凪9

 放課後、教室を出たところで先輩と待ち合わせた。


「やっほー、ナギちゃん。迎えに来たよー」

これから殺人事件の捜査に行くっていうのに、先輩はいつも通りだ。

「そういえば思ったんですけど、わざわざ私のところに来てもらわなくても、前みたいに校門で待ち合わせとかでよかったですよね?それか私が三年の教室行けばよかったですよね」

一年生の教室は四階で、三年生の教室は一階にある。

「いーのいーの。途中で用事あったし、別に良い運動にもなるしね~」

前半の理由はともかく、後半はなんかお年寄りみたいだ…


「それで、どこから調べるんですか?」

先輩が数分前に上ってきたであろう、階段を一階ずつ降りて行っている間に、今日の捜査の予定でも聞いてみることにした。いつもの先輩なら『とりあえずゴー!』とか無計画かもしれないけどね。

「あー、それならまず――」

「あ!!解錠さん!!どこに行ってたんですか!?三回連続6点以下の人はみんな補習ですって言いましたよね?!」

ちょうど二階に差し掛かったあたりで、女性の教師が先輩を見つけて、いきなり怒鳴ってきた。

「ああっ!マユミちゃん!?なんでこんなとこに!」

「なんでって、あなたを探してたんです!!今日は補習って言いましたよね??あなたは三回連続で私の授業の単語テストが6点以下なんですから!あと、その呼び方やめてください!!先生って呼びなさい先生って」

どうやら昼休みに言ってた3点のテストの担当の先生らしい。英単語テストとかって言ってたから、多分英語の先生なんだろうな。

「えー!!あたし、三回連続で6点以下じゃないもん!そりゃあ、去年はアレだったけどさ…、ってか、今年はまだ今日の一回だけじゃん!!」

「何言ってるんですか?去年からの分もカウントに入ります!去年から数えて今回で三回目です!!それ以前もギリギリだったりしましたけどね!!」

結構厳しい先生のようだ。それはそうと、先輩は去年も単語テストの点数が良くなかったんだ…

「で、でも!!今日はちょっと考えることもあったし、なんかいろいろ調子がわるかったし!」

「言い訳しても駄目です………あ、えっと、あなたは?」

先輩と喋ってて気づかなかったのか、やっと私のほうを向いた。

「初めまして、ですよね。一年の一ノ瀬 凪です。まあ、つむぎ先輩にはお世話になってます……って感じですかね」

初対面の人と喋るのってやっぱり慣れないな。でもまあ、先輩が教わってる先生って思ったからか、普通よりはちゃんと喋れたかな。

「どうも、私は三年の英語を担当している、永谷 真由美よ。それで一ノ瀬さん、解錠さんとどこかへ行く予定だったのかしら?」

さっきの話を聞かれてたようだ。

「え?えっと、その………」

まずい、私に話が振られるとは思ってなかったから………正直に『殺人事件について調べに行きます』とは言えないかな。危険だって言われるかもしれないし。

「今日は図書館で、あたしがナギちゃんに勉強を教えたげるんですよ。ほら、あたしってば、その、英語以外はほぼ完ぺきだし」

「そうね、解錠さんは”英語以外は”完璧だものね」

永谷先生、目が笑ってない………

「………しょうがないわね、補習はあとででいいわ。あなたが後輩と話してるところなんて初めて見たし。というか友達と話してるところもめったに見ないものね。しっかり先輩してきなさい」

”先輩する”ってなんだろうか。あと先輩って友達少ないのかな。

「ほんと!ありがとマユミちゃん!!ってか友達少ないみたいな言い方はやめてよ。ちゃぁんと友達くらいいっぱいいるもん!五人くらい!」

………それは、いっぱいなのかな。

「先生と呼びなさいと言っているでしょう………はぁ、なんかもう疲れちゃった。行くなら早く行きなさい、帰りが遅くなってはいけないから」

厳しいけど、なんだかんだいい先生かもしれない。

「あ、一個だけ質問いい??」

先輩が思い出したかのように言った。

「ん?なにかしら?」

「マユミちゃん、一昨日の午後一時頃ってどこにいたの?」

「一昨日…?そうね、多分職員室じゃないかしら。単語テストの作成で忙しかったから」

「そう、わかった。じゃあ、あたしたちは図書館いってきまーす。いこ、ナギちゃん!」

そう言って、先輩は私の手を引いて駆けて行った。

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