■王都で蠢く影

「レオン様、王都の一部商会がMagica-Excel技術を不正入手しようとしているようです」

ティナの声が、いつになく鋭かった。

暫定協定から半年。

フェルネ村と王都の関係は表面上穏やかだったが、水面下では違った。

王都商会A：「Magica-Excelを自社独占技術に」

王都貴族B：「村の技術を国営に取り込め」

王都研究所C：「フェルネの研究者を引き抜け」

「完全に情報戦の様相ですね」

アリシアも表情を引き締める。

「技術流出は防がないと。Magica-Excelは村の未来そのものです」

■レオンの対抗策：情報管理システム

「Excelに情報戦用のモジュールを組み込む」

「……またExcelですか？」

「情報こそデータ。データこそExcelの本領！」

【情報戦対応モジュール：概要】

技術管理シート

各研究成果の進捗、関係者、アクセス権限を管理

リスクスコア算出

技術流出・不正アクセスの可能性を数値化

村外取引ログ監視

商会・貴族からの接触履歴を時系列で記録

「これで、どこから圧力が来てるか一目瞭然だ」

「これ、異世界初の“情報セキュリティ管理システム”ですよ……」

■村に迫る“引き抜き工作”

ある日、マーシャから王都経由で急報が届く。

【緊急報告】

王都商業学校の一部教授がフェルネ奨学生に高額の研究資金を提示、

“王都で研究を続けろ”と誘導しています。

「……若者たちに直接圧力を？」

「許せません。彼らは村に戻る約束で奨学金を受け取ったのに」

「Excelで教育してきた意味を、見せる時だな」

■若者たちの決断

マーシャは教授の誘いをきっぱり断った。

「私はフェルネ村に帰ります。“Excelで人を幸せにする”って決めたから」

ロイも続いた。

「王都の資金より、レオン様の教えを信じます」

「俺が教えたのはExcelじゃない。

　“未来を自分で計算する力”だ」

若者たちは異口同音に誓った。

■王都内部での工作暴露

一方、フェルネ村の情報監視ログに異変が記録される。

「王都研究所Cから技術データへの不正アクセス試行……3件目です」

「証拠を固めよう。逆にそれを“交渉材料”にする」

数日後、王都に提出されたのはこの一枚。

【王都研究所不正アクセスログ（抜粋）】

日時 アクセス元 対象データ 結果

5/14 21:13 研究所C・端末No.3 Magica-Excel Ver2.1 ブロック

5/16 02:45 研究所C・端末No.7 村農業改良データ ブロック

「完全に証拠です」

「これで王都に“情報戦の矛先”を収めさせる」

■王都への最後通牒

【フェルネ村の声明】

王都内の一部勢力によるMagica-Excel技術への不正アクセスは確認済み。

村はこれ以上の情報侵害に対し、

王都との協力体制を再検討する可能性がある。

ロルフ特使が村を訪れ、苦渋の表情で告げた。

「王都上層部に圧力をかける。フェルネ村の協力は、今後も必要だからな」

■Excel脳の勝利

「村の技術を守った……！」

ティナとアリシアが安堵の息を漏らす。

「だが戦いは続く。次はもっと巧妙な手が来るだろう」

俺はノートに新たな項目を書き足した。

■次の防衛策

・技術者教育の徹底（情報倫理）

・村内“技術流出防止法”制定

・王都外との提携先開拓

■夜、アリシアの微笑

「レオン様、フェルネ村はまだ小さな村ですが、

　王都に負けない“大きな頭脳”を持っていますね」

「頭脳だけじゃない。“人の心”も育てていく村にする」

月明かりの下で二人は、未来の村を思い描いた。