第8話 尋問タイム to 司
「――――――なるほど。よくわかりました。貴方は前世は魔王様で、世界中で暴れる『怪物』達を統べる存在であったと。そうですね?」
「まぁかいつまんで話せばそうなりますね」
あれから……、まぁ気絶してた時があったから詳しくは覚えてないけども、とにかく1夜明けた頃。
ある程度能力の反動が収まり傷も癒えてきた俺は、佐倉さんの所属する組織に連行されて、尋問を受けてる真っ最中だ。因みにセリアは別のところに連れてかれたらしい。
真っ白で無機質だけど清潔感を感じさせる部屋に、俺は手錠をかけられ椅子に座らされた状態で佐倉さんと向かい合っている。まぁ一般人の人間があんだけ魔力を派手に使ってドンパチやってりゃこの処遇も当然と思える。
けど……、目が覚めた途端いきなり手錠かけて独房みたいな所に突っ込むのはどうなのよとは思ったな。後で佐倉さんが詫び入れてくれたからそこまで怒ってはねぇけども。
「そっか。確かに、そーいうことなら天龍くんが『能力』を持ってることとか、その上めちゃくちゃ強かったことととかの辻褄は合いますよねぇ――――――」
まぁそれはそれで置いておいて、だ。
俺の話を一通り聞いた佐倉さんは、そう言うと一つ息を大きく吸い、吐く。そして。
目の前に置かれたテーブルに思い切りだんっ、と拳を叩きつけた。
「だからっていっても流石に話が飛躍しすぎてませんかっ!!??」
「と、言っても事実だからなぁ。セリア……俺とやり合ってたあの女の人に確認とってもらえればわかると思うんだけど、どう?」
「それができなさそうなんですよぉっ!! ずっとダンマリ決め込んで何も話してくれないんですあの女ぁ!!」
あ、そうだったんか……とは思うけど、確かにアイツならそうするだろうな、とも思ってしまう。
純粋なプライドから口を割らないってのもあるだろうし……、黙ってりゃ何か痛いことしてくれるんじゃないか、なんて『期待』もしてそう。アイツのことだし。
「まぁそうなってくると、割とマジで俺から命令されるでもしないと何も言わなそうだな。そうなった時のセリアってマジでしぶといし……。で、どうするよ? 佐倉さん」
「それは、『俺を一旦解放してくれ』ってことですか? 私は貴方のことを信用してますしそうしたいんですけど、組織の人間としてそうする訳にはいかないんですよ」
申し訳なさそうな表情でいるあたり、本当に信頼してくれてるんだってことは伝わってくるな。優しい人だ。てか察しがいいな。流石だ。
だけどまぁ彼女の言うことは最もだし……、そーいうことは彼女の独断で判断する訳にもいかないのだろう。
と、なるとだ。もっと別の人間にアプローチする必要があるわけか。
「まぁ、でしょうね。だから……俺のすぐ後ろあたりかな? そこら辺で聞いてる
さっきから後ろでビリビリ感じてたんだよ。それなりに強い魔力を、2つほどな。
なんでタメ語なのかって?別にいいんじゃねぇの感じた限り2人とも俺と同じくらいの歳だろうし。知らんけど(適当)。
佐倉さんは驚愕の表情を浮かべる。ま、見た感じこの世界の人達は魔力を「感じる」ってことが出来ないみたいだし、当然か。
暫くすると、前方のドアが音を立てて開かれる。
入ってきたのは……それぞれ男性と女性だ。1人は高身長で、イケメンだな。綺麗な黒髪をしている。
もう1人は金髪で、ちっこい。可愛い見た目してんな。下手すりゃ小学生と間違われそうなレベルだ。
「っへー。よくわかったね。『力』の検知ができるんだ。流石自分を魔王、と言うだけあるのかな?」
「だからそう言ってんだろうがよ。それにしてもお前らは『魔力』の事を随分とシンプルな言葉で言うんだな」
「……ねぇアンタ。拘束されてるくせして随分とでかい態度じゃない? このまま痛い目合わせられるんじゃないかとか考えられないワケぇ? バカなのかしら?」
「ねぇ佐倉さん。この爽やか好青年とイキリ金髪チビ女子小学生の紹介頼める?」
「だァれが小学生だァ!!?」 なんて叫んで俺に突っかかりそうになるソイツを佐倉さんはどうどう、落ち着いて。なんて言いながらなだめる。
てか突っ込む所そこかよ。それ以上に気にするべき言葉結構投げかけた気がするんだけど。
「え、えぇと。この女の子が
「あ、ふーん。そなの。でも年下じゃん」
「舐、め、て、くれるじゃないのぉ!? さっちゃんとタメなら一つしか違わないでしょっ!? 私のアンタの第一印象は『サイアク』よっ!」
「あ、うん。俺も似たような印象だから心配すな」
そりゃここに連れてこられた時の仕打ちを考えりゃ当然やろ。有無を言わさず手錠かけて暗い部屋に突っ込みおって。
確かに魔力使ってやり合ってたのは事実だけど、お前らの仲間と街を守るためだったんだぞ。そりゃこんな態度にもなる。
取り敢えずカツ丼でも食って落ち着けよ。お前がな。
「まぁ落ち着けよカナ。いや手荒な真似して悪かったね。組織としては君の事を全く知らないわけだし……、警戒せざるを得なかったのさ。さっちゃんは君と知り合いだったみたいだけど」
「さっちゃんって……あぁ佐倉さんのことか。ま、ご丁寧にどーも。敵対の意思がないってわかってんならよ、この手錠外してくんねぇかな?」
「そうもいかないのが辛いんだよね。あの女性……、セリアさんだっけ? 彼女からまだ何も話を聞けてないからね。彼女と深い関係であることがほぼ確定してる君は――――――」
「依然として警戒対象、ってか」
「ま、そういうこと。申し訳ないけどね」
飄々とした、どこか掴めない態度でソイツは薄く笑いながらそう言う。
いけ好かねぇやつだな……とは思うけど、俺もおそらく似たようなものなのかもしれないとも思うので、黙っておく。
「へっ、なーるほどね。で、お前の名前、まだ聞いてなかったけどなんていうのよ? そこのクソガ……じゃなかったカナ……、カナブンだっけ? そっちは聞いたけども」
「か・な・ぼ・し・よっ!! アンタワザとやってんでしょ……!」
「カナ、ストップストップ。そういえば俺の自己紹介がまだだったね。俺は
ソイツ……、凪浦は首を傾けてニヤッと笑う。
裏に感情を隠してそうな笑顔だな。魔王の頃、嫌ってほど見てきたような笑顔と似たものを感じさせる。
やっぱ俺の苦手なタイプだろうなこいつ、と心の中で微かに思って留めておいた。
「おん、そうけ。まぁよろしく頼むぜ。んで凪浦さんよ。君の話に間違いがなければ、セリアから話を聞き出せば俺を解放してくれるんだろ?」
「まぁ、内容にもよるけどね。それがどうしたんだい?」
でも、今はそんな相手だろうが進んで話をしなきゃいけない。俺の身の安全がかかってるかもしれないし。え、カ……ナントカもいるって? どこにいるんでしょうねぇ小さすぎて見えねぇや。
それに……、なんだかんだでセリアが心配だ。
昨日やり合ってるとはいえ、元仲間な訳だしさ。
だから、俺は彼らに提案する。
「そしたらよ。俺に彼女の『尋問』を任せてくれねぇかな? 彼女、俺の話になら答えてくれっと思うからよ。どうだ?」
さて、どうだ?
俺にも、彼らにもメリットがある事だとは思うけどな。
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