第3話 株主YouTuber誕生!
「おはようございます、みなさん!今日は伝説の“株主総会リアル実況”をお届けします!」
会場前に並ぶ列、その片隅で、自撮り棒を掲げる青年の声が響く。
彼の名は、ハンドルネーム〈ShokenLive〉――フォロワー12万人の新進気鋭YouTuber。
今年から“株主”にもなった。「令和の時代、株主総会だってエンタメだろう」と彼は豪語する。
受付を抜け、ネームホルダーをぶら下げたまま、スマホのカメラを回す。
「さあ、ここが今日の戦場です。何が飛び出すか分かりません!」
すでにライブ配信のコメント欄は賑やかだ。
「お土産は?」「社長の表情チェック!」「議長AIの声、意外とイケボ!」
現場の臨場感と、インターネット越しの熱狂が会場に奇妙な連帯感を生んでいく。
質疑応答の時間、〈ShokenLive〉は思い切ってマイクを握る。
「企業のガバナンス改革を、ネット世代にどう伝えますか?――視聴者からの質問です!」
役員たちは一瞬たじろぐが、AI議長は即座に応答。
「オープンな情報発信と、双方向コミュニケーションが肝要です」と、きれいな言葉が返る。
だが、そのやりとりがライブで拡散されること自体、前代未聞の新展開だった。
会場の一角では、記者たちがザワつく。
「配信してるってマジ?」「いま、2万人が視聴中だと!?」
役員席では、広報担当者が冷や汗をぬぐう。
だが、配信は止まらない。
「#株主総会バズれ」「#ShokenLive質問中」――タグはトレンド入り、SNSでも話題沸騰。
なぜか株価にも微妙な上昇気流が生まれ、午後には「YouTuber効果で会社がバズった」などというニュース速報まで流れる始末。
閉会後、ShokenLiveは会場前で締めのコメントを放つ。
「みなさん、これが令和の株主総会!
会社も株主も、ぜんぶ一緒に“バズる”時代がきました。次回も現場で会いましょう!」
スマホをポケットにしまった彼の背中に、午後の光が降り注いでいた。
その後、社内では「次回からYouTuber禁止?」の検討会議が、密かに始まったという――。
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