9話:結末と祝杯

「何かするなら、早く!!!もう、私たちが持たない!!!」


そう言われて俺は頭よりも先に体が動いた。

俺は咄嗟に魔王と四天王たちに近づき5人をかき集め、集めた背中に手を置いた。

すると世界の崩壊する速度がだんだんと遅くなっていき、雷の本数も減っていった。


「このままいけば修復できる!!!」

「こ、この調子で行くよ!!!」


世界は一瞬だけ、俺らの力に抗うかのように崩壊する速度がまた上がったかのように大量の雷の雨を降らすが、またすぐに崩壊する速度が遅くなった。


「も、もうだめ・・・かも・・・!」

「くっ、魔力が・・・!」


背中に手を置いてるから感じる、四天王と魔王たちの魔力が減ってきている。

こうなると時間の問題だ。


「み、みんな・・・頑張れ・・・あと、もう少しだ・・・!」


勝つか負けるかわからない状況に、俺は思わず目を瞑る。

現実から逃げるためじゃない、自身の能力に集中するためだ。

俺は思わず手に力を込める、俺の能力の予想が当たり、この状況で有利になることを祈って。


「いっけえええええええええええええっ!!!!!!!」


そう7人で叫んだと同時に、修復をする自分たちの放つエネルギーが強くなり、世界の崩壊する速度がどんどんに遅くなっていく。

一時的に俺たちに抗うかのように雷の雨がひどくなったが、すぐに雷も止んでいった。

そしてついには、崩壊は止まり、世界が元通りに修復されていく。

欠けた空が澄んだ空になり、風は心地よく、地面も元通りになっていった。


「や、やったぞ!上手く行ったのじゃ!」

「よ、良かった・・・もうダメかと思った・・・」


皇帝の表情が明るくなり、魔王と四天王たちはその場にヘナっとしゃがみ込んだ。

おそらく全員とも安心したのだろう。

俺たちは喜び合い、城に戻った。





数時間後、俺たちは俺が初めて目が覚めたデザイア城のホールに集まった。

そして世界の崩壊を止めたことを祝いあう。


「ところで、君はどうやって世界を修復したんだい?君は普通の人間だから魔力も持っていないだろうし、これまで何もできなかったのに」

「咄嗟に思いついたのが、俺の能力を使うことだったんだ。俺の能力は、多分あらゆるものをこの世界のものに適応させられる能力、だからお前らの放った修復魔法と崩壊自体をこの世界に適応させて、世界を安定させたんだ」

「なるほど・・・よく、わからなけど・・・ナイス、アイディア」


そう、あの2つの出来事があったから、俺はこの能力を自覚できた。

元々シャーペンと制服はこの世界のものじゃない、つまり俺の能力が発動して、この世界に適してるものに変わった。

逆に木・石・地面などは、元々この世界に適しているから俺の能力が発動しなかった。

たったそれだけのことだったのだ。


「そういえば、皇帝はなんで魔王に言伝を持って行かせるように俺に頼んだんだ?勇者を待つより、自分で言ったほうが早いはずだろ?」

「考えてみい、妾がいきなり魔王城に「たのもー!」なんて言って入って行ったら、魔王がビビってしまうじゃろ?」

「き、気遣われるほど、僕は弱くない!」


そう言った魔王を、四天王たちは冷ややかな目で見ていた。

そしてしばらくしたら俺らの笑いが城を包んだ。


「そうじゃ!思い出したぞ!なぜ勇者はあんなに嫌がっていたのに、なぜ魔王城に行ってくれたのじゃ?」

「そ、それは・・・」


言えない、絶対に言えない・・・実は先生のことが好きだなんて。

好きになってからずっと墓まで持っていくつもりのこの秘密。

ここにきたばかりの頃に、魔王城へ行くことを頼まれた時、正直断りたかったが、好きな人にそっくりな人の頼みは断れないものだ。

皇帝が先生じゃないとしても、見た目と性格、何もかもがそっくりな人物に僕が先生のことが好きということを明かすのは・・・。


「ま、まあ・・・俺の気まぐれってやつだよ」

「あーっ!勇者嘘ついてるー!」

「は?」

「勇者本当は、皇帝さんのことが大大だーいすきで、好きな人の頼みは断れないー!って言って引き受けたって思ってるじゃん!」

「ちょ、お前それ・・・!」


皇帝はキョトンとした顔をした後、すぐにこう言った。


「無事やるべきことを終えたからには、報酬をやらねばな!お主への報酬は・・・」


少しの間が空き、皆が沈黙する。

皇帝は少し考える仕草をし、ニヤッとした顔でこう言った。


「・・・お主への報酬は、妾からのキッスを授けよう!」

「へ・・・?」


皇帝が即座に俺に近づいてきて、俺の頬に手を当て、顔の位置を固定してくる。


「ちょ!?先生!?何を!?」


魔王と四天王たちはヒューヒュー言いながら俺と皇帝を見守っている。

皇帝の顔が近づいてくるそんな神展開の時、俺の視界が白くなった。

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