ママ活してたら同級生に呼ばれた
堀と堀
第1話 待ち合わせ
普通のバイトをするより、効率がいいから──という理由でママ活をやってる。
まだ高校生だけど、母親しかいないし、母親もアル中気味だから、仕方ない。
ある日待ち合わせ場所に向かうと──
待っていたのは同級生だった。
◇
名前は
ちょっと大人っぽい顔をしていて、女子たちに時折“お姉ちゃん”と呼ばれている。
性格も落ち着いてて、お嬢さんっぽい。
ちょっと俯瞰して見てるような感じ。物理的にも。
今は……僕とほぼ同じ高さで、じっと見ている。
「え……マホさんって、長井さんのこと?」
場所はここで間違いないはず、他に待ち合わせしているような人もいない。
数秒の沈黙の後、やっと切り出す。
「シュンってえっと……誰君だって?」
「
「あ、そんな忘れなそうな名前だったか……」
「……」
「……」
「じゃあ、デートする?」
「つっこんでよ!」
噴水の隣に座って、ぼんやり行き交う人を眺める。
ゴールデンウィーク目前、あったかい日差し。
噴水の水滴がミストみたいになって涼しい。
──お互いに、事情を説明しないと話が進まなそう。
「あの、秘密にしてね。俺がママ活してること」
学校にばれたらまずい。同級生にばれても、からかわれて噂が広まりそう。
「うん」
膝に乗せたバッグを抱えてる。
「趣味は人それぞれだよ」
「……」
趣味だと思われたらしい。
「長井さんは趣味なの?」
「……それ聞くんだ」
まあ、呼ぶ側は呼びたくて呼んでるしかあり得ない。
恥ずかしそうに切り出した。
「好きなんだ……年上扱いされるの……」
クラスでもたまに年上扱いされてる。
適当に流してると思ってた。
「性癖は人それぞれだよ」
言い返してみた。
「せいへきっ……! かなあ……?」
ちょっと俯いて、上目遣いに見る。
彼女の方が相談する立場になってる。
ママ活してると大体そうだ。
いつも頼られる側としてふるまっているけど、懐きたがる。
「ふう……」
空は青い。
「無視された」
「どう答えればいいのか分からなかったから」
あまり話したことない相手だけど、結構普通に話せてる。
この変な境遇のせいかも。変に腹は割れてる。
お互いの裏の部分をさらけ出して。
「折角だし、一緒に遊ぼう」
「小学生みたいな誘い方」
やり返されたのかな? 満足そうに笑う。
目を見開いてみたら、キョロっとした目で見返された。
「えー……恥ずかしいから帰りたかった」
バックを膝の上に抱えて、脚をぶらぶらさせる。
身体の大きい幼稚園児みたい。
「じゃあ、解散する?」
「……」
暫く二人、街の景色を眺めて
「どっか行くか」
気を取り直すみたいに、長井さんは立ち上がった。
驚いた鳩が飛んでいった。
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