夢見がちな少女が、母の遺した「おとぎ話の約束」を胸に、現実の失恋を繰り返しながら二次元の「王子様」へ没入し、やがて超常的な怪異(あるいは奇跡)に巻き込まれていくという、ファンタジックで不穏なエネルギーに満ちたプロローグです!
冒頭の、雪の夜の母娘の読み聞かせシーンがとても温かく描かれているからこそ、「お城を抜け出して王子様に逢いに行くのよ」という母の言葉が、のちの桃香の「現実逃避のトリガー」として機能していく構成が見事です。親友の莉々とのテンポの良い女子会トークや、「顔が好きだったのに撃沈」という桃香のどこか憎めない俗っぽさの描写もコミカルで、一気に物語に引き込まれます。
そして後半、乙女ゲームの攻略に失敗した(モブ男に捕まった)瞬間の、テレビ画面から「何か」が這い出てくるホラー描写のキレ味にゾクゾクさせられました。現れたのは本当に憧れのリュシアンなのか、それとも「桃香の歪んだ執着」が引き寄せてしまった異形のものなのか。ラストの「生暖かくて、少しだけ柔らかな手のひら」という五感に訴えかける描写が、ただのハッピーなトリップものではない不穏さを孕んでおり、続きの展開が非常に気になる導入です!
主人公が乙女ゲーの世界に行くのではなく、イケメンキャラの方が現実世界に出てくるという設定が面白かったです!
住む世界が違うので結ばれないと分かっていても、いろいろなエピソードがあって彼に惹かれていく主人公の気持ちがみずみずしく書かれていて好感が持てました。
ゲームの世界に戻れるかもしれない方法を知っていたのに、主人公が言い出せなかった気持ちを考えると切なくなります。
とにかく、この二人の結末がどうなるか知りたくて読み進めました。
こういうストーリーだとエピソードが長くなりすぎる傾向があるかと思いますが、ほどよい分量でしっかりと綺麗にまとまっていて、とてもよかったです!!
現役の学生さんはもとより、往年のコバルト文庫やティーンズハート、少女漫画がお好きな方、ぜひご一読ください!
私は読み終えた直後、ありもしないはずの恋の思い出が、なぜか脳裡に浮かび上がりました。