第22話「Excel農業革命!? 村を救う“異世界スプレッドシート”」

「今年の収穫、思ったより少なかったな……」


秋の終わり、倉庫に積まれた穀物の山を見て、エリクがため息をついた。


「夏の干ばつの影響です。さらに害虫被害もありました」


アリシアが冷静に報告するが、その目はどこか不安げだ。


「レオン様、このままでは村の備蓄が底をつく可能性があります」


■フェルネ村の新たな課題:食料危機

人口が増え、交易が盛んになった分、村の消費量も増えていた。


村人口:前年比 +18%


食料消費量:前年比 +23%


生産量:前年比 -12%


「増えてるのは人口と消費。減ってるのは生産。これじゃあ……」


「そう、村が豊かになった分、食糧危機も現実味を帯びてきました」


■Excel農業革命計画、発動

「よし、農業改革だ! 名前は“Excel農業革命”!」


「……また名前が直球ですね」


「だが心配するな。今回は真剣だ。目標は“生産量2倍、労力半分”」


「そんなこと可能ですか?」


「Excelがあれば可能!」


■フェルネ農業の現状分析

まず、村全体の農地をスプレッドシートで可視化。


土地の肥沃度


作物別の生育記録


気温・降水量の推移


害虫発生履歴


【畑管理シート(抜粋)】


区画 作物 土壌pH 肥料量 収穫量(昨年) 問題点

A1 小麦 6.2 中 120kg 排水不良

B3 大根 5.8 高 80kg 害虫被害

C5 キャベツ 6.5 低 150kg 肥料不足


■課題への対策

1. 土壌改良プログラム

pH測定→適正値6.0〜6.8に調整


村の堆肥施設を拡張


2. 輪作とコンパニオンプランツ導入

害虫防除を自然循環で


例:トマトとバジルを交互に植える


3. 灌漑システムの改良

簡易水路+Excel水量管理シート


使用水量を見える化、節水効果15%


■現場の混乱と説得

「レオン様……正直、難しいです」


ベテラン農民のダグが、渋い顔で首を振った。


「畑仕事は“勘”でやってきました。数字で管理なんて……」


「分かる。でも、その“勘”が未来に残る保証はあるか?」


俺は、畑の上でタブレットのように広げた帳票を見せた。


「これを見てください。“去年と同じ作付け”で収穫量が落ちてる理由が一目瞭然なんです」


「……こ、これは……!」


ダグの目が丸くなる。数値の裏に隠れていた“原因”が、Excelによって暴かれた瞬間だった。


■実践! Excel農業

数週間後、村の畑は見違えた。


畝間に植えられたバジルの香りが害虫を遠ざけ


新設の簡易水路が畑に規則正しく水を届け


村人たちが“データノート”を手に農作業に励む


「収穫予想グラフが伸びてるぞ!」

「水の無駄遣いが減った!」

「野菜の味が良くなったって交易商が言ってる!」


■議会からの評価

村議会もこの変化を高く評価。


「レオン殿、これなら村の食料問題も解決できますな」

「しかし、同時に“教育”も必要です。村人全員が数字を読めるように」


「教育委員会と連携して、“農業Excel講座”を開きましょう」


「またExcelか……」


■ノートの記録

■Excel農業革命:初年度成果

・収穫量:前年比+42%

・労働時間:前年比-18%

・害虫被害:前年比-60%

・課題:若手農業人材育成、データ精度向上


「農業は勘と経験の世界。でも、Excelが“気づき”を与える補助輪になれる」


■変わる村、変わる人

マーシャが言った。


「レオン様、この村はもう“Excelなし”じゃ考えられませんね」


「いや、最終的には“Excelがなくても大丈夫”な村を目指す」


「え?」


「俺がいなくなった時のために、な」


「……その時までに、誰かが“次のExcel脳”になってますよ」


そう微笑むマーシャの瞳に、確かな自信が宿っていた。


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