女神ダンテ

伽図也

序章:女神と魔王の最後の闘争、或いは世界の終焉

 暗い。


 あたりが見えぬ程、ではない——薄暗い。


 満月の夜、寄りかは、明るい——が、夕暮寄りもは、暗い。


 見渡せば、岩ばかりの荒野。


 見上げれば、岩の天井。


 洞窟の中、なのか。


 だが、高い。広い——地底世界、なのか。


 所々に光る岩がり、れが辺りを照らしてる。でなければ、漆黒の暗闇だろう。



 の只中にそびえる、石造りの城館。


 そうごんな外観と、せいぜんとした造形。


 他に建物は見えない。周囲に人のる様子も無い。


 一体、誰が、何のために建てたのか。


 だが、処々が崩れてる。


 天災か、何者かの攻撃を受けたのか。


 屋根がはしから大きくけてる。



 穴から見えるの下は、伽藍堂cathedralだ。


 壁や天井に、きらびやかな装飾——ほのかな灯りが、れらを照らしている。


 けんらんたる、だが、せいじゃくに包まれた大広間。


 貴人をむかえる場のようだが、今にぎわいは無い。



 人影はる——の中央に、只二つ。


 対峙するは、男と女——おのおのいかめしくも立派な見りだ。


 城のぬしたる、じんろうか。


 だが、たがの印象は、余りに対照的だ。


 女の方は——


 白きころもまとい、きらめく宝具でを飾り、そうごんしゃくじょうたずさえてる。


 闇を破らんがばかりに、『々しく』まばゆい。


 男の方は——


 ドス黒い鎧でを固め、まがまがしい装飾の上に、しっこく外套マントひるがえし、こつ大剣grandswordげてる。


 やみさらに『ように』黒く押し固めたがごとし。


 いずれも、の世の者と思えない、うきばなれした様相。


 ち——見た目こそ『貴人』だが、受ける印象は『』だ。



 当然だ——『鬼』と『神』ならば。


「来ましたか、魔王」


「女神よ、最後の時だ。念仏でも唱えるか」


「念仏とは一体、誰を相手に聞いてるのでしょう? わたくし『』でしてよ」


 御もっともな返しだ。


「まあ良い。我が力のへんりん、見てもらおうか」


 『魔王』が、手を振る。


 great-typhoonが巻き起こり、『女神』を包む。


 『魔王』が、手をてんかざす。


 凄まじいthunder-breakが、『女神』を直撃する。


『魔王』が、『女神』をゆびす。


 ゆびさきほむらが灯る。


 ほむらは巨大な火球とり、『女神』に突進する。


 燃えさかる地獄のblast-fireが『女神』をおおう。



 魔王が次々に繰り出す、必殺のフルコース!


 ひとしきりの攻撃の後、ついに『女神』はひざを屈する。


「良く耐えたな——だがもう終わりだ」


「希望は捨てない——最後まであきらめない」


「残念だが勇者は、もう現れない。勇者を導くまえの役目は終わった」


 『魔王』が『女神』に手を伸ばす。


「世界のそくばくとらわれしあわれなたましいよ。いまくびきを解いてる」


 『魔王』の手が『女神』にれる。


 『女神』の姿が、おぼろようにじんで行く——れはやがて、無数の光の粒に変わり、『魔王』の体に吸い込まれて行った。



 全てがぼっした暗闇の中で、『魔王』の声だけがこだまする。


「女神は消えた——の世界も終わりだ」



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