第2話 妹の思い

『こんにちは、ハヤセレイさま。特性開花の時間です』


朝起きると、目の前に半透明な画面が映し出され、困惑する。


「なんだよこれ…」


状況をうまく飲み込めないまま、画面は勝手に動き始めた。


『…それでは、特性を利用してこれからの限りある人生を楽しんでください』


視界がじわじわとぼやけてくる。


「ちょっと待っ……」と言いかけたが、その言葉も虚しく俺は意識を手放した。


* * *


―10時間前―


「最近、お兄ちゃんの様子がおかしいな〜」


自室のベッドに寝転びながら、大きくため息をつく。


妹として15年間生きてきた中で、さっきのお兄の表情は今まで見たことがなかった。あんなに動揺していて、自分でも同情してしまうくらいだった。


あの悲しい顔を見ていられなくて、気がつけば私は本音を口走り、そのまま自分の部屋に戻ってきてしまった。


あれから時間が経ち、ふと思う。


[今から変えられること]って、結局なんだったんだろう?


姿――どれも違う。


零ちゃんの隣に立つために必要なのは、そんな表面的なことじゃない。


本当に必要なのは、


でもそれは、簡単に手に入るようなものじゃない。


昔なら、自主的な努力で筋肉や体力をつけて強くなれたかもしれないけど、今の時代は違う。魔法も剣術も、《才能開花》が起きなければ身につかない。そして、それが起きるのは主に10歳前後だとされていて、もう17歳のお兄ちゃんにチャンスはほとんど残されていない。


私が言った言葉は、結局ただの理想論だったんだ。


「……お兄……」


もう一度ため息をついて、枕に顔を埋める。


「もういいや、寝よう」


時刻は21:30。

早瀬一花はやせいちかは、嫌な気持ちを振り払うように、聖夜に早めの休息へと入った。

まさか、明日の朝、兄の身に異変が起きるとも知らずに。


* * *


12月25日

時刻は9:00を過ぎた頃。


「あら、今日は零、起きてくるの遅いわね」


冬休みに入っているとはいえ、いつもは8時には起きてくる兄がまだ1階に降りてこない。母は少し心配そうだった。


昨日、何かあったのか――

もしかしたら、私の言葉が原因かもしれない……。


「一花、零を起こしてきてくれる?お願いね」


9:30近くになり、母もついに痺れを切らしたようで、私に兄を起こすよう頼んできた。


兄は高校三年生、受験生。今、生活リズムを崩すわけにはいかない。


私も、昨日のことを思い出して胸がざわつきながら、黙って頷き、2階の兄の部屋へと向かった。


* * *


「えっ………」


兄の部屋の前で何度呼びかけても返事はなく、戸を開けて中へ入った瞬間――目を疑う光景が飛び込んできた。


ピカピカ……。


ベッドに横たわる兄の身体から、まるで神聖なもののような純白の光が、静かに、しかしはっきりと放たれていた。

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(AI修正)S級ハンターである幼馴染の能力を得て、アイツの隣に立てる男になるつもりだったのですが、いつの間にか世界最強になってました。 Alfreghi @femy

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