近況ノートB:中途半端にいい子に育っちゃったから
――夢を見ていました。
高校に入ったら、一度はつまらない日常から抜け出してやるんだって。
いつも通り制服を着て、家を飛び出し、いつもとは反対方向の電車に飛び乗る。
見知らぬ景色が流れる電車の窓を眺めて。通勤する人の群れをかき分けて。私は一人知らない街の知らない駅に降りる。
そしてテキトーに信号を待って。知らない世界を知らないなりに歩いてみる。そんな小さくてとっても大きな冒険の夢。
……でも、そんなことを夢見ているうちに、高校生は終わりそうです。
――私は中途半端にいい子に育ちました。
学校をサボるなんて勇気が、人に心配をかけさせるなんて勇気が私には無かった。
小学校高学年の頃、私は周りがよく見えるようになりました。
そんな私の視界に入った周りの人たちは思っていたよりも不真面目で。私も上手く合わせるようにしました。
ただ、根本を変えるのはできなくて。見かけ上の不真面目さを出すのが上手くなりました。
提出物を出さなかったり、手を抜くのは上手くなった。
だけど、ズル休みをしたり陰で先生の口癖の真似をする勇気だけはありませんでした。どうしても性に合わなかったのだと思います。そういう時はいつも、疎外感を感じていました。
今はむしろ、手を抜くのが上手くなったことに腹を立てています。
――私は、分かりたいのです。皿を叩き割る気持ちよさを。
私にも、あるのです。アスファルトを裸足で駆けたいという欲が。
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