第3話

 怪奇現象や恐怖体験やオカルト話をつらつらと連ねたホームページがあった。

「SNSとかじゃなくて?」

 独特の文体で繰り広げられる世界観は、どれもうすら不気味で奇妙、血腥くて後味が悪いものに塗れていてぼくは正直言って閉口した。が、友達は非常に刺さったらしく昂っている。

「すごくない? since2004ってあたしが生まれる前からあるんだけど!」

 最終更新日はほぼ十年前で、その日から管理者の消息はどこにも記されていない。

「イイよねぇ… ただの文字なのにこれだけ生理的嫌悪感と恐怖心と絶望を表現できるなんてことあるの?! しかもずっと昔に書かれたのに!!」

 鼻息も荒く語っている。彼女も趣味で文章を書いたりしているので、何か思う事があるんだろう。

「あたしも書けるようになりたいな この人今どこにいるんだろ」

 そうだねいつか会えたらいいねと雑にあしらって、夕飯の時間なので彼女を家から追い出した。

 それが生きている彼女を見た最後だった。

 彼女はその日の夜、ここから三県離れた街の路地裏で発見された。司法解剖の結果、遺体は無傷にもかかわらず五臓六腑全ての表裏が逆になっていることがわかった。

 よかったね、怪現象そのものになれて。

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