借りパクの傘のゆくえ

@katakurayuuki

借りパクの傘のゆくえ

 鏡を合わせると奥に同じ景色が広がるのを見たことがあるだろう。俺たち一族はその鏡合わせの世界に住んでいる。別に住んでるからって特別なことはできたりしない。鏡の中に世界があるだけで、他の人は入れないし、他の人に言ってはいけないし、いいことといえば、かくれんぼで最後まで隠れられることだけだ。

 そんなある日、雨の中コンビニまで行って買い物した後鏡の世界に戻る途中、声を聴いた。

 「借りパクされたーーー、さいあくーーー。」

 そんな叫び声が響く雨の中のコンビニの外。そこには自分の傘を誰かに主まれたかわいそうな人間が一人いる。

 そして俺は傘を借りパクする側の人間だ。


 世の中には2種類の人間がいる。傘を借りパクする人間とされる人間だ。


 俺も昔はそんなことはしなかったのだが、ある日1万円で買ったかっこいい傘を誰かに盗まれてから俺はすすんで誰かの傘を盗むようになった。

 ささいな出来事だろ。世の中には五万と他にもやってる奴がいる。

 でもそれを見とがめる奴がいた。姉だ。その姉が村長にチクリ、俺は村長に呼ばれこう言われた。

 「お前、いくらなんでもやりすぎだぞ。罰としてお前はこの地図の所まで外を歩いて行きなさい。ちなみに外は雨だし、地図は濡れると消えていき、この世界にこれなくなるぞ。ただし、コンビニで傘を買えば乾く術をかけておいた。この世界に未練があるなら、そしてお金があるうちに地図の場所まで行くんだな」


 「やってらんねーーー!!」

 叫ぶやいなや俺はどこかに飛ばされ地図と自分の財布を持っていた。

 どれどれと地図を見てみるとポタポタと雨が降ってきたではないか。そして雨が濡れるとどんどん地図が消えていくではないか。

 こりゃやばい。

 近くのコンビニまで行き、傘を一本買うと地図は濡れたのがウソのように乾いた状態でそこにあった。どうやら距離はそこまで遠くない。だが、地図を外で確認するたびに濡れてしまい、そのたびにコンビニで傘を買うのを繰り返すようになった。

 

 世の中には3種類の人間がいる。傘を借りパクされる人とする人、そして借りパクして罰を受ける俺だ。


 俺はコンビニに傘を補充しながら目的までたどり着いた。そこはなんてことない、普通のコンビニだった。

 「っやっと終わった。疲れたーー。」

 入り口で傘を射し込もうとした瞬間。そこには懐かしい物があった。

 俺の大事な傘だ。

 誰かに借りパクされた傘が目の前にあったのだ。

 手に取ってみると持ち手にメッセージがついた紙が貼ってあった。

 「これに懲りて傘を盗むことは辞めるように。それと昔傘借りパクしてごめんね。by村長」

 「あいつ、あいつのせいか!」

 俺は大事な傘を抱えつつ鏡の世界に戻り真犯人をとっちめる為、傘を借りパクする奴を許さないために鏡の世界を走るのだった。


 世の中には3種類の人間がいる。傘を借りパクされる人とする人。そして借りパクを許さない俺だ。

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