第10話
---
『配信者、ダンジョン突入中。【コメントで攻略】』
「栗鼠が落ちてくる日」
---
「どうもー、本日もゆるっと始めていきます。
今日は珍しく、ひとりでの攻略回!」
> 「うさぎちゃんは?」
「モフ蔵もまだ療養中か」
「単独配信けっこう久々じゃね?」
---
今回のダンジョンは、探索型の**《苔と風の通り道》**。
「この層、風が一定方向に吹いてて、それに乗るとショートカットできるって噂。
……でもどっちから風が来てるのかわかんねえんだよな」
> 「マップ右下見て」
「音聞いてみて」
「その草の揺れ方逆じゃね?」
コメントのアドバイスに従い、風向きを察知し、壁を背にして──
「せーの!」
ぶおおおぉおお……っ!
風に吹かれて、ジャンプ台のような足場をピョンピョン乗り越えていく主人公。
---
> 「おおっ飛んだw」
「コメント有能」
「こういうのがこの配信の醍醐味よな」
---
途中、小休止。
肩をぐるぐる回しながら、主人公が突然立ち上がり、カメラに向かって宣言。
「さて──ここで今日の“肩こりほぐしタイム”だ!」
背中からヒノキ棒を抜き出す。
「名付けて──ヒノキ棒トントンマッサージ(自己流)!!」
トントントントン……
「うん、悪くないぞこれ……!すごい……ヒノキの香りで癒されながら……肩に響く……!」
---
> 「なんやこれwww」
「絶対切り抜かれるやつ」
「癒し配信じゃなくて治療配信」
「新ジャンル:物理的セルフケア実況」
---
突然──頭上から「ヒュッ」と何かが落ちてきた。
ぽすっ。
「……!?」
肩こりタイム終了と同時に、何か小さくてふわふわしたものが主人公の頭に着地。
「……え、なんか乗ってる?誰?何?あったかい……?」
カメラに手を伸ばして自撮り的に確認すると──
「……栗鼠……!?」
くるくると動く小さな瞳。ふさふさの尻尾。
主人公の頭の上で、栗鼠が堂々とくつろいでいる。
---
> 「新しいゲストきたー!!」
「モフ蔵の代打、リス蔵?」
「今日も切り抜きリスナー大勝利」
「これは『#頭から栗鼠』タグ誕生」
---
そのまま主人公は栗鼠を乗せたままダンジョンを探索。
風の足場に乗るたびに、栗鼠もふわっと耳を揺らして反応する。
「お前……わかってて乗ってるだろ……完全に乗りこなしてるじゃん」
---
【配信後データ】
登録者:+59人
累計登録者数:312人
切り抜き動画:6本投稿
『ヒノキ棒でセルフ肩たたきする配信者』
『頭に栗鼠が落ちてくる瞬間』
『栗鼠乗せダンジョン攻略実況』
推定収益:365円
---
「名前つけるか……リス太郎とか?」
> 「安直w」
「かわいいから許す」
「今後の活躍に期待」
---
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます