【40,000PV突破御礼】古医術で診療所やってたら医術ギルドに潰されそうになり、闇バイト先が魔王軍で魔族たちに溺愛されてます(R15)
第34話 あのドジっ子が気持ちよさそうに顔を赤らめたせいで、ざわつくのになぜか落ち着く
第34話 あのドジっ子が気持ちよさそうに顔を赤らめたせいで、ざわつくのになぜか落ち着く
玄関に行ってみると、地味な服を着た少女が、戸口で薬草の束ごと転がっていた。髪は淡い茶色で、無造作に三つ編みにまとめられていた。
「お前は……」
言いながら、助け起こそうと手を伸ばす。
少女が手を取って顔を上げると、地味な服や髪型とは不似合いの見目麗しい顔立ちだった。くりくりと大きな瞳と、小ぶりのふっくらとピンク色の口元。
「す、すみません……!薬草の配送係の、アルターです……前の方が腰を痛めて……初めて来たので、道に迷って……」
「ああ、あの爺さんか……迷ってこの時間に?」
「はいっ! 二日前に出て、えっと、三回くらい迷子に……」
……大丈夫なのか、このドジっ子。
街から数時間のはずだぞ、この診療所。
そのうち配送中に事故にあったりしそうだな?
そう思いながら、アルターが持ってきた薬草に目を走らせると、そのうちの一つが俺の目を引いた。
「これ、ルルベル草じゃないか。入手困難なはずだが……どうやって仕入れた?」
「え、あっ、それは……たまたま南部の村から来た行商の方が持っていて……! 数に限りがあるって聞いて、思わず全部……」
「乾燥状態がいいな。香気成分がほとんど飛んでいない」
「は、はいっ。状態がいいので治療に最適です。でもこれ、体質によっては……」
「高血圧気味の患者には向かない。だが、代謝が落ちてる年配の魔族には……」
「逆に合うんですっ!」
俺とアルターの声が次第に熱を帯びて早口になっていく。
様子を見に来たラナがやや引き気味に後ずさった。
「な、なに、この空気ぃ……」
俺はふと、少女の手元に異様な傷跡があるのを見つける。
まるで、燃える何かを握りつぶしたような痕。
「……怪我、してるぞ」
「あっ……だ、大丈夫です! 配送の途中でちょっとだけ、焚き火の処理ミスして……」
「手当しよう」
「でも……」
「いいから。化膿したら困る」
「はい……」
差し出された手を清め、軟膏を塗り、包帯を巻く。
指先が彼女の掌をなぞるたび、ほんのりとした熱が伝わってくる。
「……っ」
アルターがびくりと肩を揺らし、小さく息を呑んだ。顔を上げたその瞬間、俺は言葉を失う。
ほんのり赤く染まった頬、潤んだ瞳、わずかに開いた唇。
その表情は──
……やけに、色っぽかった。
「だ、大丈夫ですっ。ちょっと、くすぐったくて……」
俯きがちに言いながら、アルターはそわそわと落ち着かない様子で指先を握り直していた。膝を揃えて座る姿もどこか不自然で、視線をこちらに向けようとしては逸らす。
まるで、さっきの感触がずっと残っているかのように。
静かに手当を受けているアルターの存在は、どこか儚げで──
……それなのに、妙に色っぽくて。
指先にまだ残る、微かな体温とやわらかさ。
(……なんだ、これ。胸がざわざわする)
(……なのに、変に落ち着く)
治療が一段落し、アルターは少しだけ頬を赤らめながら立ち上がった。
「……あ、そ、それじゃ、そろそろ失礼します。あの、他にも配達先がありますので……」
「待て、飛竜レイナルトに乗せてもらおう。今、外にいるはずだ」
「えっ、えー、いいです、いいですっ! ひとりで歩いていけますから!」
「三回迷子になって転んだやつのセリフじゃないな……」
「そ、それは……たまたまで……」
無事に帰れるか心配すぎて、押し問答の末、最終的にはレイナルトに任せることになった。
「……すみません……なんか、ありがとうございます……。セレンさんって、優しいんですね」
「……えっ」
思わず変な声が出た。
彼女はまたすぐに、照れたように目を逸らしながら笑って、
レイナルトの案内で診療所を後にしていく。
見送りながら、俺はぽつりと漏らした。
「……あの子、やっぱり落ち着くな。なんだろうな?」
アルターの背中が見えなくなったあとも、しばらく診療所の玄関には静けさが残っていた。俺は、ふと呟いた。
「……また来るかな」
言ってから、自分でもなぜそんなことを思ったのか、よくわからなかった。
そのとき、テーブルの上に置かれた一枚の紙片に気づく。
荷に紛れていた、薬草の説明書き。
──それは、誰も知らない製法で加工された薬草の記録だった。
俺は、思わずその字を見つめていた。
……なんだろう。
あの子、ほんとにただの薬草屋の荷運びか?
***
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