一般通過オタク、うっかり美少女に一目ぼれしてしまう

シファニクス

第1章 一般通過オタク、一目ぼれする。

第1話 序列がある。そして俺は枠外。

 社会には序列があるはずだ。

 そんな考えの片りんのようなものを、俺は小学生のころから持っていた。

 クラスの中にはリーダー的存在がいて、それの周りに喧嘩っ早い子だったり、運動神経がいい子だったり、頭がいい子だったり、可愛い子がいた。それは中学校でも同じ。何かしら序列じみた、上下関係がある。


 時に、それはカーストと呼ばれる。もとをたどればインドかどこかで使われていた制度だったはずだ。それが、高校の教室の中にもある。

 クラスの中心に立つ、主に美形や運動部が占める1軍。そこに入れなかった人たちや、成績がよく人づきあいが得意な人たちが入る2軍。クラスにうまくなじめなかったり、非運動部の者たちが多くを占める3軍。そのほかに、場合によっては4軍が生まれる。


 しかし、そのどれにも属さない例外もいる。

 そう、オタクだ。それもただのオタクではない。生粋の2次元オタク。それ以外に興味がなく、手を出そうとしすらしない存在だ。

 一般的なオタクは3軍か4軍に入ることになる。個性的な趣味を持ち、他の人と話が合わないからだ。彼らはクラスになじもうと努力し、他に同じ趣味の人がいないかを探したり、周りの興味があるものを調べたりする。

 そんな中、俺のような例外は3次元に興味を示すことはなく、人と関わることもなく、ただひとり静かに教室の隅で本を読み、家にさっさと帰ってゲームやアニメ鑑賞に興じる。

 そう。どの序列にも属さない、いや、属させる価値すらない存在。


 そんな俺の名前は乙崎依瑠よる。このキラキラネームに触れられたことはこれまでに数えるほどしかなく、昼休みにこんなクソ恥ずかしい自己紹介を考えてしまうくらいには暇人な、高校1年生である。

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