異世界で“性魔術契約”を結ばされた俺、王女と騎士団に毎晩搾り尽くされてます

境界セン

性魔術契約、発動。

異世界アルディア王国――魔術によって文明が支えられるこの地では、魔力の“循環”が国の存続を左右する。


そして俺は、その循環を担う唯一の男だ。


「……また、来たんですか?」


ベッドの端に腰かけた俺は、扉の前に佇む影に視線を向けた。


そこには、漆黒の礼装に身を包んだ女騎士――レイナがいた。高位の騎士でありながら、その頬にはかすかな紅が差している。


「…陛下の命です。“魔力が不安定で眠れない”と」


「そう言うの、今週で五回目ですけど?」


「仕方ないでしょう。あなたが“循環供給者”に選ばれたんですから」


そう、それがこの世界に召喚された俺に課された役目だ。


性魔術――それは快楽を介して魔力を還元・再構築する特殊な体系。


そして、唯一それを媒介できる器が、異世界からやってきた俺らしい。


ベッドに腰掛けると、レイナは無言でゆっくりと近づいてくる。その足取りは威厳を纏いつつも、どこかしら焦燥を含んでいた。


「……触れますよ」


「はい。……お願いします」


彼女が手袋を外す音が、やけに大きく響いた。


その指先が俺の胸元に触れた瞬間、ぴり、とした感覚が肌を走る。魔力の循環が始まった合図だ。


「……また、熱くなってますね」


「それはこっちのセリフです」


肩越しに見るレイナの目が、ほんのりと潤んでいた。頬が赤く染まり、理性の仮面が剥がれかけている。


彼女は騎士である前に、この国の“依存者”なのだ。


「…もっと、深く、お願いできますか…?」


その言葉に応じ、俺は静かに頷く。


指先から始まった接触は、やがて唇、そして肌の奥へと至る。


肉体的な快楽だけではない。これは精神と魔力の“融解”なのだ。


その夜、彼女は何度も俺の名を囁きながら、魔力のすべてを注いできた。


翌朝、俺はぐったりとベッドに沈んでいた。


「……お疲れ、供給者様」


部屋の扉がまた開いた。


今度は、長い銀髪をたなびかせた王女・アリシアがそこに立っていた。


その容姿はまさに“高貴”の具現だったが、胸元が大胆に開いた夜着は、その印象を裏切るように淫靡で――それでいて、何故か彼女の無垢さを引き立てていた。


「また、あなたに頼らなければなりませんわ」


「……王女様、俺、もう魔力残ってないんですけど」


「大丈夫。わたくしが“注いで”あげますわ」


彼女はそう言って、ベッドへと歩み寄る。その動作は流れるように優雅で、それでいて、一歩ごとに肌を曝け出す誘惑に満ちていた。


「……わたくし、あなたの触れ方が、好きなんです」


頬にかかる銀髪をそっと払うと、彼女の瞳が俺を映し出す。


「契約者として……だけじゃ、駄目ですか?」


言葉の意味を問う前に、彼女の唇が俺のものを塞いだ。


それは魔力の接続か、感情の告白か。俺には、もう判断がつかなかった。


ただ、その夜の熱だけが、焼きつくように心と身体を満たしていった。


俺の役目は、魔力の循環供給者。


だが、どうやらそれは――王国中の女たちにとって、“欲望”の口実にもなっているらしい。


その証拠に。


翌日の夜には、また別の騎士団員が、部屋の前でそわそわと立っていた。


「す、すみません…あの…“少しだけ”でいいので…っ」


騎士団、王女、魔術師、巫女――


彼女たちは皆、笑顔で俺を求めてくる。


けれど、ひとつだけ問題がある。


――俺は、ただの童貞大学生だったんだよ!!?


この異世界、どう考えてもおかしいって!!


……でも。


「……今夜も、お願いしますね。契約者様」


彼女たちの笑顔が、あまりに優しかったから。


俺はまた、ベッドに身を預けた。


魔力が溢れるような吐息が、耳元に落ちてくる。


今宵もまた――俺の夜勤が、始まる。


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