10年周期の勇者たち
齊藤 車
10年周期の勇者たち
古の時代より封印されし強大な魔人あり。
その魔人従えし者、すなわち真の勇者なり。
真の勇者なるもの、魔人の助力を得て魔王がもたらす暗黒の世に光をもたらさん。
「我、汝の封印を解きし者なり。古の魔人よ、我に従え!」
そう言って男は埴輪のようなものを掲げた。
派手な演出で封印の術が解除される。
正義感の強そうな顔で埴輪を掲げている男。たぶん勇者。
ローブを着て、杖を持っている女。魔法使い。
後ろにも戦士っぽいのと僧侶っぽいのが控えている。
「解除の呪文とかアイテムは必要ないよ。効力10年の時限式だから何もしなくても封印解ける。その埴輪なに? どこから持ってきたの? あと俺、力失っててほとんどまともに戦えないの。従えても意味ないの。いい加減、伝承アップデートしてくれない?」
「何を意味の分からないことを! 行くぞ、みんな!」
「歴代の勇者様、どうか力をお貸しください!」
勇者一行が一斉に襲い掛かって来る。個々の熟練度も高く、連携も十分取れている。
「何としてでもお前の力を手に入れ、俺たちは魔王を倒す!」
勇者の斬撃がもろに入った。
「ぐわぁー」
痛い。
「あいつ俺の後輩だから分かるけど、多分君たち今のままでも余裕で勝てるよ?」
「オレたちがそんな嘘に騙されるとでも思ったか!」
今回の奴らも全く聞く耳を持っていない。
魔法使いの放った魔法が直撃する。
「ぐぇー」
体が魔法陣に吸い込まれる。何度かダメージを受けると再封印される仕様なのだ。
今やすっかり快適な自宅と化している魔法陣に引き戻され、再封印の術が当時の演出のまま豪華に発動した。
ただし、豪華なのは見た目だけ。老朽化でスカスカなので、封印されていても外の音ははっきり聞こえる。
「くそう、魔人を従えるどころか相手にもされないなんて!」
「攻撃したのもきっと本体じゃないわ。全く防御をしていなかったもの」
「影であれほどとは……。本体はもっと恐ろしい力を持っているに違いない」
「だが俺たちが先人たちの意志を継いだように、俺たちの意志を継ぐ者たちが必ず成し遂げてくれる。10年後に希望を託そう!」
(次もまた来るじゃん……)
魔王が世界を征服して60年。
人類は平和を得るに十分な力を持ちながら、いまだに元凶である魔王を討伐できずにいる。
10年周期の勇者たち 齊藤 車 @kuruma_saito
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