現実世界のステータスって… ~ある日、事故に遭った僕の人生は一変した~

天風 繋

序章 事故と入院

第1話 覚醒

1.

2024年大晦日。

仕事帰り。

僕には、正月休みも盆休みも無い。

そして、今日も今日とて残業三昧。

有給も貯まりに貯まりまくって、もう消化は不可能かも…なんてね。

まあ、飲食店の辛い所だ。

人の休みの日こそ稼ぎ時なのだから。

コロナ禍でも、元気に(?)働いていた。

というか、今日なんかバイトがバックレた所為で皺寄せが来た。

僕は、疲労でヘトヘトになりながらバイクに跨り帰宅の途に就いた。

昨年9月に買って、やっと馴染んできた愛車V-TWIN MAGNA。

まあ、といっても中古車だけど。

2007年9月に生産が終わってしまっているから。

20時過ぎだと言うのに、道は渋滞していた。

ウンザリするな。

店の駐車場を出るのにもかなり時間が掛かった。

疲れているのに、最悪だな。

店を出て数分後。

信号待ち…といっても、信号までは50mほどある。

それに、渋滞が捌けない。

いつになったら家に帰れるんだろう。

はぁー、風呂とベッドが待ってるって言うのに。

前に停まっていたトラックが動き出したので僕も発進する。

中央よりもキープレフトを心掛ける。

前方との車間も念頭に置く。

そうして、信号のある交差点へと進入した。

その瞬間だった。

真横にライトの明かりが現れた。

そして、次の瞬間。

僕の身体に、強い衝撃が突き抜け…僕は気絶した。



僕は、真っ白な部屋で目を覚ました。

目覚めるとともに、身体中に激痛が走った。

そこらじゅうが痛い。

声が出ない。

呼吸がし辛い。

声が出せない。

腕が動かせない。

足も動かせない。

背中も痛ければ、胸も痛い。

頭もズキズキと痛む。

かなり、重症だな。

僕は、事故に遭ったようだ。

あはは、ツイてない。

踏んだり蹴ったりな、年末だ。

病室は、薄暗い。

ただ、常夜灯が点いている為自分の状況は把握できる。

いや、見えなくても分かる。

両手足は、ギプスが嵌められている。

これじゃあ、仕事にいけないな。

目覚めてからどれほど時間が経っただろう。

ガラガラと病室のドアが開いた。

そして、誰からゆっくりと近づいてくるのが分かった。


「あら、安間あんまさん。目が覚めたのね」


病室に入ってきたのは、看護師の女性のようだ。

僕の姿勢からは、人物の顔を見ることは出来ない。

首も固定されているから動かすことができない。

やがて、足跡が僕の真横へと辿り着いた。


「あ、そうだったわね。

安間さん、人工呼吸器しているから喋れないのよね」


僕は、目線で頷く。

いや、寧ろそれ以外で意思を伝えられそうになかった。


「医師を呼んできますね」


そう言って、彼女は出て行った。

うーん、看護師の顔がよく見えなかった。

僕の眼鏡は、一体どこだろうか。

世界がぼやけて見える。

あれ?これなんだ?

ぼやけた視界の中に、鮮明な物があった。

だが、それに手を伸ばすことは出来ない。

まあ、動かないからさ。

鮮明に見えている物。

丸い青いボタン?のようなものだ。

うー、押してみたい。

ボタンがあれば押してみたくなるものだよな。

僕は、恨めしくボタンを眺め…にらみつけるのだった。

結局、ボタンを押すことは出来なかった。

あー、気になる。

なんなんだろう、このボタン。

僕が、唸っていると再び病室のドアが開いた。

多分、10分弱も立っていない気がする。

廊下からの明かりが、差し込んでくる。

ぼんやりと人影が見える。

多分、2人…1人は、さっきの看護師さんの気配のような気がする。

もう1人は、おそらく医師だろう。

2人は、徐々に僕の傍へとやってくる。


「バイタルは異常なし…意識は」


医師が僕の顔を覗き込む、僕は、ぼんやり医師を見る。

中年?くらいの男性だった。

まあ、声音もそれくらいな気がする。


「うん、反応もあるね。

安間 蒼佑そうすけさん。

私は、当番医の前坂と言います。

君は、3日前に交通事故で運び込まれました」


え、3日前!?

もしかして、3ヶ日が終わる?

僕のお正月…あ、どうせ仕事だったわ。

ん?仕事!仕事!

やばいどうしよう。

いや、この身体じゃ無理だけど。


「明日…と言っても日付も越えてますので今日になりますが、午前に検査を行いましょう。

今晩は、ゆっくり休んで下さい」


前坂先生と看護師は、そう言って病室を出て行った。

これから、僕はどうなってしまうのだろう。

先行きが不安過ぎる。

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