札女と言われ異世界で馬車馬のように働かされているが拾った子供がやつらに復讐しろと諭してくるのは勘弁して

リーシャ

第1話

ぐすぐずと泣きながらひたすらお札を作る私。


どうしてこんなことになったのか、今でも分からない。


現代社会、詳しく言えば20××年から異世界に飛ばされてしまったことから始まる。


異世界というだけでも無理なのにまさかの若返りまでオプションとばかりにつけられていた。


そんなサービスいらないので帰してくれと常に思っている。


2×歳が若返ったら10代になっていた。


お肌は艶々だし調子もいいが心細さに比べれば比べものにもならない。


どうして普通のどこにでもいる女がこの歳になってトリップしないといけないんだろう。


貧乏くじを引くよりも悲惨なように感じる。


別の人がこれば世の中上手く行くのではないかな。


それに、ここは村なのだが村の人間達がブラックなのだ。


コキ使われている。


上手く言えないのだが己には聖魔法があってそれをお札にすることによって発動すると試行錯誤で分かったが、札の効能が知れると安く買い叩かれるようになった。


村に住まわしてもらっているから強くは言えず。


かといって、ここから出るための資金を貯めてどうにか出たい。


そうしてもんもんとしながらオーダーを貰うのでしくしく泣きながら札を作る。


兎に角お金を稼がねば先に進まない。


とくとくと作っていると村がその日はざわついていて、ボロボロの子供が倒れていると騒動になった。


ピオミルもちらりと見たが札効果で身綺麗になっている村人達はその汚れている子供に近付かない。


(この子も利用されるのはイヤ)


様子も見ないような態度に日頃の鬱憤が少し出る。


誰も引き取りたくないというので己が引き取ることにした。


手をあげたら作業が遅くなると意味の分からないことを言われたが、自分達がイヤなんだろうと反抗心が動く。


どうしてここまで見知らぬ子供に反応するのか自分でも訳がわからない。


(きっと同じ境遇ってだけ)


子供を引き取って目が覚めている状態で置いておくと、ずっとさっきから睨み付けていることに震えていた。


冒頭に戻る。


異世界に来てから涙など滅多に流さなかったのに、涙もろくなった。


怯えも強くなり微かなことで驚くようになった。


「あ、あの、なんで睨み付けるの?」


「お前がおれをころすか見極めてる」


「こ、ころ」


物騒だし子供の口から出るものではない。


やはり異世界は治安が悪い。


子供がこんな風なら大人は荒みに荒み、手がつけられないほど無慈悲なのかも。


異世界怖い。


小さい巨人、否、小さい猛獣を前にブルブル震えるのは仕方なかった。


「怖がりすぎだろ」


独り言に呟くが怖がらせている本人に言われたくない。


こんな子と暮らしていかないといけないなんて誤算。


今から返還出来ないかな。


怖いなんて思ってもみなくて泣く。


それでもお腹は空くし札は作らねばお金が貯めれずなので作業をしていく。


ご飯も作って子供に食べさせる。


一応村に倒れていたので引きとったのだと告げ、男の子は「へぇ」と気にしていない風な態度。


ここがどこなのか気にならないのか。


男の子はなんと呼べばいいのかと聞くと、無視される。


警戒しているのだろうと気長に待つことにした。


時間はあるし、その時間はほぼ内職になるから暇でもない。


せかせか、せかせか、と札を作っていれば興味深そうにこちらを見つめる男の子。


気になるけど作業に没頭していくと気にならなくなった。


「ふう、終わったぁ」


一段落して肩を回す。


手を動かし魔法を込めて、魔力もなくなりつつある。


息を吐いてふと上を向くと男の子がじっくり見ていたので驚きに顔を揺らす。


そうだ、居たんだった。


慣れない。


同じ空間にもう一人いるというのは見られているということ。


やっぱり引き取るのは早計だった、かなぁ。


もじもじとしながら立ち上がる。


ふらふらしていて足が覚束ない。


が、前に動けなくなった。


魔力不足、それが脳裏を過ぎた。


なんだか誰かに呼ばれている声が聞こえるものの、答えられそうにない。


──チャプン


水音が耳を滑り瞼を開かせる。


「う……ん」


自身の声で更に脳がくるくると動き出す。


ボヤける視界からクリアになる。


水の音が聞こえた気がするのだが、気のせいなのだろうか。


ようやくハッキリ見えるようになって男の子が横に居ると知る。


悲鳴をあげかけたが、額に乗るなにかに気付いて止まる。


意識を失ったのだったと少しずつ思い出していく。


多分ここは己のベットで、ラギアンが本来寝ていた場所。


そこを譲られているということは、介抱してくれたのは恐らくラギアンなのかも。


でないと近くに居ないし、村人はやるとは思えない。


そんな良心があるんならもっと違う生活をしている筈。


期待など昔に消え失せている。

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