第17話 女神は教会再建をあきらめる


 何はなくとも楽しい我が教会。

 しかし、元からボロい扉は近所のオッサンオバサンたちに破壊され、元から倒壊寸前の教会は既に傾いている。


「おい何だ貴様らは。女神様を前に頭が高いぞ! 三遍まわってワンと言え!!」

「ヒイッ!?」

「なぜお前がビビるんだ、ユリ」


 聖なる女神様の俺が、今にもノージョ様が飛び出しそうなTシャツから下乳をゆっさゆっささせながら叫んだおかげで、騒ぎは収束した。ただし、後にはボロボロの教会とボロボロのユリが残った。

 そして、ユリは俺をまるで化け物を見るような目で見つめていた。今までもそうだったかも知れない。


「何があった。言え」

「……………拾ってください」

「あ?」


 ユリが指差した先。ボヤが起きたらしい跡には白濁液の水たまりとそして――――、我が聖剣、御神体が落ちていた。

 というか煤まみれの白濁液コーティング、かつ踏んづけられた跡まで。なるほど、なんだか股の辺りがもぞもぞすると思ったぜ。


「御神体をこんな目に遭わせて、お前にはシスターとしての矜恃がないのか」

「何もかもミュー様がやらかしました! ミュー様のおかげで教会は取り潰し、私は路頭に迷うしかありません!!」

「何言ってんだユリは。俺が王女んところでだらだらしたくらいでそんなアホなことあるか」

「ミュー様はそこで倒れています! もうおしまいです!!」


 何を言ってるんだ…と、ユリが指差した方向に歩くと、白濁液にまみれたゴミが転がっていた。

 うむ。教会にあった俺の仏像が、粉々になって散らばっていた。おお女神よ、しんでしまうとはなさけない。


「なんでTシャツまで一緒にあるんだ? ユリ、まさかお前はこれで白いのを拭いたのか?」

「しししし失礼なことを言わないでくださいっ! 岩男様は最後まで私たちをお護りくださったのです!!」


 はぁ、これだからシスターってのは。見ろ、このヨレヨレになった岩男を。まるで発射してスッキリした賢者様じゃないか。



 その後。ユリから事情を聞いた。

 俺ではなく教会の女神像が、なぜか岩男Tシャツを着て街で暴れた。見境なく女をナンパして、怒った男たちに刃物を向けられ、松明を投げられて肉屋が燃えた。ユリは手提げの中の御神体に気づいて捨てようとしたが、慌てているうちに白濁液が発射され、女神像は倒れ火災は鎮火した…と。


「要するに俺が世界を救ったんじゃねーか」

「あんな汚い汚物で何が救えますか!」

「消火器で初期消火。いいね、街の連中も日頃の消防訓練の大切さを学んだであろう」

「話しながら股間に戻さないでください。視界に入っただけで妊娠しそうです」


 股間にテントも張ったので、ついでに焼け跡に立ちションしようと思ったら、悪鬼羅刹の如きユリに引っ張られて教会の裏へ連行された。

 そこには何も足さない何も引かない、ありのままの甕がいた。


「女神様たる俺がこんな甕に小便など我慢ならん。見ろユリよ、小便もジョボジョボとうなだれているではないか」

「見せないでくださいっ! 女神様にあんなものはついてませんっ!!」

「受け入れろ、現実を」


 どんな便器でも出せばスッキリする。それは真理だが、もう少し文明的な小便をしたいものだ。

 え? 大便はどうしてるって?

 なんかまだもよおさないんだよな。ユリのせいで粗食ばかりだったせいかも知れない。そして甕にはしたくない。あれなら山でキジ打ちしてくる覚悟だ。




 結局、女神の仏像が暴れた責任を取らされ、ミュー様を祀る俺の教会は壊されてしまった。というより、暴徒と化した近所の連中が柱を折ってしまい、壊すしかなかった。

 暴れた女神像は、主に女性たちによって粉々に砕かれ、教会跡地でわざわざ火にくべられた。

 もちろん石像は石だから燃えるわけもなく、ただの自己満足だった。

 教会だった柱や床の板で行われた焚き火を遠くで眺めながら、そういえば人面瘡はどうなったんだろうとぼんやり思い出した。どうでも良かったのですぐに忘れた。


「岩男様。ああ貴方様は我々をお救いになられました」

「本物の神様ってのはすげえな! 思わずひれ伏してしまったぜ」


 乾いてカピカピになった岩男はニヤけ顔にしか見えないので捨てようとしたが、なぜか近所の連中が拝みはじめ、四つ角の小さな祠に御神体として祀られた。

 安住の地が見つかったのはいいけど、こいつら大丈夫なのかと呆れた女神であった。





 で。



「王女、俺様を満足させられるんだろうな」

「はい喜んで! ミュー様の果てなき欲望を満たしてみせましょう」

「で…殿下。ミュー様に乗せられてはいけません。こいつは果てしなく寄生する穀潰しです!」


 ユリのせいでお尋ね者になった俺は、知り合いを次の寄生先と定めた。

 こいつらはいつまでもタニワに居られない、俺とユリもタニワに居られない、これってウィンウィンの関係ってやつだな。


「と、ところでミュー様、その……」


 まだ何か厄介事でも持ち込むのかとうんざりしながらミラの方を向くと、その視線は俺のある部分に集中していた。


「なんだ見たいのか? なんならお前に預けてやろう。王女様にはお守りの一つや二つあるもんだ」

「ひゃぁぁぁぁ…」


 股間のテントに興味津々だったので、取り外してミラの髪留めに付けてやったら、弱々しい声をあげて卒倒した。困った奴だな。


「お守りで倒れるとは非常識な奴だ」

「ミュー様はあれが公衆の面前でぶらぶらしてもかまわないのか」

「ひいぃっ、妊娠してしまいます!!」


 心配するなユリ。俺だって相手は選ぶ。そしてイリスよ、御神体はワッショイワッショイされるものだ。なんならたまに御神水もまき散らせばいい。小便だったらハズレだ。




※数日からそれ以上更新休止します。テンション下がって書けないぜ

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