い方だった。

「こんな野蛮な戦い方しかできないの!?」

(操縦者ト神器ノ性能ハ同ジダ)

「それって私が野蛮だってことじゃない・・・。」

(オ前ガ、マダ未熟ダト言ウ事ダ。)

「今初めて乗ったんだし、しょうがないじゃない。

この国は平和だったし戦いの稽古なんてつけてもらってないし」

(日々精進ダ、コレカラ頑張レバイイ

ソレヨリ魔物ノ軍勢ニハ必ズ〖強硬主〗と呼バレル者ガイル)

「強硬主?」

(魔物ノ群レノボスニ位置スル者ダ)

「そいつを倒せば、この戦いは終わるの?」

(雑魚ニハ統率力ハナイ

強硬主ヲ倒セレバ、コノ戦イハ勝ッタト言エルダロウ)

「倒せればって、その強硬主って強いの?」

(恐ラクコノ機体ノ状態デハ互角ダロウ)

「どうすれば倒せるの!?」

(BerSerKerモード、BSKヲ発動スレバ勝テルハズダ)

「そのバーサーカーモードって、どうやったら発動するの!?」

(ソレハ・・・)

ウゴオオオオ!

「え!?なになに!?」

(奴ガ強硬主ダ)

軍勢の少し後ろに、一際大きい魔物がいた。

「あれが?」

魔物の軍勢を押し退けながらこちらに迫ってきた。

ウガアアアアア!!

ドーーン!

強硬主に体当たりをされ、光の神器は押し倒された。

「きゃああああ!!いったた~・・」

(コノママデハ危険ダ、BSKヲ発動シロ)

「え!?どうすれば!?」

(唱エヨ!BSKモード発動ト!)

「BSKモード!発動して!!」

ギュイーン!

機体からすごい音がし、私の居る空間が白い光から赤い光に変わった。

「な、なに・・・?イ、意識が・・・」

顔の左右の額から血管が浮かび上がり、神器から血液が逆流してきた。

「か、身体中が痛い!」

(我慢シロ)

「ぐっ、ああああああああ!!」

意識が神器に持って行かれそうになりながらも、強硬主の体を押し退けた。

そこで私の意識は途絶えた。

気づいた時には、強硬主の体が縦に真っ二つになって横たわっていた。

魔物の軍勢も右往左往していて、逃げ出したものや、仲間割れによって殺されているものがいた。

「お、終わったの・・・?」

(コノ軍勢ハモウ機能シナイ、ソノ内消滅スルダロウ)

「勝ったのね・・・。」

私は安堵し、神器から解放されるのだった。

ここに一つの王国が滅亡をする事になった。一人の王女と、一つの神器を残して・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る