第16話 マユキの過去


「おーい!みんな!帰ったぞー!おーい!」ソータが孤児院の玄関で叫ぶ。

 辺りは、少し暗くなっていた。


ダダダダダッ

 子供達が廊下を走る音が聞こえる。

「ソータの声だ!」

「ソータお兄ちゃん!」

「ペン汰は一緒かな」

 子供達が走りながら話す声が聞こえる。


「おっ!あいつら気付いたかな」ソータが嬉しそうな顔をしている。

「そりゃあんな大声で叫べばね」ペン汰が笑う。


 子供達がペン汰とソータの前まで走ってきた。

「おみやげー!」「おかえりー」「おまやげー」

と子供達がキラキラした目で話しかける。


「おいおい、お土産狙いかよ」ソータが子供達の頭を撫でる。

「ちゃんと買ってきたから、後から食べようね」とペン汰


遅れてマユキが来た。

「2人ともお疲れ様」マユキは2人の顔をみる。

「うん、良かったみたいだね。心配は、してなかったぞ」とマユキは笑顔。

 すると子供達が「うそー!マユキ先生うそー」

 と、騒ぎ出す。

「お、お前たち、何がうそだ!」とマユキが慌てる。

「だって、マユキ先生、お勉強中にも大丈夫かなーって言ってたじゃん」と子供が笑いながらマユキに飛びつく。


「ま…まぁ多少の心配はするさ…親だから…な」とマユキは照れくさそうにしている。


「マユキお母さん、ただいま」とペン汰とソータはニヤニヤしながらマユキの顔を見る。


「なっ…う…うん、お帰りなさい」とマユキが答える。


「それじゃあ、中に入って話を聞こうかな。お前たちは、お土産を食べたら寝るんだぞ」

「はーい」と子供達は、お土産を持って食堂へ。


「ペン汰とソータは、私の部屋へ」と3人はマユキの部屋へはいる。


「さて、2人ともお疲れ様だったな」とマユキはテーブル席へ座る

「ほんと疲れた」とソータは、ソファーにもたれかかる。

「なかなか、ハードな1日だったね」とペン汰は椅子へ座る。


「改めてきくが、2人とも合格出来たんだな?」

 マユキが真剣に2人の顔を見る。

「はい、2人とも合格出来ました」とペン汰

「俺は途中で医務室行きだったけど」とソータは笑う


「医務室?どういう事だ?」とマユキ

「今日1日の説明しますね」とペン汰が試験での出来事を話す。


「うーん。ゼノ親子か…」

 (思ったより目立った動きをしてきたな…やはり)

 マユキは考え込む。


「マユキさんは、知ってる人なの?」とペン汰


「……まぁ、ゼノは昔の部下になるな」とマユキ

「なぁ、マユキ先生…俺達なんとなくだけどマユキ先生は昔、国で働いてたって気付いてはいたよ?

 でもさ、今日試験で進行してた人。ライルさんだっけ。」ソータはペン汰を見る

「うん、ライルさん」とペン汰

 

「その、ライルさんって、よくマユキ先生を訪ねてくる人だったんだよ。その人も将軍階級って言うからさ。それで、もしかしてマユキ先生って偉い人?って、ペン汰と話したんだよな」ソータは、再度ペン汰を見る。


「そう、だから…マユキさんは昔将軍階級か、それ以上だったんじゃないかって。

 実際どうなの?」ペン汰とソータはマユキを見る。


「……別に隠してたつもりは無いけど。まぁ、昔の事だからな。話すほどのことでもないが…」とマユキは語り出す。


「私は、代々将軍階級の者を排出している家系でな。

 とても厳格な家柄で家訓というものがあった。

 1.勉学を以って力とすべし

 2.型も以って技とすべし

 3.誠を以って和を成すべし

 この3つをとにかく厳しく教えられる」マユキがペン汰を見ながら話している。

「あぁ…マユキさん、そのものだ」ペン汰は苦笑い。

 ソータも笑っている。


「まぁ、否定できないな」とマユキ

「その流れもあって、私もお前達ぐらいの時に軍に入った。他国との小競り合いが続いていて、私は常に最前線にいたんだが、そのせいか軍に入って5年ぐらいで将軍階級まで上がった…」


「えっ?たった5年?マユキ先生すごいね」とソータが前のめりで話を聞く。


「まぁ、家が厳しかったからな小さい頃から誰よりも努力してきた自負は、ある」とマユキ


「マユキさんらしいや」とペン汰。


「それで、その5年後に押し上げられるように帝国蒼将となった」マユキは思い出すように話している。


「えっ…それって…」とペン汰が顔が引きつっている。

「どうした?ペン汰、変な顔して」とソータが笑う。

「ばかソータ!帝国蒼将っていったら、国のトップだよ!」とペン汰が声を荒げる。


「……ん?…はっ?…なんて?」とソータは信じられない様子で何度もペン汰に聞き返す。


「座学でマユキさんに教えてもらったでしょ!」とペン汰


「いや…記憶にはあるけど。マユキ先生が?嘘だぁ」とソータは苦笑いしている。

「マユキさんが嘘つく訳ないじゃん」とペン汰。


「まぁ、そこで、色んなことを見て知って…私の力不足も知った。だから今は、身寄りのない子供達の世話をするおばちゃんをやってるのだよ」とマユキは、目を閉じながら話している。


「うーん、なるほど。まぁ、それだとライルさんがうちに遊びにくるのも納得だな。

 話してくれてありがとう。マユキ先生」とソータはお礼を言う。


「納得しちゃったんだ」とペン汰は呆れている。

「お前も納得しろ」とマユキがペン汰を見る。

「色々聞きたいことがあるけど…わかったよ」とペン汰は無理やり納得させられた。


「じゃあさ!マユキさんが今年の試験がどうとかって言ってたのは…」とペン汰が話し始めると。


「ペン汰、もう夜遅いから。ご飯食べてお風呂入って寝な!」とマユキが口を挟む。


「そうだ!めし!腹減ってたんだ」とソータが食堂に向かう。


「もう、ソータ…」とペン汰も諦めて食堂へ向かう。

 (肝心なこと聞きそびれちゃったよ)

 

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