ジップガン! ザップガン!

大黒天半太

ZIP! ZAP! BANG!

 銃声が鼓膜を叩き、反射的に音源〜銃口を避ける方へ身体が跳ぶ。


 埋設された電線のお陰で電柱が無くなった路上では、建物の陰か路上駐車の車の陰くらいしか、身を隠す場所が無い。


 帰国して五年、長らく聞いていなかった銃声に、まだ咄嗟に反応できた自分に、よく反応したと褒めてやりたい気分と、五年前ならその音だけで射撃者と標的の位置関係も推定出来ていただろうと鈍った感覚を恨めしく思う。


 恐らく、自分を狙ってはいない。油断した標的、この場合の私を、討ち漏らす程のド素人の襲撃者なら、話は別だが。


 第二射、第三射が続き、射撃者と標的の位置関係も把握できた。近いがこちらは狙われてはいない。


 ド素人の襲撃者は、身構えこそ、どこかのアクション映画の俳優のように腰が入っているが、銃の握り方の基本から教わっていないので、銃身の跳ね上がりを制御できておらず、流れ弾がどこへ飛んだのかの方が心配なくらいだ。


「死ね! 死ねよ〜!」

 襲撃者は、第四射、第五射の後、空撃ちを繰り返す。リボルバーの装弾数が五発なのさえ、きちんと理解できていないし、興奮状態で弾切れにも気づいていない。


 スッと背後に回り、頚椎に一撃を加え、倒れた襲撃者を抑え込んで、銃を蹴る。

 標的だった女は腰を抜かして座り込んでいるが、掠っただけのようで、出血はあるが、傷は深くない。むしろ、五発の内、近づいてからの二発か三発で、一発だけしか身体を掠めてないのは、しかも、左腕を掠めただけなのは、奇跡だ。


「包帯は無いだろうが、ハンカチでもタオルでもいい。傷口より上を縛るか強く押さえて止血を試みろ。こっちは両手が塞がってる。落ち着いて、少しでもスマホが操作できるようになったら、救急車、その後、警察に通報だ。ハンカチは?」


 標的の女は、答えようとして、まだ思うようにしゃべれず、震えた手でバッグからハンカチをやっと取り出した。


 被害者の通報より早く、誰かが銃声の通報を入れたらしく、救急車よりも警察が先に到着し、駆け付けた警官に救急車を要請、襲撃者=犯人を引き渡すと、私はIDカードを出し、通りがかった際に銃声がして自分も駆け付けたことを説明した。


 忘れない内に、倒れた襲撃者の手から蹴落とした銃を探し、安全装置セイフティを掛けたら、指紋を付けないように慎重にトリガーガードにボールペンを差し込んで持ち上げ、鑑識に渡す。


刻印シリアルが無い。登録の無い幽霊銃、未登録銃ゴーストガンだ。正規品に見えるが、正規品のパーツや3Dプリンターで作ったコピーパーツを寄せ集めただけの自作銃ジップガンかも知れないな」


 警察でも武装犯を対応するチームが出て来て、顔見知りの隊員が、敬礼から

「神宮寺警部補、何でこんな所に?」

 と声がかかる。


「それは、こっちが聞きたいよ」


 事件現場に向かうのは、警察官の基本だが、神宮寺ジングウジの場合は、事件の方から寄って来ると陰で言われている。それは聞いて知っているが、とんだ濡れ衣であるとしか言いようが無い。


 ただ、鼻が利くと言うか、勘が働くだけ。

 勘が教えてくれる道を行けば、私が必要とされている場へ行き着くだけの話だ。

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