お月さまと海月ちゃん

まえとら

お月さまと海月ちゃん

波に映る、真夏の夜。

お月さまが、まるで海月(くらげ)のように揺れて見える、

ふしぎな夜のことでした。


海の中から、空に浮かぶお月さまを見上げて、

「空を飛んでみたいなあ」


ゆらゆらと波に揺られながら漂う

くらげちゃんは、お月さまにお願いしました。


「お月さま、お願いです。

少しでいいんです。お空を飛んでみたいんです」


すると、お月さまは、やさしく答えました。

「夜中の0時。

海に映る満月に、自分の姿を重ねてごらんなさい」


くらげちゃんは、その言葉を信じて、

夜中の0時。

静かな海面に映るお月さまに、そっと自分の姿を重ねました。


「お願い……お空を飛ばせて」


その瞬間、

くらげちゃんの体が、ふわりと宙に浮かびました。


「わあ! わたし、海から舞い上がってる!」


月明かりに照らされて、

ゆらゆらと風に揺られながら、

くらげちゃんは、ゆっくり夜空へ舞い上がっていきます。


お月さま。

くらげちゃん。

お星さまたち。


「なんてすてきなんだろう!」


波は月の光に照らされて、

きらきらと銀色に輝きました。

街の灯りもまた、地上の星座のように見えました。


「きれいだなあ!」


そしてくらげちゃんは、やがてそっと、

海面へと戻っていきました。


「お月さま、ありがとう」


お月さまは、何も言わず、

ただ静かに、やさしくほほえんでいました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お月さまと海月ちゃん まえとら @mae10ra

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ