テレパシーで妄想が伝わってた
堀と堀
プロローグ
第1話 妄想が伝わってた
基本真面目だけど、たまに授業中ボーっとして、シャーペンを指に突き刺してる。
髪がつやつやしてて、耳が少し大きい。
──私は時折、想像する。
あの綺麗な髪に顔をうずくめて、背中から抱き着きたい。
彼女の細い体は、でもきっと何か素晴らしいものに満ちてるだろう。
ちょっとハスキーな声で、くすぐったそうな声を漏らすに違いない。
頬を寄せれば、ちょっと病的なぐらい白い顔が見える。
不思議な目をしている。いつも眠そう。
いつも周りとは、ちょっとタイミングが遅れていて、どんくさい。
◇
退屈な授業も、華久良のことを思っていると、すぐに終わる。
彼女の呼吸に合わせて、同じように、時折ボーっとしていれば。
教科書を片付けて、次の授業は──生物か。移動だ。準備をしていたら。
「どんくさくてごめんね」
見上げると──黒い髪の間からこっちを除く華久良の顔がある。
「星野さん、どうしたの?」
「いや……なんか、色々言ってくるから」
物憂げな表情だった。あんまりはっきりしない言い方。
「……は?」
色々言ってくるからって何?
「は? ってこっちが言いたい」
「いってもいいよ」
「は? ……じゃなくて、何? なんか私に文句でもあるの? 嫌がらせ?」
「何の話?」
「だってなんか……『あいつはいつもおかしな行動をしてる』とか、『眠そうだしどんくさい』とか……挙句の果てには『あいつの首を絞めてやろう』とか……」
思い当たる節はある。
「まあ、前二つは当たってると思うけど、でもさすがに襲うまではしなくてもいいじゃん」
「あー……」
なにこれ。私の想像が伝わっちゃってた?
凄くネガティブな方向に解釈されちゃってるけど。
「私まさか……声に出してた?」
「いや、多分……だって、言ってたら流石にみんなびっくりするでしょ? 私には聞こえたけど。私も『これ私にだけ聞こえてんのかなぁ?』って」
「星野さんって意外と良くしゃべるんだね」
「富良野達、カギ閉めて言い?」
鍵当番の男子がカギをくるくる回して、扉の所で待っていた。
いつの間にか皆、教室を出て、私達しか残ってない。
「ああ、うん、今出る」
教科書を持って星野さんと扉に向かう。
「ごめんね」
男子の隣を通って廊下へ。星野さんもちょっと顔を伏せて恥ずかしそうに。
「星野さんって童貞?」
「さっきからホントに何なん? 喧嘩売ってんの?」
「なんか、男子慣れしてない」
「処女? って聞いて」
「処女?」
「うん、処女」
「素直だね。威厳すら漂ってるわ」
「ありがとう」
「なんか異性への反応が童貞みたい。逆童貞」
「変な愛称つけんな」
「安心して、私も処女だから」
「一緒にされたくない……」
「私友達いないし、星野さんもいないでしょ」
「悲しい二人が出会ってしまった」
「うちら何かの話をしてたよね?」
「私にだけ声が聞こえる話?」
「ああそうだ」
「テレパシーかな」
「……うち超能力者?」
「私にだけ悪用しないで。ボッチがつぶし合ってもなんも良いことないって」
「ね」
「適当な返し……前から私のこと、頭の中でいじめてたでしょ?」
「別にいじめてはないけどね。ごめん、嫌な思いさせてた?」
「別に……嫌いじゃないけど」
ツンと唇を向けるけど、少し照れたように頬を赤らめる。
「ウチらこのペースで歩いてたら遅刻すると思う」
「わ、マジじゃん。急ごう」
スマホを見て走り出した華久良の腕をつかむ。
「道ずれにしてやる」
「ねえ、ホントにふざけないで」
「おら!」
「袖伸びるから! 離して」
「君たち廊下でふざけるのはやめなさい。もう授業始まるぞ」
歩いて来た体育の先生っぽい先生に怒られる。
「あーあ、星野さんのせいで怒られた」
「小学生以来だこんな怒られ方したの」
「中学生から友達がいなかったから」
「いたわ。中学はいた」
「えーすご」
「え……中学からずっとボッチ? 可哀そう」
「自分も友達出来てから憐れんでよ」
今はアンタも同じでしょ?
「あ、私か? 私が新たな友達か? やったじゃん、良かったね!」
肩に手を回す。
「触ってくんな」
嫌がる華久良。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます