第27話 ドッペルゲンガー

「いや、急にこわいわ!」

そうツッコミを入れる気持ちもわかる。

急すぎる。でも仕方ないじゃない。


「これ、まさか実話じゃないですよね?」


「…ご想像にお任せします。」


「だろうね。さ、次は私です。」






『ドッペルゲンガー』


「私はだあれ」

 私はわたし


「あの子はだあれ」

 あの子も私


「どうして何もしないの」

 何もされていないから


「食べないの?」

 ダメと言われているからね


「どうやって生きてくの」

 別に考えていない


「死んじゃうよ」

 あの子が生きているからいい


 私はだあれ。君はわたし?

本当は会っちゃダメ。

だけどもう遅い。

いわゆるドッペルゲンガーは優しい。

誰も襲わないし

なにもしない。

じゃあなんで

“会ったら死ぬ”なんて言われる?

それはね


「本当にこわいのは身の危険を感じた人間だよ」


私はわたしがキライ

2人も要らないもん。

嫌いな物が増えたらびっくりしゃうよね。

食べたくないのに皿の上に残るピーマントマト

見たくないのに誘われたホラー映画

行きたくないのに乗せられた病院

信じたくないのに剥がされた白布


そう。わたしは私。

ドッペルなんとかはよくわからない。

でも今は鏡にうつった私を

わたしが見てる

私はとても重かった

これはこの世にとどまるべき物だと分かった

だからわたしが行く。

わたしはこの世に留まれない

私の行末を知らぬまま

腐敗した私を見つめて

わたしはいく。


わたしは私。


でも、私を殺したのはわたしじゃない


怖気付いたわたしの左手を傷つけたのはお前だ


あーあ。ちょっと未練。


双子の姉になりかわろうと

恵まれたそれが羨ましかっただけなのにな。

結局命まで奪われちゃった。








寺の子はひと仰ぎで蝋燭を消した。

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