Old Wise Man

一片

第1話  漂白する夏

 うちに来たばかりのテレヴィジョンがカメリカの大統領を映している。元海兵隊の若い大統領は重い声で演説をしていた。


――――大統領になる日をずっと夢見ていました。不謹慎ですか。ええ、そうかも知れません。は最後までこの国のために命を捧げました。ロバート氏の功績は挙げればきりがありません。特に開戦は大きな政治判断でした。しかし我々は多大な犠牲を払って勝利しました。ここからは我々だけの時代なのです。――――今日この時からその職務と役目は私が引き継ぎます。ここにカメリアの繁栄を約束しましょう。

「以上、カメリア合衆国の就任演説でした。42歳と『若手』の副大統領が繰り上げで就任、まずは喫緊の『モード:ホワイト』に対処できるかに注目が集まっています。それでは次のニュースです…今朝鳥取の…」

 夕日が差し込む。逆光。グラスを置いてカーテンを閉めに立ち上がった。オレンジ色の光は通りに白い影を映し出す。通りに人影は見当たらない。それもそうだ。ここ冬樹ふゆき市には避難指示が出ている。子供も大人もみんないない。いるのは物好きとぼくだけ。

 チリンチリーン。一陣の風が部屋を吹き抜けて風鈴が鳴る。画面ヴィジョンは慌ただしく変わり、様子のAI音声は大統領の訃報を伝えた。7月7日の七夕に街は静まり返っている。今年も死者のホワイトが始まった。










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