第3話

「急に真顔で冗談言うなよな!ビビったわ。」

そう彼に言われた時

「はは…」

乾いた笑いがこぼれ落ちた


何でもないことのように言葉を選びながら口にした

「そういえばさー、なんで人身事故で電車止まんなくなったんだっけ?」


友人は一瞬驚いた顔をしていた

だがすぐに僕が冗談で聞いていると思ったのか軽く返してきた

「効率的だからに決まってるだろ。俺らが生まれる前からずっとそうじゃん。」

僕は静かに机の下で手を握りしめていた


狂っている


何が効率だ

1人のために時間を無駄にしないようにそのまま電車を走らせているとでも言うのか

それに僕らが生まれる前だと言うなら今まで僕が暮らしていたところここは違うと言うのだろうか


そんなはずはない

そう言いたいのに確かに今日僕が感じていた違和感は今まで暮らしていた僕の世界と今僕がいる世界が違うと言うことで証明されてしまう


大きく変わったことは人身事故でも電車が遅れてこないと言うことだ

人が効率的に過ごすためだけに

効率…それがこの世界で最も大切なことだとでも言うのだろうか


そしてその1つの変化により人との関わりかたへの考えも変わってしまったとでも言うのか

いや、そもそもこの世界の人たちが変わったからこそ今のルールができたのだろう


このルールによって他にも変わったことはあるのかもしれない

ただ今は知りたくない、そう思った

僕はそのまま他愛のない話を友人と続けた

流行りの動画、友達の好きな芸能人の話…

それが僕の記憶と変わっていないことが唯一の救いだった


人身事故でも遅れない電車

他人に興味を示さないクラスメイト達

それは確かに僕の知らない世界だった

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