タイトルで少し、ギョッとする。でも安心してタップして欲しい。そこには傑作が待っている。会話の呼吸が素晴らしい。照れ隠しや蘊蓄。そして積み上げられていく感情。描写は繊細、ユーモアは絶妙。ラストシーン。内に溜めて、溜まり込んだ感情が、その行動一つで結晶化して、美しい輝きとなって読者の心を掴む。止まり木がないと起き上がれないのはきっと人間も一緒。この作品はそんな止まり木のひとつ。ぜひ、読んでほしい——。
愛に踏み出すために、クワガタの命をひとつ・・・。お互い、分かっているけど踏み込まない。だけど、気にしている・・・。どちらかが何かを捧げて、初めて始まる関係だとしたら・・・。夫を亡くしたクワガタのメスが、命を懸けて託した愛のきっかけのように感じます。好きな人が居たとして。その人が飼っているクワガタを、1年預かりますなんて、結構言えないよな・・・と。美しいセンテンス、繋がる言葉。そして、ざらっと命の生々しさを感じる秀逸な作品です。どうぞご一読くださいませ。