第23話 作戦の準備
施設の構造を改めて考えると、夜間に柵を乗り越えて侵入するのは不可能ではないかもしれないが、監視された小屋の中から特定の人物を救出するのは極めて困難だ。騒ぎになればすぐに看守が集まってくるだろう。
労働者たちの移動先がどのような場所なのかは分からない。しかし、そこで労働させられているということは、そこも閉鎖された空間か、あるいは逃げ出すのが難しい環境なのだろう。いずれにしても、そこで救出作戦を行うのは、施設の敷地内で救出するのと同じくらい難しいと容易に想像できた。
ならば、狙えるのは移動中しかない。労働者が小屋から労働場所へ、あるいはその逆の移動をする道中だ。彼らは手を縛られ、少ない看守に監視されている。そこならば、勝機を見出せるかもしれない。
ロニは、労働者たちの足跡をたどって、待ち伏せに適した場所を探すことにした。
パウ、ベロ、クロウと共に、彼らが毎日通るであろう道を慎重に進む。彼らの足跡と、看守のブーツの跡が、森の地面に微かに残っている。
しばらく進むと、ちょうど良い場所が見つかった。道の両側が大きな岩場になっており、待ち伏せに絶好の場所だ。ここでなら、上から攻撃を仕掛けたり、敵の逃げ道を塞いだりすることができる。襲撃場所はここに決めた。
ロニは一旦村に戻って、作戦の準備を整えることにした。来た道を戻りながら、途中で連れてきたゴブリンたちを村に帰らせる。彼らには、作戦の準備を進めておくよう指示した。
その帰り道、ロニは再びあの街の雑貨屋に立ち寄った。手元にあるお金は残り少ないが、どうしても手に入れておきたいものがあった。
「あの…煙幕、ありますか?」
ロニは雑貨屋の店主に尋ねた。煙幕は、視界を遮り、敵を混乱させるのに効果的だ。盗賊たちの洞窟で見つけたお金を使えば、買えるだろう。
店主は怪訝な顔をしたが、奥から小さな包みを持ってきてくれた。代金を支払い、ロニはそれを大切に懐にしまった。
村に戻ると、ゴブリンたちがロニの帰りを待っていた。ロニは、まず洞窟でゴドロックの様子を見た。檻の中で、彼は力なくうなだれていた。あの晩の不敵な表情は完全に消え失せている。彼の罪は許せない。だが、今は彼の存在が父を救出する希望でもある。
集会所に皆を集め、ロニは改めて作戦を伝えた。施設のこと、父を確認したこと、そして移動中の労働者を襲って父を救出すること。待ち伏せ場所の絵を描き、煙幕を使うこと、それぞれの役割をジェスチャーで伝えた。
村で戦えるゴブリンの数は、ロニとパウを除いて四十五匹。一方、移動中の労働者を監視している看守は、一つのグループにつき三人。五つのグループが同時に移動しているわけではないだろうから、最大でも十五人程度だろう。数の上では互角、あるいはゴブリンたちの方が少し多いかもしれない。
武器としては、新たに先を尖らせた木の槍を大量に用意した。盗賊たちから奪った剣やナイフも、力の強いゴブリンや、ベロ、クロウに持たせる。彼らは人間よりも体格は小さいが、その素早さと力は侮れない。
準備は着々と進んだ。ゴブリンたちは、ロニの指示に従い、来るべき戦いに向けて士気を高めていた。彼らの目には、仲間の窮地を救うという決意と、ロニを守るという忠誠が宿っている。
そして、いよいよ作戦決行の日。
ロニは、選抜したゴブリンたちと共に、襲撃場所へと向かった。腰には、小さなナイフを忍ばせている。パウはロニの傍らを離れない。ベロとクロウは、力強いゴブリンたちと共に先行している。
森の中を静かに進む。心臓が高鳴る。恐怖と期待、そして、父に再び会えるかもしれないという希望。
父を救い出す。必ず。
襲撃場所の岩場に到着し、ゴブリンたちはそれぞれの持ち場についた。ロニは、岩場の上に登り、襲撃のタイミングを見計らう。
待ち焦がれた、父を救出する日がきた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます