第5話 俺、冒険者ギルドで見習いになった
翌朝、俺は宿の女将に道を聞き、冒険者ギルドへ向かった。
レーヴェンの街は朝から活気に溢れている。石畳の広場には、獣の耳を持つ種族や、背の低いドワーフのような者、長い耳を持つエルフらしき者まで混じっている。まるでファンタジーの世界だ。
「……これが現実って異世界すごいよ...」
俺は苦笑しつつも、ギルドの門をくぐる。重厚な石造りの建物の中は、さらに賑やかだった。酒場のような一角では冒険者たちが談笑し、掲示板には依頼の紙がずらりと貼られている。
そこには、筋骨隆々の戦士や、魔法使いらしきローブ姿の人物、さらには顔に大きな傷を持つ無骨な男たちが集っており、圧倒されるような雰囲気が漂っていた。
「……場違い感ハンパじゃないな」
俺は深呼吸し、意を決して受付に向かった。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。登録希望ですか?」
受付嬢は事務的だが、感じのいい笑顔で対応してくれた。俺は緊張しながら頷く。
「はい、お願いします」
「では、まずは見習い登録となります。簡単なお使いの依頼をこなして、問題なければ正式登録に進めます」
どうやら、いきなり正式な冒険者にはなれないらしい。俺は素直に頷いた。
「わかりました」
「では、こちらに名前と年齢を記入してください。それとも代筆しましょうか?」
「お願いします」
受付嬢が用紙に名前と年齢を書き終えると、簡単な説明が続く。
ちなみに名前はクロスケにした。文字が書けないので口頭で受付嬢に名前を伝えたが「はい、クロスケさんですね」って言われたからだ。もうあきらめたよ。
「依頼内容は、街の北側にある薬草店への配達です。荷物を届けて、受け取りの証明書を持ち帰れば完了です。町の地図はお渡ししておきます」
まるで宅配便だ。だが、これも冒険者の第一歩なのだろう。
「引き受けます」
荷物はそれなりに重く、薬草の独特な匂いが鼻を突く。
街中を歩きながら、俺は道端の露店を眺めたり、子どもたちのはしゃぐ声に耳を傾けたりしつつ、目的地を目指した。
「薬草店って、確かこのあたり……あ、あった」
木製の看板に草の絵が描かれた小さな店を見つけ、中に入る。
「こんにちは、ギルドからの配達です」
「おお、ご苦労さん。荷物はそこに置いてくれ」
店主は年配の男性で、手際よく荷物を受け取ると、証明書を手渡してくれた。
「これを持ってギルドに戻れば完了だよ。気をつけて帰るんだな」
「ありがとうございます」
俺は証明書を大事にポケットにしまい、再びギルドへ向かって歩き出した。
「よし、これでひとまず見習い卒業だな……って、まだ早いか」
そんなことを考えながら、俺は足取り軽くギルドへと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます