第4話

 ドームの天井から、白い光がぼんやりと広がっていた。

 光を受けて、祈式兵きしきへいたちの銀色のよろいがかすかに光る。


 あおいたち新人しんじん神令官しんれいかんは、さっき祈式兵を選び終わったばかりだった。


 久世統馬くぜ・とうま教官きょうかんは、教会きょうかい端末たんまつをじっと見つめていた。

 やがて、小さく舌打ち《したうち》をする。


 「……救援要請きゅうえんようせいだ」


 端末たんまつには、瓦礫がれきの山や白いけむりがうつっていた。

 その奥には、倒れた祈式兵きしきへいが何人も見える。

 瓦礫がれきに半分うもれた神令官しんれいかんが、助けを呼ぶように手を伸ばしていた。


 久世教官くぜ・きょうかんが言った。

 「呪華ノヴァにおそわれた部隊ぶたいが、祈式兵きしきへい一緒いっしょに取り残されてる」


 神崎かんざきがすぐに声をあらげた。

 「新人しんじんをいきなり戦場せんじょうに出すのかよ! おかしいだろ、教官!」


 久世くぜは少し顔をゆがめた。

 「分かってる。だが、ほかに行けるやつがいないんだ」


 そして、少しをおいて言った。

 「行くのは——天城葵てんじょうあおい白石しらいし双子ふたご丸山まるやま。おまえらだ」


 その言葉に、丸山まるやま圭吾けいごの顔がみるみる青くなる。

 「お、俺っスか……? 模擬戦もぎせんしかやったことないのに……」


 丸山まるやまは、体が大きくて少し太っている。

 ふだんはおっとりしているけど、こういうではすぐにあたふたする。


 久世教官くぜ・きょうかんがきびしい声で言った。

 「おまえ防御操作ぼうぎょそうさ安定あんていしてる。ビビるな。あぶなくなったらけ」


 そのやり取りを、あおいだまって聞いていた。

 まだだれともとくなかがいいわけじゃないけれど、空気くうきりつめた感じはよくかる。


 そっくりな顔をした双子ふたごが、ならんでっていた。

 左右さゆうかみかたがちがうのが、二人ふたり見分みわける目印めじるしだ。


 あにが小さくわらう。

 「おれらなら、やれるって」


 おとうとみじかいきをつき、うなずいた。


 久世教官くぜ・きょうかん全員ぜんいんわたしてう。

 「いいか。現場げんばにはまだ呪華ノヴァがいる。

 単独たんどく行動こうどう絶対ぜったい禁止きんしだ。おくれたら、それだけ仲間なかまぬ」


 端末たんまつからは、たすけをこえが、ノイズにまじってひびいていた。


必ず助ける。あの子も。そして、澪も。

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祈式兵《かのじょたち》の祈りは届かない @THEABAN

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