第31話 想起

 都筑志喜は眠りの中にいると分かっていた。彼は想起していた。

 妖怪ってのは雲みたいなものかもしれない。雨雲が一面に広がれば、それはもう空と同じだ。

 あるいは妖怪ってのは空なのかもしれない。そこにあるのに見ているのは青い空間、平面で空という場所も、物も見ているわけじゃないし、でもそこにあるっては分かってる。

 拡がっているのを分かっているだ、空だって。

 それでも今、チコがちゃんと見えているし、あおゆきに触れることもできる。

 雲が流れて行くように、空の色が一様でないように、もうすぐチコとあおゆきはいなくなる。けれども、今はともにいよう。それが彼にとっての今の日常なのだ。

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