偶像⑤
それからどうやって家に帰ったかを佑太は覚えていない。
気づいたときには真っ暗な部屋でベッドで横になり、ぼうっと天井を見ていた。
昼間、安藤から聞いたことが信じられずにスマホで湊関連の記事を漁る。
いくつかとりとめのない記事を流し見して、目についたのは痛烈なタイトルの記事だった。
「白峰湊はDVの被害者だった!ある噂がファンの間で話題に!?」
いつもは気にも留めないようなゴシップ記事だったが、昼間聞いた情報とリンクしてその痛烈なタイトルに違和感を覚えた。
佑太は起き上がり、スマホをタップして記事を読み進める。
そこにはやはり、昼間安藤から聞いたように、湊が妻から暴力を受けていたということが書かれていた。
佑太はなんとも言えない気持ちで画面をスクロールしていく。
そのサイトには記事の下部にコメント欄があり、ファンやそれ以外の人たちの間で議論が巻き起こっていた。
それぞれ、記事について簡単な感想を述べているにすぎなかったが、いくつかかなり過激な発言も見られ、コメント欄の中で争いが勃発しているようだった。
佑太はその不毛な争いをぼんやりと眺めていた。
そしてふと、気になることがあった。
争っているコメントのなかに「この話は記者に聞いたから本当だ」という旨の書き込みがいくつか散見された。
一つや二つではない。
自分以外にも記者からこの情報をリークされたファンがたくさんいるようだった。
そして、その記者とはもちろん複数ではないだろう。
安藤だ。
つまり、あの男はしきりにファンたちに情報をリークしているようだった。
なぜ、そんなことを――
佑太に情報を漏らすことの意味さえ分からなかったのに、複数人に情報をばらまいているのだろうか。
佑太にはその意図が、到底検討が付かなかった。
佑太はおもむろに、いつも使っているSNSを開く。
SNS上でもファンたちがざわついていた。
やはり、安藤という記者に接触され、情報をリークされたという話でもちきりになっている。
佑太はどうしていいか分からずに、自分も接触を受けたという旨の投稿をする。
そのままスマホを放り投げて、目をつむった。
しばらくするとスマホの通知がなり、一件のメッセージが届いていた。
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