第6話

 菜都美の出生届を提出して、俺は社会的に菜都美の父親になった。


「真が父親か」と篤志は言った。


 菜都美を抱っこしながら、篤志を見ると、すかさずキスをされた。



「俺と真が結婚して、真は俺の妻にするつもりだったのにな」



「ごめん」と謝って、俺は黙った。



「カナダでは普通に同性婚ができたんだ。二人でカナダ支社に行って、カナダで住むのもいいかと思ったけど、菜都美がもう少し大きくなってからじゃないと、予防接種の事とか大変だよな」


「ごめん」



 俺は菜都美を抱きしめた。



「勝手に保護者になるって決めた。でも」


「怒ってないよ。俺達には子供を産むことができないから、俺は菜都美の親になれて嬉しい。一緒に育てて行こう」


「ありがとう」


「戸籍上真が父親だけど、俺も父親になるよ。真がママになってもいいけど」


「それは無理があるよ」


「この際、カミングアウトして、結婚しないか?ここの役所は婚姻証明書を出してくれる。いろんなサービスも受けられるらしいし」


「篤志は結婚してもいいのか?」


「真はしたくないのか?」


「なんだか色々ありすぎて。少し待ってくれる?環境も変わるし、会社にも慣れてからでもいいかな?」


「勿論いいよ」


「そろそろマンションに行こう。引っ越し業者が来る」


「うん」


「赤ちゃんは生後一ヶ月は外に出さない方がいいらしいよ。母親が言っていた。免疫がないから病気になると大病になるらしい」


「俺達、連れ回してるよ」


「俺のマンションに行ったら、できるだけ休ませてやろう」


「うん」



 俺は腕の中の小さな菜都美を抱きしめた。


 マンションに到着すると、引っ越し業者が待っていた。



「すみません」と謝罪を言って、篤志の部屋に運んでもらう。



 篤志もカナダから戻ったばかりで、荷物が散乱していて、部屋の中がぐちゃぐちゃになってしまう。


 篤志は急いで、自分の荷物を篤志の仕事部屋に押し込んだ。


 部屋自体は、クリーニングを頼んでいたので、綺麗でソファーやベッドも埃もなかった。


 俺の荷物を引っ越し業者に寮に取りに行ってもらった。


 お金は余分にかかるが、菜都美に負担をかけたくはないから、菜都美を篤志に預けて、俺だけ連れて行ってもらって、荷ほどきしてない荷物を運んでもらった。


 近所なので、引っ越しは直ぐ終わった。荷物は空き部屋に置いてもらった。


 引っ越しが終わってから、篤志と菜都美のベッドを組み立てて、寝室に置いた。


 ベビーラックはリビングに置いて、菜都美を寝かせた。


 環境が変わって、大きな目を見開いている。


 泣くかなと思ったけれど、なんとか堪えてくれた。


 その間に、篤志と片付けをしてしまう。


 篤志の借りているマンションはファミリー向けだったので、何かと広い。


 寝室は一つ。


 三部屋個室があって、一部屋に篤志はパソコン等を置いている。


 俺にも一部屋もらって、仕事部屋にするつもりだ。


 残りの部屋は菜都美の部屋にするつもりだ。


 今は、実家から持ってきた物を置いている。


 少しずつ片付けていこうと思っている。

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