第2話 クズ野郎、ギルドへGO!!


――人は誰しも、所属という“箱”を求める。

だがこの男の場合、“寄生する巣”が必要だった。


「へぇ~ギルドって意外とちゃんとしてんのね。受付嬢の胸もデカかったし良き良き」


 街の冒険者ギルド。ユウは珍しく真面目に紙にペンを走らせていた。

 内容はこんな感じである。

• 名前:カタグリ・ユウ

• 職業:盗賊

• 担当:支援

• 武器:ナイフ(師なしの我流)

• 能力:味方のダメージを一点に集約し、相手にぶつける支援技

(※実際は「味方のダメージを敵に肩代わりさせる」)


「はい、申請終わりました~。ただ……今ちょうど空きがあるのが一件だけでして」


 受付嬢が少し不思議そうな顔をする。


「『夜の帷(とばり)』という女性専用ギルドです。現在メンバーは4人で、応募条件が……『男の人』ですね」


「え、そこしか空いてない? いやあ、仕方ないな~~~(ニヤァ)」



翌日―― ギルド指定の集会場所


 ユウは営業スマイルを張り付け、待ち合わせ場所に立っていた。

 ほどなくして現れたのは――


「あなたが……新しく入るっていう……」


 長い銀髪、露出少なめの黒装束、目元だけがやたらと妖艶な女性。

 “夜の帷”のギルドマスター――ラナリアである。


 彼女の後ろには、個性の異なる美女たちが三人。

 ※詳細は後述。


「はじめまして、カタグリ・ユウと申します!」

「私は盗賊で、支援担当です。ナイフ使いですが、我流なので……全武器に精通しているラナリアさんに是非ご指導いただければと!」


 ユウは100万回使いまわしたような営業スマイルを貼り付け、深々とお辞儀をする。


(フッ……完璧な演技。剣術家や古武術の達人の技を肩代わりして盗んだから、ナイフの実力だけは一級品だ。仮に試されてもバレねぇ)


 その言葉に、ラナリアの目がほんの少し、細くなった。


「……ふうん。まぁ、見た目は怪しいけど、腕を見せてもらおうかしら」


 そう言って、彼女は細剣を抜いた。


「いきなり実技試験!?」


「当然でしょ?“夜の帷”は見た目だけのナンパ野郎を何人も葬ってきたの。あなたも、私を一本取れたら、仲間として認めるわ」


 後ろの3人が歓声を上げる。

• 赤毛の魔法剣士:メルティア「がんばれ新入り~、生きてたら褒めてあげるっ!」

• 巨乳弓使い:シェリル「何本骨が残るかしらねぇ~♥」

• 無表情の小動物系僧侶:ノワール「南無三……」


(あれ……?なんか思ってたより怖くね?このギルド)


 しかしここで引けば全てが水の泡。

 ユウは静かに、ナイフを抜いた。


「――では、僭越ながら」



数分後


 ナイフと細剣が数度打ち合い、火花を散らす。


「ふむ……いいわね、その動き。我流にしては、まるで“真伝の型”のよう」


(あ、バレかけてる!?)


 ユウは冷や汗をかきながらも、華麗に刃を捌き――

 ラナリアの髪を、ほんの少しだけ切った。


「……お見事。あなた、ナイフの使い手としては確かに本物みたいね」


 ラナリアは刀を収め、すっと微笑んだ。


「ようこそ、“夜の帷”へ、カタグリ・ユウくん」


(ふっ……な?俺って天才)

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