第17話 は? 俺が軍医長!? 冗談にしては耳元がエロすぎる

診療を終え、診療所の奥へと戻った。


「このままだと、貴殿に危険が及ぶかもしれん。ついてこい」


……いや、急に何の話だ。

そう思ったが、アスリナの目は本気だった。

何をするつもりか知らんが、悪いようにはしないだろう。


「……わかった」

セレンは頷くと、ラナに目をやる。


「行ってくる。留守番を頼む」

「むー……無事に戻ってきてね!」


少しすねた顔を見せたが、すぐに笑顔になる。

けなげで──ちょっと愛おしいと思ってしまった。


次の瞬間、アスリナは竜の姿に変化し、その背にセレンを乗せる。

そして、空へ──夜明けの空を割って、魔王軍本営へと飛翔する。

空気を裂くたび、重さが剥がれていくようだった。


***


魔王軍本営。

応接室。


魔王との連絡役──夢魔のヴェレムが静かに席につく。


「あなたのような医師は、我らにとって貴重です。

 しかし──今回のようなことは、また起こるでしょう」

「…………」


彼女は言葉を選びながら、視線を合わせてくる。


「軍医長として、我々の側に来てください。

 ここなら守れます」


は????

……軍医長? 誰が? 俺が??

魔王軍の──しかも中枢に?


それってつまり、人間の社会から完全に背を向けるってことじゃないか。

いや、そもそも俺はただの町医者で──


「あなたが竜将軍を救ったことで、均衡は崩れました。

 人間にも、魔族にも──あなたが“いないこと”を望む者がいます」


ヴェレムは、静かに椅子から腰を浮かせ、こちらへと身を乗り出した。

その長い指が、ふと耳元をかすめる。


近い。その体温と呼吸が、じわりと肌をなぞる。

一瞬、背筋を撫でられたような、ぞくりとした震えが走った。


「あなたが殺されると困ります。……私のものですから」


低く甘い声が、耳元をくすぐった。


「ちょ……」

「冗談です」


……だけど、その声も目も、冗談には聞こえなかった。

こいつは、いつだって距離の感覚が狂ってる。

けど本当に困るのは──それを心地いいと思う自分だ。


「……考えさせてくれ」

セレンの返答に、ヴェレムは静かに頷いた。


***


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