第14話

 それからオリヴァーと結婚するまではあっという間だった。

 療養中だという彼の父と対面して喜ばれたり、魔法のことで皇太子に呼び出されたり……。目まぐるしい日々ではあったが、結婚の準備は順調に進んでいった。


 アンダーソン家の三人は、国外に出たと聞かされた。

 魔法の鍛錬のためだとか、社交界にいられなくなったとか、色々な噂が流れてきたが、本当のところは分からない。

 それでも、もう顔を合わせることがないと思うと、ルイーゼは心底ほっとしていた。



 侯爵代理として忙しく動き回るオリヴァーは、時間を見つけてはルイーゼにとにかく食べ物を与えていた。「もっと体力をつけていただかないと、侯爵夫人は務まりませんよ?」と言われれば、食べないわけにはいかない。

 その上、家庭教師をつけてくれたため、毎日少しずつ貴族としての振る舞いを身につけることが出来た。

 気がつくとルイーゼは、どこに出しても恥ずかしくない淑女としての振る舞いを身に着けていた。



 そして今日、結婚式の日を迎える――。


「ルイーゼ、緊張していますか?」

「はい……」


 真っ白なドレスに身を包んだルイーゼの隣には、タキシード姿のオリヴァーが立っていた。


「想定よりも大掛かりな式になってしまいましたね。今日は王家のご一行までいらっしゃいますし」


 オリヴァーの言葉にルイーゼの緊張が余計に高まる。


「そ、そうみたいです。ミラン王女だけでなく、国王陛下や皇太子殿下まで……さすがに断れず……」

「あの人たちもしつこいですからね。ルイーゼを国に渡すつもりなんて微塵もないというのに」



 ルイーゼが癒しの魔法を使えると知られてから、王族から何度も王宮で働かないかとオファーを受けていた。


(お力になりたいけれど、まだ貴族としての振る舞いも未熟だし……。でも断ったら不敬よね?)


 どうしたものかと悩んでいると、オリヴァーが全て断ってくれたのだ。「ルイーゼはまず、ノイラート家に慣れるべきだ」と。



(オリヴァー様は私のことをよく分かっているみたい……私はオリヴァー様のこと、全然知らないのに)


「私はまず、オリヴァー様のことを知りたいです。夫婦になるというのに、全然知らないことばかり」

「ははは、いくらでもお教えしますよ。でも、式直前にあまり可愛いことを言わないでください」


 ルイーゼの呟きにオリヴァーはふっと微笑む。そしてそのままルイーゼの額に唇を落とした。


「貴女に助けられた時から、僕は貴女に夢中です。それだけは知っておいてください」


 オリヴァーの言葉とともに、会場への扉が開かれる。


「さあ行きましょうか」

「はいっ」


 ルイーゼはオリヴァーの腕に手を添えて歩き出す。

 もう彼女は一人ではないのだ。




【完】

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無能令嬢の数奇な運命。〜上から落ちてきた冷徹宰相様を助けたら、結婚することになりました!?〜 香木陽灯 @moso_ko

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