第26話 ケイル、護衛付きで旅立つ
ケイルは荷物を結びながら、ちらりと周囲を見渡した。
(……いや、なんだこの光景。ちょっとした国の出陣式じゃんか)
装飾が施された装甲馬車が、ただならぬ存在感を放っていた。あれはどう見ても、王族が乗るクラスのやつだ。
その前には王国の騎士団、魔法使い部隊、さらには魔族の代表団までが勢揃いしている。
「……ふぅ、こんなもんかな」
荷物の積み込みを終えたケイルは、小さく呟いた。
(ごっこ遊びにしては……スケールがデカすぎるって!)
(さすが貴族様、本気出しすぎだろ……)
荷物を運び終えたところに、重々しい声がかかった。
「……ケイル殿、準備はよろしいか?」
王国の使者が礼服の裾を翻し、深々と頭を下げる。背後には騎士たちが整列していた。
(……なんで俺が主役扱いされてるんだ)
「えっと、そろそろ俺は下がって、みんなの後ろに──」
「ケイル」
その言葉をレオンがピシャリと遮った。剣を背負い、真剣な目で彼を見据える。
「俺たちも行く。お前の護衛としてな」
「えっ、護衛として?」
「当然でしょ。和平交渉の“鍵”なんだから」
ユウナが言った。
「体調、時間、会話のフォローまで全部任せて」
セラも準備万端の顔で頷く。
「えっ、俺はただの裏方だし……ちょい役でも十分なんだけど……」
「その考えが一番危ないの!」
「正体がバレたら真っ先に狙われる立場なのよ! 守るわ、絶対に!」
三人の表情は真剣そのもの。もはや“ケイル=和平の切り札”という認識は揺るぎない。
(な、なんだこの流れ……? もしかして……
俺の昨日の演技、ガチで評価された!?)
(うわぁ、まさか……こんなメインポジション任されるなんて……!)
そこへ、馬車の前に魔族側の側近──女が現れた。
「私も同行させていただきます。もちろん“監視”として」
鋭い目で睨まれ、ケイルは思わず背筋を伸ばす。
「ど、どうぞ……ご自由に……!」
(怖!やばい、この人だけ空気がリアルすぎる……!)
そして、ついに出発の号令が下された。
「出発──!」
馬車の扉がゆっくりと開き、ケイルは一度深呼吸をしてから乗り込んだ。
(……よし。やるしかない)
(これが俺の、裏方ケイルの──勇者ごっこ第二章!)
その馬車を中心に、王国の使者たち、勇者パーティ、そして魔族の代表団が取り囲む。
まるで、ひとつの国が動き出すかのような、壮麗な行進だった。
──ただひとり、“全員がノリのいい役者”だと信じて疑わない男を、先頭に据えて。
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